法音寺学園事件 名古屋高裁判決(昭和51年4月30日)

(分類)

 退職

(概要)

 大学との間に退職の合意をした教員が、その合意事項としての大学側の就職あっせん義務の不履行を理由に、大学教授の地位確認、賃金、慰謝料を請求した事例。 (一審 請求、当審、控訴一部認容、一部棄却)

 右認定の事実関係によれば、本件合意により、控訴人は被控訴人に対し昭和46年3月31日までにAを通じて退職願を提出することにより大学を退職する旨の意思表示をする義務を負い、他方、被控訴学園は右同日までに控訴人を客観的に相当と認められる他の大学に教員として斡旋就職せしめるか、あるいは、斡旋先の意向、事情により転職が遂に成功しなかった場合においても、客観的な第三者から見て控訴人も被控訴人からこれ程の斡旋の努力を払ってもらえば以て満足すべきであると認め得る程度の高度かつ誠実な斡旋の努力を尽すべき義務を負担するにいたったものというべきである。しかして、本件合意の成立の過程にかんがみれば、控訴人の債務は被控訴人の債務に対しいわば対価ともいうべき関係に立ち、被控訴人においてその債務を履行しないときは、控訴人はこれを理由として自己の債務の履行を拒み、または本件合意を解除する権利を有するものと解するのが相当である。(中略)

 被控訴人のなした就職斡旋の努力を評価してみるに、当裁判所は右認定の被控訴人の斡旋行為をもってしては、いまだ本件就職斡旋条項による債務を履行したものとはいえないと判断する。(中略)

 被控訴人には本件就職斡旋条項に基づく債務の不履行があり、前認定のように3月31日の協議の席上爾余の斡旋を被控訴人から拒否されて本件契約解除の意思表示に及んだ以上、右意思表示は有効であり、本件合意はこれによって解除されたものといわなければならない。(中略)

本件合 意は控訴人により有効に解除されたものであるから、右任意退職条項の存在を前提とする右退職発令もまた無効であり、控訴人は現に右大学の教授たる地位を有するといわなければならない。

(関係法令)

 労働基準法2章

(判例集・解説)

 時報828号50頁  タイムズ342号220頁

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。  労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ