都タクシー事件 京都地裁判決(昭和49年6月20日)

(分類)

 不利益変更

(概要)

 タクシー会社が賃金協定の解約を通告して一方的に就業規則により新しい賃金規程を定めこれに基づいて賃金を支給したので、組合員である運転手らが、旧協定に基づく賃金と支給賃金額の差額の仮払の仮処分を申請した事例。 (申請認容)

 労働契約の要素をなす賃金に関する事項について労働協約が存在し、後に右協約が解約された場合には、解約以前に締結された組合員の労働契約については、右協約の内容がすでに個々の労働契約の内容をなすに至っているものとみるべきであるから、解約後も使用者において当該労働者の同意を得ることなく一方的に右内容を変更すること(就業規則による場合を含む)は、いわゆる事情変更の法理の適用をみる場合のほか、その変更が労働者に有利であるか否か、あるいは、合理的な理由があるか否かを問わず、許されないと解するのが相当である(なぜならば、契約当事者の一方が、相手方の同意を要せず、契約内容の要素を変更することは、容易に許されないと解すべきであるからである。なお、最高裁判所昭和43年12月25日大法廷判決(民集第22巻13号3459頁)は、停年制に関する案件であって、労働契約の要素をなす事項に関するものではないから、本件事案に適切な判例ではない。)。そして、本件にあっては、右のような事情変更の法理が適用される事情が存在するとの点について、何らの主張もないし、被申請人主張の運賃値上がなされたとしても、それのみをもって直ちに右事情の変更があったと認めることもできない。(中略)《証拠》によれば、会社から旧協定の解約が予告された昭和46年11月17日以後、本件仮処分申請(昭和47年7月19日)に至るまでの間、何回となく、組合執行委員長名で会社に対し、旧協定に基づく賃金を支払うように申入をしていた事実が認められ、申請人Xの本人尋問の結果によれば、右のように、組合として会社に対し旧協定に基づく賃金の支払を求めていたので、申請人ら個人としては、個々に賃金を受領する際、特に異議を述べなかった事実が認められる。そうだとすれば、右1で認定した事実をもってしては、いまだ申請人らが新規程に基づく賃金によることに同意したものとは認めがたい。そうすると、被申請人は、申請人らに対し、旧協定失効後もなお、旧協定と同一内容の賃金支払義務を免れない。

(関係法令)

 労働基準法89条,93条

(判例集・解説)

 タイムズ311号219頁

 

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