横浜市立保育園保母事件 最高裁第3小(平成9・11・28)

(分類)

 安全衛生   労災

(概要)

 (業務と障害の間の)訴訟上の因果関係の立証は、1点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつそれで足りるとするもの。

 (民事における因果関係の証明のリーディングケースである「ルンバール・ショック事件判決(最高裁第2小昭和50・10・24 民集29・9・1417)」を示し、この判断枠組みに沿うものである。)

 保母の業務は上肢、頸肩腕部等にかなりの負担のかかる状態で行う作業に当たることは明らかである(頸肩腕症候群により労災補償の認定を受けた保母も多数いると指摘している。)とするもの。

 保母の症状の推移と業務の対応関係(判決は、保母の業務負担が重くなるとともに、症状は増悪したと認めている。)、業務の性質・内容に照らして考えると、上告人の保母としての業務と頸肩腕症候群の発症ないし増悪との間に因果関係を是認しうる高度の蓋然性を認めるに足りる事情があるといえるとするもの。

 保母が頸肩腕症候群は業務に起因し、市がその防止、回復の措置を怠った点で安全配慮義務に違反しているとして、慰謝料等を求めた訴えに対して、「(保母の)従事した保育業務が保母の頸肩腕症候群の発症や増悪の相対的に有力な原因にあるとまでは認定できない」として因果関係を否定した原判決を破棄、差戻すもの。

(関係法令)

 労災保険法

(判例集・解説)

 労判727・14  

(関連判例)

 佐伯労基署長(アーク溶接)事件 最高裁第3小(平成11・10・12)  

 

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