年棒制と割増賃金

例) 年俸840万円 14で割って、毎月の支払額は60万円 6月と12月にボーナスとして60万円

 年俸の840万円を年間所定労働時間で割った金額を基に残業単価を計算します。

 一般的な月給制(日給月給制)の場合は、月の給料を平均所定労働時間で割って単価を出します。

 年俸額が決まっていて、それを14分割や15分割して月額給与と賞与を決めるやり方では、最初から賞与分が固定しているので、その賞与分も割増賃金の基礎となります。このため、「単に年俸制を導入しただけ」では、年俸額全てを年間所定労働時間で割って単価を出す必要があります。

 賞与額を確定してしまうと残業単価が上がるのが困るのであれば、賞与額については確定せずに「業績や評価による形式」にするのも一つの方法です。

 他にもいくつか方法は考えられますが、社員に説明した上で、就業規則にしっかりとそのことを明記し、トラブル防止のためにも雇用契約書にも明記することが大切です。

 

年棒制と割増賃金

 年俸で支払う金額を時間給に直したものに、時間外手当がつくことになります。

 ただし、年棒の支給額の中に時間外割増賃金○○時間分として明瞭に区別された金額が示され、時間外労働の時間がこの○○時間内であれば、時間外労働として支払う必要はありません。年俸に残業代が含まれていることを説明して、雇用契約を結んだとしても、残業代相当額の支払い基準の内容を明示する必要があります。この場合、定額の残業代を含む年俸額を定めることは可能ですが、基本年俸額部分と毎月の残業に対する一定の時間数を基準として、残業代に相当する額を区分して示さなければなりません。

 また、各月について実際の残業時間に対する残業代が、あらかじめ残業代相当分として示した額を超えた場合は、その超えた時間に相当する残業代を支給しなければ第37条違反となります。

 前年度の一人ひとりの残業時間の実績値をもとに算定した残業代(割増賃金)をあらかじめ年俸額の中で賃金項目として明らかにし(固定残業代とする)、実際の残業がそれを超えたときは、その都度(月ごとに)、割増賃金をプラスする方法があります。

 行政解釈では次の通りとなっています。(平12.3.8 基収第78号)

 「一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労働基準法第37条に違反しないと解される。しかし、年俸に割増賃金を含むとしていても、割増賃金相当額がどれほどになるのかが不明であるような場合及び労使双方の認識が一致しているとは言い難い場合については、労働基準法第37条違反として取り扱う。」

 1時間当たりの超過勤務手当は、次の算式によります。

(俸給の月額 +俸給の月額に対する調整手当) /(40 時間 × 52週) × 12  × 支給割合 (四捨五入)

 

残業代を年俸額に含める方法

 労働基準法で、労働時間等の適用が免除されていない一般社員については、年俸制だからといって、残業代を支給しないことは違法となります。そこで、前年度の一人ひとりの残業時間の実績値をもとに算定した残業代(割増賃金)を、あらかじめ年俸額の中で賃金項目として明らかにし(固定残業代とする)、実際の残業がそれを超えたときは、その都度(月ごとに)、割増賃金をプラスする方法があります。

 

年俸制での欠勤控除

 年俸制は、年を単位に賃金を決める制度ですから、もともと日割計算や欠勤控除を想定していません。しかし、特約をすれば、欠勤控除をすることができます。

 欠勤控除の計算に当たっては、労基法施行規則第19条に準拠して年間平均所定労働日数を算定の基礎としても、あるいは暦日による方法としても差し支えありません。ただし、いずれの方法をとる場合にも、欠勤控除の算定方法について就業規則または雇用(労働)契約書等で明らかにしておくことが必要です。

 

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