ストックオプション制度

 長期インセンティブ制度として、ストック・オプション制度があります。

 ストックオプションとは、役員、従業員が自社の株式を一定の価格で買い取ることのできる権利のことをいい、初めから株式を保有するのではなく、株式を買い取る権利を役員及び従業員が保有する制度です。将来の一定時点で、株価が上昇していればオプションを行使して会社から株式を購入し、その株を市場で売却することで売買益(キャピタルゲイン)を得ることができます。

 ストックオプションとは、平成9年の商法改正に伴い一般の株式会社で導入できることになった制度で、企業が、取締役または使用人(従業員のこと)に対し、自社の株式を将来において予め設定された価格(権利行使価格といいます)で購入する権利を付与する制度のことです。  

 メリット・デメリットを整理すると次のようなものがあげられます。

メリット

デメリット

① 従業員の企業業績への意識向上

① 日本では配分割合が低いため、それほどモラールの向上に結びつかない場合があること

② 従業員のモラールの向上

② 従業員に税金やインサイダー取引といった問題意識がなく、リスクがあること

③ 給料ではまかないきれない処遇の解

③ 付与基準を明確にしないと不公平感が生じ、モラールの低下につながること

④ 優秀な人材確保の手段

④ 実際には上場できる企業しかメリットがないこと

 ストックオプションの導入によって、役員や従業員の会社への貢献が業績向上や株価上昇につながれば、社員も大きな財産を形成することが可能になり、優秀な人材確保の手段として利用することができます。

 

制度の概要

 ストックオプションには自己株式方式と新株引受権方式の2種類があります。

 それぞれの制度の概要は次の通りです。

(1) 自己株式方式

 企業は、取締役または使用人 (以下「使用人等」と記す) に株式を譲渡するため自己株式を取得することができる。

 使用人等に株式を譲渡するためには、当該使用人等の氏名、譲渡する株式の種類、数、権利行使価格、権利行使期間等について定時総会の決議を要する。

 取得することができる株式は発行済株式総数の10%を超えてはならない。

 権利行使に備えて企業が保有する株式は、当該株式の取得価格の総額が配当可能利益の範囲内であること。

(2) 新株引受権方式

 企業は、定款に定めがあり正当の理由がある時は、使用人等に新株引受権を与えることができる。

 使用人等に新株引受権を与えるためには、当該使用人の氏名、新株引受権の目的である株式の額面無額面の別、種類、数、権利行使価格、権利行使期間等について定時総会等の特別決議を要する。

 新株引受権の目的である株式の総数は、発行済株式総数の10%以内であること。

 権利行使期間は10年以内。

 新株引受権は譲渡できない。

(3) その他

 自己株式方式と新株引受権方式は同時に使用できない。

 自己株式方式では決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時まで、新株引受権方式では決議後1年以内に権利を与えること。

 

労働基準法との関係(平成9年6月1日基発 412号)

 ストックオプション制度は、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、また権利行使するとした場合においてその時期や株式売却時期をいつにするかを労働者が決定するものとしていることから、この制度から得られる利益は、それが発生する時期および額ともに労働者の判断に委ねられるため、労働の対償ではなく「労働基準法第11条の賃金に当たらない」とされています。したがって、ストックオプションを賃金や賞与の一部として取り扱うことは、労働基準法第24条に違反することになるため、あくまで賃金や賞与等とは別枠のものとしておく必要があります。ストックオプションは労働基準法11条の賃金ではありませんが、労働条件の一部を構成するものですから、制度を導入する際には就業規則に記載しなければなりません  。

 

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