明治乳業事件(最高裁第三小法廷 昭和58.11.1)

 形式的に就業規則の規定に違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、規定の違反になるとはいえず、本件ビラの配布の態様、経緯及び目的並びに本件ビラの内容に徴すれば、本件ビラの配布は、工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に当たり、就業規則の規定に違反するものではないとされた。

 食品製造等を業とするY社の工場に勤務するXは、国政選挙に関連した政治的内容を含むビラ60枚余を、休憩時間に工場食堂において2回にわたり配布した。Y社の就業規則では、「会社内で業務外の集合又は掲示、ビラの配布等を行なうときは予め会社の許可を受け所定の場所で行なわなければならない」と定められていたが、XはY社の許可を受けていなかった。Xは工場長からビラの配布を行わないよう注意されたが、本件ビラは許可を要しないものであると反論し、ビラを配布した。  Y社はXの行為を就業規則中の「会社の諸規定或は労働協約に違反したとき」、「正当な理由なくして上司の命令に従わないとき」に該当するとして、Yを戒告処分に付した。 Xは、本件処分の無効の確認を求めて出訴。1審及び2審はXの主張を認めたため、Y社が上告したもの。

(判決の要旨)  

 Xの本件ビラ配布は、許可を得ないで工場内で行われたものであるから、形式的にいえば就業規則の条項等に違反するものであるが、右各規定は工場内の秩序の維持を目的としたものであることが明らかであるから、形式的に右各規定に違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右各規定の違反になるとはいえないと解される(電電公社目黒電報電話局事件最高裁判決参照)。そして、前記のような本件ビラの配布の態様、経緯及び目的並びに本件ビラの内容に徴すれば、本件ビラの配布は、工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に当たり、右各規定に違反するものではないと解するのが相当である。したがって、右と同旨に出てXに対する本件戒告処分を無効とした原審の判断は相当であり、原判決に所論の違法はない。

 

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