ADHD(注意欠陥・多動性障害)

 ADHD(注意欠陥・多動性障害)は英語でAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、不注意(集中力がない)多動性(じっとしていられない)衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。  

 文部科学省はADHD(注意欠陥・多動性障害)を以下のように定義しています。

 「ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。 また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」

 2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、診断年齢は7歳から12歳に引き上げられております。ADHDは「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれることが多い。しかし、2014年に日本精神神経学会により「注意欠陥」が「注意欠如」に改名されたため、日本での正式な診断名は「注意欠如・多動性障害」となります。

 

ADHDの3つの症状

 ADHDの症状は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けることができます。

1 不注意
 ・忘れ物が多い
 ・何かやりかけでもそのままほったらかしにする
 ・集中しづらい、でも自分がやりたいことや興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えができない
 ・片づけや整理整頓が苦手
 ・注意が長続きせず、気が散りやすい
 ・話を聞いていないように見える
 ・忘れっぽく、物をなくしやすい

2多動性
 ・落ち着いてじっと座っていられない
 ・そわそわして体が動いてしまう
 ・過度なおしゃべり
 ・公共の場など、静かにすべき場所で静かにできない

3衝動性
 ・順番が待てない
 ・気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある
  ・会話の流れを気にせず、思いついたらすぐに発言する
 ・他の人の邪魔をしたり、さえぎって自分がやったりする

 

ADHDの3つのタイプとそれぞれの特徴

 ADHDには3つの症状がありますが、人によってその現れ方は異なり、大きくは3つのタイプに分けることができます。また、性別によっても多いタイプが変わってきます。

1 多動性-衝動性優勢型

 多動と衝動の症状が強く出ているタイプです。
・落ち着きがなく、授業中などでも構わず歩き回ったり、体を動かしてしまうなど、落ち着いてじっと座っていることが苦手
・衝動が抑えられず、ちょっとしたことでも大声を上げたり、乱暴になったりしてしまい、乱暴な子、反抗的だととらえられやすい
・衝動的に不適切な発言をしたり、自分の話ばかりをする
・全体的にみるとこのタイプは少ないが、男の子に現れることが多い

2 不注意優勢型

 不注意の症状が強く出ているタイプです。
・気が散りやすくて、物事に集中することが苦手
・やりたいこと、好きなことに対してはとても集中して取り組むが切り替えが苦手
・忘れ物や物をなくすことが多く、ぼーっとしているように見えて人の話を聞いているのか分からない
・幼い子どもの頃は、ADHDではなくとも忘れ物が多い人が少なくないため、ADHDと気づかれにくい。女の子に現れることが多い。

3 混合型

 多動と衝動、不注意の症状が混ざり合って強くでているタイプです。
・多動性-衝動性優勢型と不注意優勢型のどちらの特徴も併せ持っており、どれが強く出るかは人によって異なる
・忘れ物や物をなくすことが多く、じっとしていられず落ち着きがない
・ルールを守ることが苦手で順番を守らない、大声を出すなど衝動的に行動をすることがある
・ADHDの約8割がこのタイプに属しており、早期発見しやすいが、アスペルガー障害との区別がつけづらく、ADHDとの診断を下すのが難しい場合もある

 

分類

 これらの分類はアメリカ精神医学会のDSM-4-TRによって規定されたものです。2013年に出版されたDSM-5においては、新たな診断基準が規定されています。過去6ヵ月の症状の現れ方によってADHDを分類します。
 1. 混合状態(Combined Presentation)  
 2. 不注意優勢状態(Predominantly Inattentive Presentation)  
 3. 多動性/衝動性優勢状態(Predominantly Hyperactive/Impulsive Presentation)
の3つの「状態」に分類されていて、さらに重症度が3段階に分かれて診断が下されます。  

 過去6ヵ月の症状によってADHDの分類を診断するというのは、年齢によって障害の症状の現れ方が変わるということを考慮したものだと考えられます。また、障害がはっきりと分類できるものではなく、流動的なものだという考え方が現れていると言われています。

年齢別に見たADHDの症状の現れ方 に続く