年齢別に見たADHDの症状の現れ方

乳児(0歳〜1歳)

 ADHDは発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすくでることはありません。ですから、生後すぐにADHDの診断がでることはありません。また、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあるので、判断には注意が必要です。しかし、ADHDと診断された人たちは、乳児期に共通して特徴的な行動をとっていることが多いです。

共通して見られる行動  
 ・なかなか寝付かない  
 ・寝返りをうつことが多く、落ち着きがない  
 ・視線が合わない  
 ・抱っこされることを嫌がる  

 上記の行動が共通して見られていますが、このような行動は定型の成長過程でも見られることがあるので、一概にADHDと結びつけることはできません。特に、多動に関しては、生後まもなくから多動が気になる場合はごく少数です。

 

幼児(1歳〜小学校就学)

 小学校に入る頃までにADHDの症状が現れる子が多いと言われています。

 この時期のADHDの子は以下のようなトラブルの原因となる行動をとることが多い。
 ・他の子をたたいたり、乱暴をすることがある  
 ・落ち着きがなくてじっとしていることができない  
 ・我慢ができないので癇癪をおこすことが多くみられる  
 ・物を壊すなど乱暴・破壊的な遊びを好むことがある  

 これらの行動について、いくら言葉だけで注意しても同じ行動を繰り返してしまいます。

 ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあります。必ずしもADHDだとは限らないので、特徴はあくまで参考程度にしましょう。

 幼児期になると、落ち着きがなかったり癇癪を起こしやすいといった行動から、ADHDに気づくことが多いようです。また、保育園や幼稚園でも他の子どもとトラブルを起こしがちになってしまいます。そのような行動が原因となり誤解され、しつけがされていないなど言われることがありますが、ADHDは先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではありません。  

 幼児期のADHDの子どもは他の発達障害との合併症状として、言葉の遅れなどの特徴が見られることもあります。

 

小学生(6歳〜12歳)

 ADHDの子どもが小学校に入学すると、どのような症状や行動が見られるのでしょうか。

 以下のような症状が顕著に現れてきます。  
 ・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする
 ・注意力が散漫になって、興味の対象も次々と変化する  
 ・物を忘れたり、なくしてしまうことが多い  
 ・突然話しかけて他の人の邪魔をしたり、他の人に話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる
 ・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない
 ・友達と仲良くできずトラブルを引き起こしてしまうことが多い
 ・不器用で何度やってもダンスが上手く踊れない、工作が苦手などがみられる

 結果的に周りから問題視される 何度も同じことを繰り返し注意されたり、授業態度などから周りからは問題視されたり、怠けていると思われることがあります。しかし、本人からすれば悪気があってしていることでもなければ、怠けているわけでもありません。

 小学校に上がる頃になると、ADHDの症状が顕著に現れるため、ADHDの診断が下される場合が多くなります。ADHDの診断が下される平均年齢は、男子8歳・女子は12歳と言われています。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5によるとADHDは12歳前に症状が現れるとされていますが、必ずしもこの年齢で診断が下されるわけでなく、この年齢以前から症状がはっきりわかる場合には診断が下されます。

 

中高生(12歳〜18歳)

思春期のADHDは、合併症状にも注意

 思春期にはADHDの症状が治まる代わりに、学習障害(LD)などの発達障害との合併症状が目立ってくることがあります。対人関係がうまく築けない場合、自閉症との合併症状がある疑いもあります。ADHDの症状がみられる人は他の発達障害を合併している可能性もあります。よくチェックして疑いがある場合には診断を受けてみましょう。

 例えば、
 ・親・教師への強い反抗 ・友人とうまく付き合えず、トラブルになることが多い
 ・ルールに従うことができない
などの行動がみられることがあります。

 思春期になると、他人と自分を比べて悩みやすくなります。ADHDの子どもも例外ではなく、他人と自分をよく比べるようになります。そして、他人にはできて自分ができないことに劣等感を感じてしまいがちです。  

 劣等感から次の行動をとる場合があります。
 ・勉強への意欲の低下、学力の低下がいちじるしくなる  
 ・やる気がなく投げやりな態度  
 ・自分の世界に引きこもりがちになる場合もある  

 この結果、不登校やひきこもりなどの二次障害が現れることもあります。

 自分の障害を受け止めることができず、薬の服用を避けたり量を勝手に変えて服用することがあります。思春期の不安定な気持ちに寄り添いながら、家族が上手にサポートしましょう。

 

成人期(18歳〜)

 子どもの頃にADHDと診断された人の中には、成長につれて症状がなくなったり、軽くなる人もいます。自分の特性を理解し、苦手な場面にもどのように対処するかを学ぶことで、日常生活の困難を乗り越えているひともいると考えられます。  

 ADHDの特性を生かし、才能を発揮して会社の社長になっていたり、職場で良い成績を出している可能性もあります。しかし、大人になっても症状が残り、仕事や人間関係にも影響を及ぼしてしまう人もいるのです。この人たちは仕事上で落ち着かなくて困っていたりミスして上司から怒られたりしていると思います。生涯にわたって続くと考えられますが、3人に1人は治っているかわからなくなっています。その残りの半分は、社長や学校の先生などすごい人物になっている可能性があります。

 大人になってADHDと診断を受けたり診断を受けていない人でも、同じ症状で困っている人も多くおり、大人の発達障害のなかではADHDの割合がもっとも高いと言われています。

大人のADHDに現れる症状  
 ・計画を立てたり、順序立てて仕事や作業を行うことが苦手  
 ・細かいことにまで注意が及ばないので、仕事や家庭でもケアレスミスが多い  
 ・約束などを忘れたり、時間に遅れたり、締め切りなどに間に合わない
 ・片づけが苦手で乱雑になってしまう  
 ・同時に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する
 ・手間がかかったり、時間がかかったりして、集中が必要なものは後回しにしがち
 ・何かに「はまる」と、ほどほどで止めることができず、なかなか抜け出せない(読書やネットサービス、ゲームなど)
 ・長時間座っていることが苦手で、手足がむずむずしてくる

 ADHDは、大人になってから急に症状が強く現れる、というものではありません。ですが、ADHDのある大人は、子どもの頃より困難が多いと感じることも多いようです。  

 ・親や教師のフォローがなくなる  
 ・やることが多くなる  
 ・大人としての行動や責任を求められる
など、周囲の環境の変化が大きいことがその理由と考えられます。そのため、大人になると社会生活を送るのが難しくなったと感じるADHDの人が多くいます。

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