年次有給休暇の計画的付与

 年次有給休暇の取得は、個々の労働者が、時季を指定して請求することになっていますが、年次有給休暇の取得日数を増やすために、計画的に有給休暇をとる制度が導入されています。これを年次有給休暇の計画的付与といいます。

 労使協定を締結すれば、年次有給休暇のうち「5日を超える日数」については、労使協定で定めた日に付与することができます。

 例えば、休日日数の関係で4月30日、5月1日、5月2日を出勤日としなければならないとき、労使協定により、この3日を事業場全体で一斉に有給休暇を取ることにして(計画的付与)、事業場の操業を4月29日から5月6日まで停止するということができるのです。

 労使協定による計画的付与の対象となるのは、年次有給休暇の日数のうち、個人的事由による取得のために留保される5日を超える部分です(昭和63年1月1日基発1号)。

 なお、年次有給休暇の日数が足りない、あるいはない労働者を含めて年次有給休暇を計画的に付与する場合には、付与日数を増やす等の措置が必要となります。

 

 この制度を採用するには、まず、就業規則年次有給休暇の計画的付与を行う旨を規定し、それに基づいて事業場ごとに、従業員の過半数を代表する者または過半数で組織する労働組合との間で労使協定を締結します。この労使協定は、行政官庁への届出義務はありません

 労使協定書においては、対象とする年次有給休暇、計画的付与の具体的な方法と日数、計画的付与の対象者(あるいは、対象から除く者)、対象となる年次有給休暇を持たない従業員の扱いなどについて協定します。

 計画的付与の方法には、
 ① 一斉付与、
 ② 班別・グループ別付与、
 ③ 個人別付与
の3つの方法がありますが、いずれかを選択できます。a1160_000009

 この計画的付与を行う場合は、労使協定で、具体的な方法を定めなければなりません。年次有給休暇の計画的付与を行うための労使協定は、事業場全体の一斉休業の場合は、具体的な付与日を協定で決めなければなりません。班別・グル-プ別付与の場合には、班別、グル-プ別に、具合的な付与日を決めなければなりません。

 個人別付与とする場合には、あらかじめ、計画的付与の日(期間と日数)を労使協定で定め、それに基づいて従業員が計画的に年次有給休暇を取得できるようにします。

 年次有給休暇付与計画表による付与であれば、計画表を作成する時期、作成の手続等を協定しなければなりません。

 計画的付与において、特別の事情により付与日をあらかじめ定めることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定で除外することもできます

 年次有給休暇の日数のうち計画的付与の対象となる5日を超える部分には、前年度からの繰り越された年次有給休暇も含まれます

 労使協定で定められた計画的付与日については、労働者がその時季を変更することができないのですが、使用者の側も、この日については時季変更権を行使して他の日に計画的付与の日を変更することはできません。

 変更の必要があって、計画的付与日を変更するためには、計画的付与を定めた労使協定そのものを変更する必要があります。 例えば、次のように、就業規則に指定日(計画的付与の日)を変更することがある旨を定めておくとよいでしょう。

就業規則規定例
第○条 (年次有給休暇)
  ・・・ 
 この協定の定めにかかわらず、業務遂行上やむをえない事由のために指定日に出勤が必要と認められる場合には、会社は従業員代表と協議のうえ、本協定条に定める指定日を変更することができるものとする。

 ただし、この場合にも、変更した指定日について労使協定を締結しなければなりません。

 年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定を締結した後で、年次有給休暇の自由利用を保障された日数(5日またはそれ以上の日数)をすべて取得した従業員が、計画的付与日数相当分まで休暇を請求してきた場合、会社側はそれを拒否することができます。

 計画的付与が労使協定で決まった場合、この日数分については労働者の時季指定権がなくなります。また、同様に使用者は時季変更権の行使ができなくなります。したがって、事業場全体を年次有給休暇の計画的付与により一斉休業とした場合には、たとえ予想に反して業務が繁忙になったとしても、労働者の一部又は全部を出勤させることはできず、休業としなければなりません。

 計画的付与の対象となるのは、年次有給休暇のうち5日を超える部分です。すなわち、年次有給休暇の日数が10日の労働者は5日、20日の労働者は15日まで計画的に付与することができます。もし、継続勤務年数の少ない労働者を含めて、事業場全体を一斉付与により休業しようとする場合には、勤続年数の少ない労働者の年次有給休暇日数を増やすか、不足する日数分の休業手当の支払いが必要になります(昭63.1.1 基発1号)。通常は、特別休暇を付与して処理することが一般的です。

 

有給の計画消化日に出勤した人の扱い

 本来出勤するべき日に出勤したのだから休日出勤手当は不要です。しかし、替わりに有給を取得するように奨励するとよいでしょう。

 

(判例)

高知郵便局計画休暇事件 最高裁第2小(昭和58.9.30)

 

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