秋田相互銀行賃金差額請求事件 秋田地方裁判所判決(昭和50年4月10日)

(分類)

 セクハラ

(概要)

 大学教授による女性非常勤研究補助員に対するわいせつ行為はなかったとして、強制わいせつ行為があったとする内容の雑誌への情報提供等につき右女性に対する名誉毀損を理由とする慰謝料の支払が命ぜられた原審の判断が否定された。

 被控訴人は、本件各告発行為について、故意又は過失により違法に被控訴人の社会的評価を低下させたものであって、被控訴人に対する名誉毀損行為となる旨主張する。   しかしながら、これまで検討してきたところによれば、本件各告発行為は、いずれも、被控訴人から強制わいせつ行為を受けた不法行為の被害者である控訴人が、被控訴人から適切な被害回復を得られないために、自分が真実と考えることを主張して加害者である被控訴人を社会的に告発しようとした行為にほかならず、このうち、本件提訴行為及び本件告発行為は、その主張する事実が真実である以上、いずれも正当な権利行使として当然に許される適法な行為であるし、本件送付行為についても、加害者である被控訴人が勤務する職場を所管する県の部局の部長及び課長、職場の学長及び事務局長などの限定された者六名に対して、被控訴人の処分を求めて事件を告発したものであって、その内容においても、事件の詳細が正確に述べられずに抽象的な表現がなされてはいるものの、ことさら虚偽や誇張が含まれているわけではなく、いずれにしろ正当な権利行使の範囲内に止まる行為であって、違法とまでいえないことは明らかである。〔中略〕

 控訴人は、自ら積極的にA(記者)に情報を提供したわけではなく、Aの方からの取材申入れに応じて情報を提供したにすぎないこと、右情報提供行為は、強制わいせつ事件の被害者である控訴人が、加害行為及び事件後の加害者である被控訴人の対応についての情報を提供したものであり、しかも、真実の情報が提供されていること、右情報提供時において、Aから控訴人に対し、「B誌」(雑誌名)が事件を記事にするかどうか、記事にするとしてどのような角度から記事にするのか、などについて一切の説明がなされていなかったこと、控訴人は、「B誌」の記事の内容構成について何らかの影響を及ぼしうるような地位にはなく、本件記事は、控訴人からの取材のみならず、被控訴人や他の関係者からの取材から得られた情報を総合して作成されたものであり、記事の内容構成は「B誌」の編集部の権限と責任において行われたこと、以上の事実が認められるから、以上を総合するならば、控訴人が本件仮処分事件の裁判記録や本件テープをAに渡したことは、いまだ違法な行為とはいえないし、本件記事が控訴人の情報提供行為が契機となったものであるとしても、いまだ、右行為と本件記事が作成され被控訴人の名誉が毀損されたこととの相当因果関係を肯定するには至らないというべきである。  以上によれば、被控訴人において、控訴人による被控訴人に対する名誉毀損行為であると主張する行為は、いずれも適法なものであるか、いまだ違法とはいえないものであるか、もしくは、名誉毀損の結果とは相当因果関係を有しないものである。

 

(関係法令)

 民法709条 710条

 

(判例集・解説)

 時報1681号112頁  労働判例756号33頁 労働法律旬報1463号50~58頁

 

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