荒川農協事件 最高一小判決(昭和45年6月4日)

(分類)

 退職金  退職

(概要)

 不正行為に関連し農協に1,000万円相当の損害を与えたため農協役員会により懲戒免職処分を決議されたが、組合長により依願免職処分とされた農協職員が、農協に対し退職金の支払を請求した事例。

 上告組合は昭和35年12月初めから翌年1月初めにかけて、監督官庁の検査を受けたところ、現金の不当支出金 1,683,900円、購買在庫品不足金 3,562,499円、不健全債権金 4,435,384円の存在を指摘され、上告組合に多額の業務および会計上の不正ないし不当処理の存することが判明したため、既に上告組合を退職していた被上告人Y1と被上告人Y2を除くその余の被上告人らおよび訴外Aの責任問題が論じられ、右の者らを懲戒処分に付すべきであるとの意見の表明もされたが、右の不正が具体的に上告組合の職員のうち何人のいかなる行為によりいかなる範囲で生じたかについての調査は十分でなかったため、右の者らについて責任の追求をなしうるような状態にはなかったが(中略)。

 前示のような多額の不正が存する以上、職員全体の責に帰せしむべきであるとして、昭和36年3月1日の上告組合の役員会において右の者らを懲戒処分に付することを決議し、その旨の辞令は同日まで上告組合の組合長の職にあった訴外Bにおいて同年2月28日付をもって作成交付するよう、上告組合は同訴外人に委任したのであるが、同訴外人は、被免職者やその家族から、懲戒免職処分が自分の意思によってなされたものであると思われることを懸念し、かつ被免職者の将来を慮って依願免職の形で右の者らを退職させることを考慮するに至り、同年3月8日から同月15日頃までの間に右の者らに対し同年2月28日付をもって依願免職の辞令を交付し、上告組合の辞令簿にも、「事務の都合により職を免ず」る旨の記載をなしたものであり、そして、(中略)。  訴外Bは右3月8日当時には既に上告組合の組合長の地位にはなかったのであるが、同訴外人の組合長当時の不正事件についての右の者らに対し同年2月28日付をもって処分をなすべき旨を上告組合から委任されていたのであるから、同日付をもって右の者らに対して上告組合の名において同訴外人のなした前記依願免職の処分は有効である旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。

 (関係法令)

 労働基準法2章

(判例集・解説)

  タイムズ251号178頁  金融商事218号7頁

 

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