退職金制度を廃止

 退職金制度を廃止するときは、「労働条件の不利益変更」の問題があります。そのため、労働者の理解を得ることが重要になります。そのためには、労働者代表だけでなく、全員と粘り強く協議することが必要になります。

 退職金制度を廃止するためには社会通念上妥当とされる理由何らかの代替措置、さらに労働者に対しての十分な説明が必要となります。

 退職金制度の廃止に社会通念上妥当とされるほどの、やむを得ない相当の理由があれば、労使間で十分な時間を掛けて話し合いの場を持ち、労働者の個別の同意を得て廃止することは可能です。

御国ハイヤー事件(最高裁 昭58.7.15)

 会社が退職金支給規程を従業員の同意なしに変更し、以後の就労期間は退職金の算定基礎となる勤続年数に算入しないこととしたのに対し、原審は本件退職金支給規程は就業規則としての性格を有しており、右の変更は従業員に対し同年8月1日以降の就労期間を退職金算定の基礎となる勤続年数に算入されなくなるという不利益を一方的に課するものであるにもかかわらず、上告人はその代償となる労働条件を何ら提供しておらず、また右不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、右の変更は合理的なものということができないから、被上告人に対し効力を生じない、と判断した。以上の原審の認定判断は原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

大曲市農協事件(最高裁 昭60.20.16)

 新たな就業規則の作成又は変更によって既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないと解すべきである。特に賃金、退職金など、労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。

 

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