東京リーガルマインド事件 東京地方裁判所(平成7年10月16日)

(分類)

 退職  競合避止

(概要)

1.会社と代表取締役との間に締結された退任後における後者の競業禁止を定める特約が、後者が会社の営業秘密を取り扱いうる地位にあったこと、競業禁止期間が退職後2年間に限られていること等から、会社の秘密保持義務確保の目的のために必要かつ相当な限度を超えているものとは認められず、公序良俗に反するものではないとされた事例。

2.会社と監査役との間に締結された退任後における後者の競業禁止を定める特約が、監査役についてまで競業を禁止することにより会社が確保しようとする利益が何かが明らかでないこと、競業が禁止される場所の制限がないこと、競業禁止の不利益に対する代償措置が十分でないこと等の理由により、公序良俗に反し無効と認められた事例。

3.
(1) 就業規則を変更して労働者の退職後の競業避止義務を定める条項を新たに設けたことが就業規則の不利益変更に当たるとされ、同義務が会社の重要な営業秘密の保護を目的としており、競業禁止の期間を2年に限定した上、場所について特に制約を設けなかったことなどから、代償措置をとらなくても不合理とはいえないとして有効とされた事例。

(2) 会社の役員との間で締結された退職後の競業避止義務を定める特約につき、監査役であった者との特約については、職務との関係で競業を禁止することの合理的理由の疎明がなく、競業禁止の場所的制限がないなど、目的達成のためにとられている競業行為禁止の内容が必要最小限とはいえず、競業禁止による不利益に対する代償措置も十分とはいえないから、公序良俗に反して無効であるが、代表取締役であった者との特約については、会社の営業秘密を取り扱い得る地位にあったといえるから、公序違反により無効とはいえないとされた事例。

(3) 2掲記の監査役であった者が退職後に行った競業行為につき、一の就業規則に基づく競業避止義務の適用を受けるが、同人の退職に際して、同人と会社の意思決定の権限をもつ者とが競業行為に際しては会社と協議する旨の合意を取り交わしており、同人は右協議を経て競業行為を行ったものとされた事例。

(4) 2掲記の役員であった者らが中心となって設立した競業会社の営業の差止請求につき、競業行為の差止請求は使用者が営業上の利益を現に侵害され、又は侵害される具体的な恐れがある場合に限り許されるところ、右競業会社の営業だけでは未だ右営業利益の侵害又は侵害の具体的な恐れがあるとは認められないとして却下された事例。

(判例集・解説)

 労働経済判例速報1596号3頁  判例時報1556号83頁
 判例タイムズ894号73頁  労働判例690号75頁

 

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