労働保険の適用

 労働保険とは労災保険雇用保険とを総称したものであり、業務上災害と通勤途上災害による傷病等に対する補償、失業した場合の給付等を行う制度です。

 保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については、両保険は労働保険として、原則的に、一体のものとして取り扱われています。  

 労働保険は、農林水産の事業の一部を除き、労働者を1人でも雇っていれば適用事業となり、その事業主は成立手続を行い、労働保険料を納付しなければならないことになっています。

 

労災保険とは

 労働者が業務上の災害通勤による災害を受けた場合に、被災労働者や遺族を保護するために、必要な保険給付を行うものです。

 労働者の業務上又は通勤途上の怪我や死亡、休業といった事故に対して療養費、休業手当、障害年金(一時金)、遺族年金(一時金)といった補償をします。

 また、勤務している会社が倒産した場合など、賃金の未払いが発生した場合の未払い賃金の立て替え払い事業も行っています。

 

雇用保険とは

 従業員の方が失業された場合、失業給付金等が支払われます。

 事業主の方には、従業員の採用、失業の予防等の措置に対し、一定の要件を満たすと各種助成金等が支給されます。

 

労働保険(雇用保険・労災保険)に加入しなければならない事業所

 労災保険および雇用保険の場合は、事業主の意思の如何にかかわりなく、労働者を1人でも雇用している事業所は、業種規模の如何を問わず全て適用事業となります。

 ただし、例外として農林水産業のうち常時5人未満を雇用する個人経営の事業については、当分の間任意適用事業とされています。

 また、国の直営事業や官公署などについては、適用除外となっています。

 

○労災保険の適用事業所

(原則)
 労働者を使用する事業を適用事業とします。適用を除外される一部の事業を除いて、労働基準法が適用されるすべての事業所について、労災保険法が適用されます。
 事業とは、企業そのものではなく、工場、鉱山等、経営組織として独立性を保ち、かつ、場所的にも独立性を持っているものをいいます。

(適用除外)
 次の事業は適用を除外されます。(任意加入もできません)
(1) 国の直営事業:林野、印刷、造幣
(2) 官公署の事業:非現業の国と地方自治体の官公署  
  地方公務員のうち現業部門の非常勤職員は、適用除外されず、労災保険が適用されます。
(3) 船員保険の被保険者(船員保険に労災保険法相当の事業があります)

 

○雇用保険の適用事業所

強制適用事業

 雇用保険法では、「この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする」(同法第5条第1項)と定めており、原則として事業の種類や規模のいかんを問わず、労働者を雇用する法人や個人事業をすべて雇用保険の適用事業(「強制適用事業」)とし、そこで働いている労働者を被保険者として取り扱うこととしています。

 

暫定任意適用事業

 個人で農業や漁業を営んでいる小規模の事業所については、雇用保険への加入が強制ではなく、任意(「暫定任意適用事業」)とされています(同法附則第3条)。

一定の要件とは、
 (1) 農林水産業
 (2) 個人経営
 (3) 常時5人未満の労働者を使用する事業に限る
を満たす場合です。

 この暫定任意適用事業の要件に該当する場合で、雇用保険への加入を希望するときには、事業所が使用する労働者(雇用保険の適用除外者を除く)の2分の1以上の同意を得て、任意加入の申請を行うことにより、労働大臣の認可を受ければ、加入することができます(徴収法附則第2条)。

 ただし、暫定任意適用事業の要件に該当する事業の事業主が任意加入の認可を受けた場合、原則として、被保険者になることを希望しない者を含めて使用される労働者すべて(雇用保険の適用除外者を除く)が被保険者となることに留意ください。

 暫定任意適用事業の要件に該当する事業の事業主が加入を希望しない場合であっても、使用される労働者の2分の1以上の者が加入を希望するときには、事業主は加入の申請をしなければなりません(徴収法附則第2条)。

 暫定任意適用事業の廃止の申請を行おうとする場合には、使用される労働者の4分の3以上の同意を必要とします(同則第4条)。

 上記事業のうち、次の(1)~(3)の事業(労告35号の事業)は危険なため、強制適用事業とします。    
(1) 林業で、常時労働者を使用するもの又は1年以内の期間における使用労働者延べ人員が300人以上であるもの   
(2) 一定の危険有害な作業を主として行う農業・畜産・養蚕・水産の事業で常時労働者を使用するもの
(3) 特定水面以外(主に外洋)の水面で操業する5トン以上30トン未満の漁船による漁業

 労災保険では、農業に限り、事業主が特別加入をする場合には、常時使用労働者数が5人未満であっても当然適用事業となります。

 

一元適用事業と二元適用事業

(1) 一元適用事業
 労災保険と雇用保険を一つの労働保険の保険関係として取り扱い、保険料の申告・納付等を両保険一本で行うもので、次の二元適用事業以外の事業をいいます。

(2) 二元適用事業
 労災保険の保険関係と雇用保険の保険関係とを別個に取り扱い、保険料の申告・納付をそれぞれ別々に行う、次の事業が該当します。
 ① 都道府県及び市区町村が行う事業
 ② ①に準ずるものの事業
 ③ 港湾労働法の適用される港湾の運送事業
 ④ 農林・水産の事業
 ⑤ 建設の事業

 

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