従業員が退職したとき

○退職・解雇・死亡・役員就任など被保険者でなくなるとき

 雇用保険の資格は個人(被保険者)で保有することになりますが、適用事業所に雇用されることにより適用となるため、被保険者が会社を辞めたりして雇用関係が終了した場合は、その従業員は被保険者資格を喪失することになります。その時は手続きを行わなくてはなりません。
 

従業員の雇用保険の手続き

届書
 「雇用保険被保険者資格喪失届」
 「雇用保険被保険者離職証明書」(3枚1組)

提出期限
 被保険者でなくなった日(退職日の翌日)から10日以内

提出先
 事業所の所在地を管轄するハローワーク

添付書類等
 賃金台帳  出勤簿
 疾病等により30日以上賃金が受けられなかったときは、医師の診断書等。
 その他、離職理由の確認ができる書類等
 (就業規則、登記簿謄本、雇用契約書、工事契約書、タイムカード、労働者名簿、辞令および他の社会保険の届書(控)等)
一般労働者派遣事業にあっては「労働者派遣終了証明書」
経過措置の適用を受けている者にあっては「雇用保険被保険者区分経過措置申出受理通知書」

 従業員が退職した場合、失業給付を受けるために離職票の交付の希望の有無を本人より確認する必要があります。離職時の年齢が59歳以上の者は、必ず離職証明書の作成をして下さい。

 従業員から離職票の交付希望があったときは、いつでも(退職後でも)会社は離職票を作成して下さい。

 離職証明書の作成に当たって、次の内容にご注意ください。 
 離職時の被保険者区分が短時間労働被保険者以外の被保険者の場合は、「離職の日以前(被保険者区分変更の日前)の賃金支払状況等」欄に離職の日以前1年分を、短時間労働被保険者の場合は離職の日以前2年分を記載してください。なお、短時間労働被保険者の場合は、記載欄に不足が生じることがありますので、その場合は、別葉の離職証明書の用紙を続紙として用いて作成してください。
 同一の事業所に引き続き雇用された間に、被保険者区分の変更があった場合は、最後に変更があった日以後の期間のみを対象として記載してください。ただし、最後に変更があった日から離職日まで被保険者として雇用された期間の離職証明書のみでは、受給資格を満たしていない場合は、変更があった日以前の期間について別葉の離職証明書の用紙を用いて作成してください。この場合、離職した被保険者に交付する証明書は「離職票」といいます。
 ⑨欄の賃金支払基礎日数は、月給者の場合は暦月で記入する。
 ⑫欄の賃金額
   少なくとも7ヵ月分以上記入する。
   短時間労働被保険者の場合は、14ヵ月分以上記入する。
 A欄は、賃金の主なものが月・週等により決められている場合に、B欄は、日・時間・出来高等により決められている場合に、それぞれの欄に記入する。
 離職者本人から⑮欄⑯欄に、離職証明書に記載している内容、特に離職理由について異議がないのか、あるのかの意思表示をしてもらう。
 このときに、離職者本人から署名・押印が得られないときは、本人から署名が得られない理由(例えば、本人が出社しない)を記載し、かつ会社の代表者印を押印する。 

外国籍の方の雇用保険を喪失させる場合
 雇用保険被保険者資格喪失届の備考(裏)に国籍、在留資格、在留期間等を記載して下さい。

ハローワークから交付されるもの
 資格喪失確認通知書(事業主通知用)
 雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
 雇用保険被保険者離職票-1 ・離職票-2  (離職者に交付してください)

 

○特定受給資格者、特定理由離職者

 倒産・解雇等により離職した方を特定受給資格者、労働契約が更新されなかったため離職した方、正当な理由のある自己都合退職者を特定理由離職者といいます。

1.特定受給資格者の範囲   

Ⅰ.「倒産」等により離職した者
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続きの申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1カ月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者および当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

Ⅱ.「解雇」等により離職した者
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)による離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2カ月以上となったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(または低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る)
⑤ 離職の直前3カ月間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、または事業主が危険もしくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険もしくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において、当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する場合を除く)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥または著しい冷遇もしくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、および事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握しながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者
⑩ 事業主から直接もしくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3カ月以上となったことにより離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

2.特定理由離職者の範囲

Ⅰ.期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る) (上記「1.特定受給資格者の範囲」のⅡの⑦または⑧に該当する場合を除く)(※1)
※1 労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約の更新の確認まではない場合がこの基準に該当します。

Ⅱ.以下の正当な理由のある自己都合により離職した者
① 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
② 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
③ 父もしくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父もしくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合または常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
④ 配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤ 次の理由により、通勤不可能または困難となったことにより離職した者  
 ⅰ)結婚に伴う住所の変更
 ⅱ)育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用または親族等への保育の依頼   
 ⅲ)事業所の通勤困難な地への移転  
 ⅳ)自己の意思に反しての住所または居所の移転を余儀なくされたこと
 ⅴ)鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止または運行時間の変更等
 ⅵ)事業主の命による転勤または出向に伴う別居の回避  
 ⅶ) 配偶者の事業主の命による転勤もしくは出向または配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥ その他、上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑩に該当しない企業整備による人員整理等で希望の退職者の募集に応じて離職した者等

 

社会保険の資格喪失

 社会保険の資格を喪失するのは、次に掲げる4つのケースがあります。
 (1) 退職したとき
 (2) 死亡したとき
 (3) 雇用体系に変更があり、健康保険加入資格を失ったとき
 (4) 後期高齢者医療制度の被保険者等となったとき
 (5) 事業所が廃業または吸収合併により、消滅したとき

資格喪失日
 被保険者の資格は、次の(1)~(4)の日に喪失します。
 (1) 適用事業所に使用されなくなった日の翌日
 (2) 被保険者から適用除外される事由に該当した日の翌日
 (3) 任意適用事業所が任意脱退の認可を受けた日の翌日
 (4) 死亡した日の翌日
 ただし、(1)~(3)にあたる日に、他の事業所で使用されて被保険者となったときは、該当した日に被保険者でなくなります。

届出
 「健康保険・厚生年金保険被保険者 資格喪失届」

 退職日の翌日から5日以内(船舶 10日以内)

事業所管轄の年金事務センターまたは健康保険組合所へ提出。

添付書類
 ①健康保険被保険者証  (被扶養者証も含む)。
 ②下記a~dがあるときは一緒に提出  
  a. 高齢受給者証  
  b. 特定疾病療養受領証
  c. 健康保険限度額適用認定証
  d. 限度額適用・標準負担額限度額認定証等

被扶養者がいる場合
 「健康保険被扶養者(異動)届」 5日以内

第3号被保険者の資格喪失として 
 「国民年金 第3号被保険者届」  14日以内

 年金事務センターでは、被扶養者の非課税証明書または在学証明書、年金振込み通知書のコピー、被保険者証、同居要件の必要な被扶養者は住民票等の提示等を求める場合があります。

健康保険被保険者証  事業主へ返却 (5日以内)

資格喪失届に健康保険者証を添付できない場合
 「健康保険被保険者証回収不能届」  5日以内

 回収できない状況や回収を催促した状況を詳しく記入した「被保険者証回収不能届」を添付したうえで資格喪失の手続きをします。後日、回収できた時は、その旨を添えて保険者に返納します。

資格喪失年月日が受付年月日より60日以上遡る場合

添付書類
役員 
 「株主総会の議事録(写)」または「役員変更登記のある登記簿謄本(写)」(事実発生日の確認できるもの)

役員以外 
 「賃金台帳(写)」および「出勤簿(写)」 (事実発生日の確認できるもの)

 資格を喪失した月の保険料は徴収されません。ただし、新たに加入する健康保険で支払うことになります。

 同じ企業内で転勤などにより、勤務する事業所が変わった場合は転勤前の事業所で資格喪失、転勤先の事業所で資格取得の届出がそれぞれ必要となります。

 健康保険から国民健康保険への切り替えには資格喪失の事業主の証明または年金事務所への健康保険資格喪失届の控え(コピー)が必要です。

 

○2ヵ月以上勤務した方が退職後引き続き健康保険の被保険者になることを希望する場合

 「健康保険任意継続被保険者資格取得申請書」

 退職した日の翌日(喪失日)からら20日以内に住所地管轄の協会けんぽ または退職した会社が加入している健康保険組合に提出。
※20日を過ぎると手続きができなくなります。

添付書類
 「16歳以上の被扶養者(学生は除く)がいる方」は添付書類(原本)が必要です。(任意継続は個人で加入する保険なので、事業主の証明がないので省略できません。)
 ①同居で収入がない又は収入が扶養の範囲内である方  
   非課税証明書
 ②その他
  「年金を受給している」「前年は勤めていたが退職して収入が減った」などの方は別途添付書類が必要になる場合があります。

 

○解雇・退職後の医療、年金、雇用保険等

 解雇や退職によって離職し再就職しない場合は、次のような手続きが発生します。

(1) 退職後の健康保険
 国民健康保険に加入するか、家族が加入している健康保険に被扶養者として加入することになります。
 また、一定の要件を満たした場合には、退職前に加入していた健康保険に任意継続として加入することもできます。

(2) 退職後の年金
 国民年金に第1号被保険者として加入します。退職した人に20歳以上60歳未満の扶養している配偶者がいる場合は、その配偶者の方も第1号被保険者となります。
 退職した人が、厚生年金や共済組合に加入する被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者である場合は、第3号被保険者となります。

(3) 退職後の雇用保険 再就職を希望する場合
 求職の申し込みをして、失業給付(基本手当)を受給するための手続きを行います。

 その他、その年の途中で退職して再就職しなかった場合に、所得税の確定申告を行うと、納めすぎた税金を返してもらうことができます。

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。 労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ