ドイッチェ・ルフトハンザ・アクチェンゲゼルシャフト事件 東京地方裁判所(平成9年10月1日)
(分類)
賃金
(概要)
1.日本国内に営業所を有し、かつ、日本における代表者を定めている外国法人の従業員である日本人が同外国法人に対し、手当等の支払を求める訴訟について、日本国裁判所は、国際裁判管轄権を有する。(旧法関係)
2.
(1) 被告がドイツ法に準拠して設立され、ドイツに本店を有する会社であっても、日本における代表者を定め、東京都内に東京営業所を有することから、わが国の裁判権に服させるのが相当とされた事例。
(2) ドイツ法人たる航空会社に東京をベースとして雇用される日本人エアホステスについて、諸事実を総合すれば、雇用契約の準拠法はドイツ法であるとの黙示の合意が成立していたと推定された事例。
(3) 使用者による付加手当の廃止が、ドイツ法の下では、撤回留保条項に基づいて行われ、かつ「公正な裁量」に適合しているので有効と判断された事例。
3.使用者による付加手当の廃止が、ドイツ法の下では、撤回留保条項に基づいて行われ、かつ「公正な裁量」に適合しているので有効と判断された事例。
4.ドイツにおいて締結された日本(成田)をホームベースとするドイツの航空会社と日本に住所を有する日本人客室乗務員との間の雇用契約については、法令7条によるべきであり、当事者間に明示の準拠法合意はないが、ドイツの労働組合等と会社の間のドイツ労働法に基づく労働協約に依拠するとされていること、この労働協約で本件で争われている手当等に関する事項が定められていること、フランクフルトの本社が労務管理等を行っていること、手当等はマルクにより算定されていること、ドイツで雇傭契約書に署名していること等から、準拠法をドイツ法とする黙示の合意が成立していたものと推定することができる。
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(1) ドイツにおいて締結された日本(成田)をホームベースとするドイツの航空会社と日本に住所を有する日本人客室乗務員との間の雇用契約については、法例7条によるべきであり、当事者間に明示の準拠法合意はないが、ドイツの労働組合等と会社の間のドイツ労働法に基づく労働協約に依拠するとされていること、この労働協約で本件で争われている手当等に関する事項が定められていること、フランクフルトの本社が労務管理等を行っていること、手当等はマルクにより算定されていること、ドイツで雇傭契約書に署名していること等から、準拠法をドイツ法とする黙示の合意が成立していたものと推定することができる。
(2) 客室乗務員の労務供給地は多国間にまたがっていて単一の労務供給地はないため、ホームベースが日本であることのみでは準拠法を日本法とする合意が成立していたと推認することはできない。
6.ドイツにおいて締結された日本(成田)をホームベースとするドイツの航空会社と日本に住所を有する日本人客室乗務員との間の雇用契約上、会社が従来支給してきた付加手当を一方的に取り止めたのは無効であるとして乗務員が提起した同手当の支払いを求める訴えについては、会社は日本に営業所を有するとして、国際裁判管轄を肯定した事例。
(判例集・解説)
労働関係民事裁判例集48巻5・6号457頁 判例タイムズ979号144頁
労働判例726号70頁 労働経済判例速報1651号3頁
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