中国電力事件 最高裁第3小(平成4・3・3)

(分類)

 就業規則    組合活動    懲戒

(概要)

  労働者が就業時間外に職場外で行ったビラの配布行為についても、その内容が企業の業務等に関し事実に反する記載等をしたもので、企業の円滑な運営に支障を来たすおそれがある等の場合には、使用者は企業秩序維持のために当該行為を理由として懲戒処分を行うことが許されるとされた。

 電力会社であるY社に勤務するXらは、労働組合活動の一環として、就業時間外に職場外においてY社が計画している原子力発電所建設を批判するビラを配布した。Y社は、当該ビラの内容が虚偽であり、ビラの発行及び配布を行なったXらはY社の就業規則に所定する「会社の体面をけがした者」、「故意または重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当するとして、Xらを懲戒処分(休職2か月1名、同1か月3名、減給半日3名)とした。 Xらは懲戒処分の無効確認を求めて出訴したが、1審及び2審は、内容の大部分が虚偽であるビラの配布は正当な組合活動とは言えず、懲戒事由に該当するとしてXらの請求を棄却した。これに対してXらが上告したものである。

 労働者が就業時間外に職場外でしたビラの配布行為であっても、ビラの内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をし、または事実を誇張、わい曲して記載したものであり、その配布によって企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなどの場合には、使用者は、企業秩序の維持確保のために、右ビラの配布行為を理由として労働者に懲戒を課することが許されるものと解するのが相当である。<中略>  ビラの配布行為を懲戒対象とすることは違憲であるとの主張については、本件ビラの配布を理由として懲戒を課することは公序良俗に違反するとして原判決の法令違背をいうに帰するところ、右懲戒権の行使は、Xらの表現の自由を不当に侵害するものとはいえず、また、Xらの思想、信条自体を規制しようとするものでもないから、公序良俗に反するものではない。

(関係法令)

 労働基準法   労働組合法

(判例集・解説)

 労判609・10  

(関連判例)

 関西電力事件 最高裁第1小(昭和58・9・8)

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。  労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ