平和運送事件 大阪地裁判決(昭和58年11月22日)
(分類)
不利益変更 退職金 退職
(概要)
自己の都合による退職を申し出て退職金の支給を請求した従業員が、会社によって退職の申し出を拒否され、また右従業員が請求の根拠とする退職金規定は旧規定であり退職金請求権は発生しないとされたのに対し、右規定に基づく退職金の支払等求めた事例。
(請求認容)
被告は、本件退職金規程は旧規定であり、これに基づく退職金請求権は発生しないかの如き主張をするが、本件退職金規程が原告の退職前に改廃されたことを窺わせるような証拠がないばかりでなく、一旦有効に成立した本件退職金規程の内容は、原被告間の雇用契約の内容となったものと解するのが相当であるから、仮に、被告が本件退職金規程を改廃したとしても、これにつき原告の同意を得るか、改廃が合理的なものと認められる場合でない限り、被告は原告に対し、本件退職金規程により定められた計算方法によって計算された退職金を支払わなければならない。
本件退職金については、前記のとおり使用者である被告が本件退職金規程を設けて予めその支払条件を明確にしていて、その支払が被告会社の義務とされているもので、賃金の一種に属するものとみるべきであるから、労働基準法23条の適用があり、したがって、右昭和58年9月9日より7日おいて後の同月17日から被告は本件退職金支払債務につきその遅滞の責任を負うべきことになる。)
期間の定めのない雇用契約にあっては、労働者は、その雇用関係を解消する旨の一方的意思表示(退職申入れ)により、いつにても雇用関係を終了させることができるのであり、そして、この場合原則として、労働者の退職申入れ後2週間の経過によって終了するものである(民法627条1項)。これを本件についてみるに、原被告間の本件雇用契約は、その期間の定めの有無につき何らの主張立証もないから、期間の定めのない雇用関係と推定されるところ、前記のとおり、原告は昭和58年6月30日、被告に対し雇用契約の解約申入れをしているから、同年7月14日の経過をもって本件雇用契約は終了したものというべきである(なお、被告は、原告の退職申入れを承認せずに辞めないよう説得した旨主張するが、しかしながら、前記のとおり、労働者は一方的な退職申入れにより雇用関係を終了させることができるのであって、使用者の承諾を何ら必要とするものではないし、また仮に、被告に労働者の退職に使用者の承諾を要する旨の就業規則なり労働慣行などがあったとしても、これらは民法627条1項後段の法意に反し無効というべきであり、したがって、被告の右主張は失当である)。
(関係法令)
労働基準法23条,89条1項3号の2 民法627条
(判例集・解説)
労経速報1188号3頁 労働経済判例速報1220号24頁
労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。 労働相談はこちらへ