二重就業の禁止
二重就業が禁止されるのは、時間外や休日に他で労働することにより精神的・肉体的疲労の回復が妨げられ、本来の労働に支障を生ずるようになることだけでなく、他の業務を兼業することは業務の誠実な遂行を阻害し、信義に反するおそれがあるからです。
多くの会社の就業規則で、「会社の許可を受けずに他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」とし、その違反を懲戒事由として定めています。しかし、勤務時間中はともかく、勤務時間外には、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由であるとしてその効力が争われることがあります。これについて、裁判所は就業規則で二重就職・兼職を禁止することの合理性を一応認めているようです。
例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま、他に雇われたとき」の規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、又、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)。
競合関係のある兼職については合理性が認められ易いようです(橋元事件 名古屋地裁 昭47.4.28 東京メディカルサービス事件 東京地裁 平3.4.8)。
しかし、裁判所の大勢は、勤務時間外の時間については、本来、使用者の支配が及ばないことを考慮して、二重就職の禁止の制約の範囲を限定的に解釈しています。
例えば、会社の職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度、態様の二重就職は禁止規定への違反とは言えないとしています。
会社が二重就業を禁止できる理由としては、
(1) 疲労度が累積し、会社の仕事に支障をきたす恐れがある場合
(2) 会社の大事な情報が漏れ、損害をうける恐れのある場合
(3) 企業の対外的信用、対面が傷つけられる恐れのある場合
などがあげられます。
就業規則には、兼業禁止規定を設け、許可制にするとよいでしょう。
休日をどう使うかは自由ですが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合や、同業他社などで企業秘密が漏れる可能性がある場合は許可しないなど、禁止の妥当性がある場合を列挙し、運用のルールを統一すべきでしょう。
就業規則規定例 第○条(二重就職の禁止) |
(判例)
あけぼのタクシー(民事解雇)事件 最高裁第1小(昭和62・4・2)
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