平均賃金

 

労働基準法第12条

 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

平均賃金の最低保障

その金額は、次の各号の1によって計算した金額を下ってはならない。 
 (平均賃金の金額には最低保障があり、次の金額を下回ってはならない。)
(1) 賃金が、労働した日・時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合は、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
(2) 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められている場合は、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と上記(1)との合算額

2 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。

3 前2項に規定する期間中に、次の各号の1に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前2項の期間及び賃金の総額から控除する。
(1) 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
(2) 産前産後の女性が第65条の規定によって休業した期間
(3) 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
(4) 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 (平成3年法律第76号)第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業(同法第61条第3項(同条第6項から第8項までにおいて準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第39条第7項において同じ。)をした期間
(5) 試みの使用期間

4 第1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。

5 賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第1項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

6 雇入後3箇月に満たない者については、第1項の期間は、雇入後の期間とする。

7 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。

8 第1項乃至第6項によって算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。

  雇い入れ後3箇月に満たないものについての期間は、雇入後の期間とします。

 日日雇い入れられる者は、1箇月間に支払われた賃金総額を1箇月間に実際に労働した日数で除した金額の100分の73とします。規定では、算定事由の発生した日以前となっていますが、実際には、算定事由発生日は含まず、前日から起算します。9月18日が算定事由発生日とすると、9月17日までに期間によって平均賃金を算定します。  賃金締め切り日がある場合は、原則として、直前の賃金締め切り日から起算します。9月18日が算定事由発生日で、賃金締め切り日が20日の場合は、直前の賃金締め切り日(8月20日)から起算するため、5月21日から8月20日までの期間によって平均賃金を算出します。なお、賃金の総額をその期間の総日数で除して得た金額に銭位未満の端数が生じた場合は切り捨てます。平均賃金は、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金、災害補償(休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料、打切補償、分割補償)、減給制裁の制限の算定基礎として用いられます。

 それぞれの場合の算定事由発生日は次の通りです。 (算定事由発生日)
(1) 解雇予告手当
 解雇を通知した日
(2) 休業手当
 休業した日、2日以上の期間にわたるときは最初の日
(3) 年次有給休暇中の賃金
 年次有給休暇を与えた日、2日以上の期間にわたるときは最初の日
(4) 災害補償
 死傷の原因となった事故の発生した日、又は診断によって疾病の発生が確定した日
(5) 減給制裁の制限
 減給制裁の意思表示が相手方に到達した日

 平均賃金の計算にはいくつかの例外があります。

1.最低保障額についての例外
 原則としての計算方法により算出した金額は次の金額を下回ってはなりません。
(1) 賃金が、労働した日(日給)若しくは時間(時間給)によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められて場合は、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60を下回ってはいけません。
(2) 賃金の一部が月、週、その他一定の期間によって定められた場合は、その部分の総額を、その期間の総日数で除した金額と、(1)の金額の合算額を下回ってはなりません。

原則としての計算方法により算出した金額と、(1)又は(2)で算出した金額のいずれか高い方を平均賃金とします。

2.平均賃金計算の2つ目の例外
 平均賃金の計算期間中に次に該当する期間がある場合、その日数とその期間中の賃金の両方から控除する場合と、期間中の賃金のみから控除する場合があります。
 (算定期間中の総日数と賃金の総額の両方から控除するもの)
 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業した期間 通勤災害による療養のための休業期間の日数とその期間中の賃金は控除しません。
・産前産後の女性が労働基準法第65条の規定(産前6週間、多胎妊娠の場合は14週間及び産後8週間)によって休業した期間
・使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
・育児休業又は介護休業した期間
・試みの試用期間
・労働争議により正当な罷業もしくは怠業し又は正当な作業所閉鎖のため休業した期間

(算定期間中の賃金の総額のみから控除するもの)
・臨時に支払われた賃金   例:私傷病手当、加療見舞金、退職手当等
・3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金   例:年2回の賞与
・通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属さないもの (法令又は労働協約の定め以外に基づいて支払われる実物給与)

3.3つ目の例外
 雇入れ後3箇月に満たない者の平均賃金算定期間は、雇入れ後の期間とし、日日雇い入れられる者は、厚生労働大臣が定める金額を平均賃金とします。

 平均賃金は原則として算定事由の発生日以前3ヵ月間における賃金の総額をその期間の総日数で除して算定することになっていますが、3ヵ月に満たない場合はいくつかの算定方法があります。
(1) 3ヵ月に満たない場合は、雇入れ後の期間とその期間の賃金の総額で算定することとなります。
 この場合、賃金締切日がある時は、なお、直前の賃金締切日から起算し計算します。ただし、直前の賃金締切日から計算すると、1賃金計算期間に満たなくなる場合には、事由発生日の日から計算を行うこととされています。

(2) 試みの使用期間中に算定事由が発生した場合の算定方法は、その期間の日数及びその期間中の賃金で平均賃金を計算します。
 これは、試みの使用期間及びその期間中の賃金は、賃金の総額およびその期間の総日数から控除することになっているため計算が不可能になるためです。

(3) 雇入れ時に賃金額について明確な定めがなされてないか、又はなされていても雇入れ後の期間が短いため実際に受けるべき賃金額が明らかでない場合は、平均賃金を算定すべき事由の発生した日、又はその日の属する賃金算定期間において、当該事業場で同一業務に従事した労働者の平均の賃金額により推算するなどの方法により算定することになります。
 日給制・時給制・出来高払制などの場合に、ただ単純に3箇月間の賃金の総額をその期間の総日数で除してしまいますと、労働日数によってはとても低い額になってしまう可能性があります。ですので、日給制・時給制・出来高払制などの場合には、最低保障として、「3箇月間の賃金の総額をその期間の労働日数で除した額の6割」を下ってはならない。とされております。(労働基準法第12条1項但書1号)

 また、日給制などの場合で、家族手当など一部が月単位の定額で支払われている場合には、最低保障額の計算上、この月単位の定額で支払われている部分は、除いて計算することになっております。(労働基準法第12条1項但書2号)

 

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