岡谷鋼機事件 大阪地裁判決(昭和55年2月22日)

(分類)

 雇用契約  派遣

(概要)

 会社閉鎖による従業員の解雇につき、右従業員は元請会社との間に労働契約関係がある等として、従業員としての地位の保全を求めた仮処分事件 (却下)

 法人格否認の法理は会社なる法形態がその付与された目的の範囲をこえて不法に利用される場合には、特定の法律関係においてその法形態を排除して背後にある実体をとらえ、法人格あるところに法人格なきと同様の法的処理をなすことによって妥当な結論を導こうとするものである。すなわち、法人制度の目的に照らし、独立の法人格を形式的に貫くことが正義、衡平に反する場合に一定の要件のもとに、その法人格の機能を停止せしめ、会社とその実体をなす個人若しくは別法人とを法律上同一視するという理論である。 従って、いまある法人の人格が形骸化している場合又は不法或いは不当な目的に利用される場合には、右法人制度の目的に照らせば当然当該法人格を否認しうるが、このような場合には否認される法人(形式会社)と個人又は別法人(実体)を同一視しうる場合、少なくとも実体たる個人又は別法人が形式会社を直接かつ統一的に支配しているといえる場合でなければならない。  しかしながら、本件についてはすでに認定判断したところから明らかなように、A会社は被申請人の直接的かつ具体的な支配下に服しているとは認められず、またA会社は人的、資本的にも被申請人と独立し、自己の計算のもとに営業を行い、申請人らとの労働条件の決定もB社長の判断のもとに独自でなされてきたのであるから、その法人格が形骸化している場合に該当せず、さらにその法人格が不法或いは不当な目的に利用されてきたということはできないから、A会社の法人格は申請人ら並びに被申請人との関係では否認し得ないものである。
 申請人らがその後(昭和50年までに)被申請人との間で黙示的に労働契約を締結したかを考えるに、なるほど申請人らの労務提供の場所が被申請人Y1会社又は被申請人Y2会社であった関係上、時には被申請人がY1会社所長又はY1会社従業員を通じて申請人らに対して作業実施にあたり個々の指揮又は指示をしたことは否めないが、通常の場合、申請人らはA会社の管理職の指揮・命令の下に拘束を受けて就労していたもので、且つ人事・労務関係等全般にわたりA会社の管理下にあったのであるから、被申請人と申請人らとの間にいわゆる支配従属ないしは使用従属関係が存在していたとは到底認めることができない。加うるに、A会社と申請人らの雇用契約が専らA会社が被申請人に労働者を供給して中間搾取をする目的のためにのみ、その手段として結ばれたものにすぎず、A会社が独自の実体を喪失してしまい、実質的には被申請人の労務担当の職制にすぎない等とも決して認められず、他に被申請人と申請人らとの間に労働契約が黙示的に締結されたことを認めるべき事情も存在しない。

(関係法令)

 労働基準法2章  民法43条

(判例集・解説)

 労経速報1042号3頁  労働判例337号66頁  ジュリスト746号173頁

 

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