障害年金の初診日

 障害年金における「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガ(傷病)について、初めて医師等の診療を受けた日とされています。

 初診日に厚生年金保険の被保険者であったものは、障害厚生年金が請求できますので、初診日がいつかということは重要な要素となります。

 具体的には、以下にあてはまる場合をいいます。

(1) 初めて診察を受けた場合
 最初に受診した日が初診日となります。
 一般的な検査等で後日傷病等が確定した日ではなく、請求傷病の症状として診療を受けていた場合は、その日 が初診日となります。例えば、心療内科や精神科で うつ病 であると診断される前に、不眠や頭痛などの症状があり、自宅近くの病院を受診していた場合には、この不眠などで受診した病院が初診の医療機関となり、初診日とされます。

 (2) 障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病があるとき
 障害の原因となった傷病に対して、さらにそれと因果関係がある傷病が生じた場合は、最初の傷病が初診日とされます。
 風邪の症状でA病院で受診し、現在の傷病と関連のある傷病名で診断され、さらにB病院で詳しい検査をすることを薦められ、B病院で現在の傷病名の診断がなされた場合、ケースにより「初診日」はA病院を受診した日をさすことがあります。
 最初に受診した病院の医師が「精神科を受診するように」と指示をしたり、精神科のある病院への紹介状を初診の医師が作成したことが条件です。そうでない場合、精神科以外の病院ではなく精神科を初めて受診した日が初診日と認定されることが多い。
 最初に受診した精神科以外の病院で、精神疾患と診断されなくてもその病気の症状改善のために治療や薬の処方が行われた場合は、その病院を最初に受診した日が初診日と認定されることがあります。
 この判断は、微妙な問題でして、個々のケースで判断されています。
 診療内科などの医師でも精神の診断書を記載することが可能であれば、その診断書提出で支給を認められることがあります。
 精神科領域の受診がある場合には、傷病名が変わっても社会的治癒と判断された場合を除き、最初の受診日を初診日とするのが原則と考えられます。例として、適応障害、不安障害(パニック障害、パニック発作などを含む)や初診では「抑うつ状態」と診断され、その後に「うつ病」と診断された場合は、相当因果関係ありと考えてよいといえます。これらの場合は、通常、診療期間中に診断名の変更があったと考えられます。

(3) 重度難聴の場合
 メニエール症候群から始まった場合には、その激しいめまいゆえに、耳鼻咽喉科ではなく、脳神経外科などを受診することがあります。この場合、脳神経外科を受診した日が「初診日」となります。

(4) 高血圧性脳出血の場合
 初診日は、高血圧と診断された日ではありません
 原因が高血圧とされていても、脳出血または脳梗塞により受診した日を初診日とします。

(5) 先天性疾患(先天性股関節脱臼、心臓中隔欠損症網膜色素性変性症など)であっても、手術などで症状があらわれた場合
 手術などで症状が現れた日を初診日とします。

(6) 器質性精神障害てんかん精神遅滞(知的障害)を除く精神病の場合
 一般的に、最初から精神科に受診される方は少なく、当初、自立神経失調症不眠症などの内科疾患として受診され治療を受けている場合が多いものです。正確な傷病名が確定した日ではなくても、申請傷病の症状として診療を受けていたと認められる場合は、その日が初診日となります。

(7) じん肺症(じん肺結核を含む)と診断された場合
 じん肺症については、じん肺症と診断された日です。

(8) 同一傷病で転院した場合
 最初の医師の診療を受けた日が初診日となります。

(9) 同一傷病で再発のもの、または旧傷病が社会的に治癒したと認められた場合
 再発して医師に診断を受けた日が初診日となります。

(10) 傷病が先天性で、20歳以降になって初めて診療を受けた場合
 20歳以降のその日が初診日となります。

(11) 誤診の場合
 正確な傷病名が確定した日ではなく、最初に誤診した医師などの診療を受けた日が初診日となります。

(12) 健康診断を受けた場合
 健康診断により治療の指示を受けたり異常が指摘されたとしても、健康診断を受けた日は初診日として取り扱いません。
 ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については請求者から健診日を初診とするよう申し立てがあれば健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果)などを求めた上で、初診日を認める事ができる。

(13) 労災の療養給付の場合
 業務上の傷病の場合には、労災の療養給付の初診日を障害年金の初診日とします。

(14) 発達障害
 知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とします。

 

初診日が65歳以降の場合

 初診日が65歳以上の人の場合は、一般的には障害年金の対象からは外れます。

 平成14年4月から厚生年金保険の適用事業者に使用される65歳以上70歳未満の人は、年金受給権の有無に関わらず、厚生年金保険の被保険者とされるようになりました。しかし、これらの人のうち、老齢(退職)給付の受給権を有する人は、国民年金の第2号被保険者にはなれません。そのような人が、65歳以後に厚生年金保険に加入中に初診日のある傷病によって障害となった場合には、障害基礎年金は支給されず、1級・2級の障害厚生年金のみが支給されます。

 障害厚生年金の額が障害基礎年金2級の額の3/4に満たないとき、障害基礎年金2級の額の3/4が保障されます。

 なお、65歳以降の初診による請求の場合、納付要件を確認する際に直近1年要件は適用されません過去の年金制度加入月数に対して、年金保険料の納付月数と免除月数の合算月数が2/3以上ないと、障害年金は受給できないという制限があります。

 

 65歳未満に初診日、障害認定日が65歳過ぎの場合

 65歳未満にその障害の元となる傷病の初診日があり、初診日から1年6月後(特例を除く)の障害認定日が65歳を過ぎている場合でも「認定日請求」は可能です。

 認定日請求の場合は、65歳までにしなければならないという制限がないためです。

 

初診日要件の例外

 知的障害(精神遅滞)については、初診日の証明は必要ありません。知的障害(精神遅滞)は、医学的に18歳までに発病するものとされているため、初診日要件は問わない。障害要件だけが唯一の受給要件となります。
この疾患は、不可逆性のものとされていますので、請求の時期が遅れても認定日請求が可能とされています。
 以上のことは、類似の障害、例えばアスペルガー症候群自閉症にまで広がりつつありますが、発達障害全般に適用されるという保障はありません。

 知的障害(精神遅滞)について、地域の精神職業センターなどで職業の適性検査を受けていたということがある。この場合、病院ではなく、精神職業センターなどで初診日の証明(「受診状況等証明書」)を整備する必要があります。

 

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