じん肺

 じん肺(珪肺症、石綿肺)とは、石綿(アスベスト)を吸い込み、長い期間をかけて胸膜を中心とした病変を生じさせるじん肺です。このアスベストの種類には、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、クリソタイル(白石綿)などが知られ、不燃性、耐熱性、非腐食性に優れ、軽く、強度があり、加工しやすいなどの特性により、建築現場をはじめとするさまざまな分野で使用されてきました。

 アスベストによる呼吸疾患には、主に以下のようなものがあります。
(1)胸膜プラーク(胸膜肥厚斑(ひこうはん))
 壁側胸膜の限局性胸膜肥厚(1〜10mm)で、アスベスト曝露によって起きる最も早期の病変で、高頻度であることが知られています。ほとんどの場合、胸膜プラークのみによる症状はみられません。

(2)胸膜中皮腫
 胸膜から発生する悪性の腫瘍で、曝露から時間がたつにつれて発生頻度が高くなります。従来、限局型と呼ばれていた多くの胸膜中皮腫は、単発性線維性腫瘍という別の名称で呼ばれるようになっています。

(3)アスベスト肺
 アスベストの高濃度曝露によって発症し、胸部画像では両側下肺野に線状・網状陰影が内側から外側に、また下肺から上肺に病変が広がり、進行して蜂巣肺(ほうそうはい)がみられるようになります。胸部X線写真では、特発性間質性肺炎膠原病間質性肺炎などと類似していることが多く、鑑別が必要です。
 確定診断には、アスベスト曝露の職業歴とともに、組織や細胞診断などによる病理組織・細胞診診断も重要となります。

(4)肺がん
 アスベストそのものによる発がん作用と、アスベストによる肺線維化病変からの肺がんが考えられています。さらに、喫煙はアスベストによる肺がん発生のリスクを顕著に高めることが知られ、禁煙はアスベストによる肺がん発生の予防となります。

(5)良性石綿胸水
 本症は、アスベスト曝露があり、悪性腫瘍、結核(けっかく)、膠原病などの他の原因がない胸水(多くは片側)で、さらに、胸水発生後3年間、悪性腫瘍が認められない場合に診断され、診断においては除外診断が重要となります。多くは、1〜10カ月で自然軽快します。

(6)びまん性胸膜肥厚
 本症は、胸膜の肥厚が少なくとも5mm以上で、広がりが片側の肺の50%以上、両側の場合は25%以上で、著しい肺機能障害を認める場合に診断されます。

(7)円形無気肺
 胸膜の癒着や線維化によって起こる末梢性の無気肺で、円形の腫瘤性陰影を示し、下葉背側に好発します。肺腫瘍との鑑別が必要になります。

症状の現れ方
 初期は無症状で、ゆっくりと進行し、労作時呼吸困難(歩行などの労作における呼吸困難)、咳などが生じます。さらに進行すると、安静時呼吸困難が出現するようになります。

治療の方法
 根本的な治療はなく、呼吸不全に対する酸素療法、去痰薬の投与などに加えて、喫煙は肺がんの発生を高頻度とするため、禁煙が重要です。また、合併症として発症する肺がんの外科的治療が重要であり、早期に発見する必要があります。
 悪性胸膜中皮は早期に発見することが困難で、外科的治療の適応例が少ないのが現状です。進行した肺がん、また胸膜中皮腫は抗がん化学療法の適応となりますが、予後は決してよくはありません。

 

 じん肺症(じん肺結核を含む)と診断された場合、初診日はじん肺症と診断された日です。

 

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