ダウン症候群

 ダウン症候群は、第21番染色体の異常の1つであり、精神遅滞、小頭、低身長、特徴的顔貌を引き起こす。
 出生児における全体の発生率は約1/800であるが、母体年齢によって顕著な差が生じる。

病因
 症例の約95%が第21番染色体全体の過剰であり(21トリソミー)、このうちほぼ全例が母親由来である。ダウン症候群患者の中には染色体数が46しかないものもあるが、この場合、第21番染色体の過剰部分は他の染色体上に転座している。最も多くみられる転座はt(14:21)であり、この場合、第21番染色体の過剰部分は第14番染色体に付着している。このうちの約半数は両親ともに正常核型であるが、このことは、その転座がde novoであったことを意味している。残る半数においては、一方の親(ほぼ全例で母親)が表現型は正常であるが染色体を45個しか有しておらず、そのうちの1つがt(14:21)となっている。理論的には、保因者である母親の児がダウン症候群となる確率は1:3であるが、未知の理由により実際のリスクはこれよりも低い(約1:10)。一方、父親が保因者である場合、リスクは1:20にまで低下する。次に多い転座はt(21:22)である。この転座の場合は、保因者である母親の児がダウン症候群となる確率は約1:10であり、父親が保因者であるときのリスクよりも高くなる。
 ダウン症候群のモザイクは、胎芽内での細胞分裂の際の不分離によって生じるものと推測される。大部分の患者は染色体数がそれぞれ46と47である2つの細胞系を有している。知能予後は、脳内の21トリソミー細胞の比率に依存すると考えられる。ある数例のモザイク型ダウン症候群患者では、臨床徴候がほとんど認められず、知能も正常である。親が生殖細胞系にモザイクを有する場合、2人目の罹患児が発生するリスクは高くなる。

症状と徴候
 罹患している新生児は、おとなしく、めったに泣かず、筋緊張低下を示すという傾向がある。ほとんどの症例で扁平な側貌(特に鼻根部扁平)がみられるが、出生時は外見上正常で乳児期になってから特徴的顔貌が現れてくるものもある。また、後頭部扁平、小頭、頸部背面周囲の過剰な皮膚がよくみられる。目尻がつり上がり、目頭には通常内眼角贅皮がみられる。ブラッシュフィールド斑(虹彩辺縁周辺にできる塩粒に似た灰色ないし白色の斑点)が通常確認できるが、生後12カ月以内に消失する。口はしばしば開いたままであるが、これは突出した大きな溝状舌(中央の亀裂はみられない)によるものである。耳介は小さく円形であることが多い。手は短く幅広く、しばしば猿線(単一手掌屈曲線)がみられる。手指は短く、特に第5指は弯曲指(内弯)で、しばしば指節骨が2本のみとなる。足では第1趾・第2趾間が離開し、足底の溝がしばしば足の後方にまで及ぶ。また、手足に特徴的な皮膚紋理がみられる。
罹患した新生児の約40%で先天性心疾患がみられ、そのうち最も多いのは心室中隔欠損と共通房室弁口(心内膜床欠損)である。他のほぼ全ての先天異常の発生率が高く、中でも十二指腸閉鎖が特に顕著である。また、ダウン症候群患者の多くが甲状腺疾患(甲状腺機能低下症が最も多い)を発症する。
 患児の成長につれて、身体および精神の発達遅滞が急速に顕著になってくる。身長は低く、知能指数(IQ)の平均は50程度である。

 老化プロセスが加速すると考えられる。死亡年齢の中央値は49歳であるが、50歳代または60歳代まで生存する例も多い。余命を短くしている第1要因は心疾患であるが、感染症や急性骨髄性白血病に対する感受性も程度は小さいが、その一因を成している。さらに、ダウン症候群患者は加齢に伴い聴覚および視覚の障害を来すことがある。患者の多くは、比較的若年時からアルツハイマー病の臨床徴候を呈し、ダウン症候群の成人患者の剖検では、脳に典型的な顕微鏡所見が認められる。
 罹患女性の胎児がダウン症候群となる確率は50%である。しかしながら、罹患胎児の多くは自然流産となる。男性患者は、モザイク型のものを除き全て不妊である。

治療
 治療は個々の症状に依存する。基礎的な障害の治療は不可能である。治療には、患者家族への遺伝カウンセリング、社会的支援、知的機能の水準に応じた教育プログラムの作成が含まれなければならない。一部の先天性心奇形は外科的に修復可能である。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモン補充によって治療される。

 

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