全身性エリテマトーデス

 この病気は、英語でsystemic lupus erythematosusといい、その頭文字をとってSLEと略して呼ばれます。発熱、全身倦怠感などの炎症を思わせる症状と、関節、皮膚、内臓などのさまざまな症状が一度に、あるいは次々に起こってきます。

 日本全国に2万人~4万人程の患者さんがいると考えられています。日本においては、地域差などは見られません。平均すると男女比は1:9ほどで、圧倒的に女性に多い病気です。なかでも生理が始まってから終わるまでの期間に多く、子供、老人では、逆に男と女の差が少なくなります。すべての年齢に発症しますが、15才から65才までの子供を産むことの出来る年齢に多く起こります。

 残念ながら今のところはその原因はわかっていません。自分自身の体を、自分自身の 免疫系が、攻撃してしまう病気です。本来なら、免疫とは、自分の身を細菌やウイルスなどから守ってくれる大切な役割をしているのですが、この病気にかかる と、この免疫力が自分の体を攻撃するようになり、全身にさまざまな炎症を引き起こします。

 何かのきっかけによって、病気が起こったり、あるいは病状が悪化したりすることがあります。そのきっかけになるもの(誘因)がいくつか知られています。紫外線(海水浴、日光浴、スキーなど)、風邪などのウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある腫の薬剤などが、知られています。

 一般的に、全身症状、皮膚関節症状がほとんどの患者さんに見られます。これに、さまざまな内臓、血管の病気が加わります。この内臓の症状が全くない軽症のタイプもあります。

 手や指が腫れて、痛む関節炎を起こします。肘、膝などの大きな関節に、日によって場所が変わる移動性の関節炎が見られることもあります。

 もっとも有名なのは、頬に出来る赤い発疹で、蝶が羽を広げている形をしているので、蝶型紅斑と呼ばれています。 皮膚をさわると、一つ一つが丸い発疹が、重なりあい、少し盛り上がっているのが特徴です。同じ、頬に出来るものにも、盛り上がりのない、ハケで薄紅色の絵 の具を塗ったような紅斑も見られます。また、一つ一つが丸く、ディスク状(レコード盤)のディスコイド疹も、この病気に特徴的で、顔面、耳、首のまわりなどに好発します。

日光感敏症
 強い紫外線にあたった後に、皮膚に赤い発疹、水膨れ、あるいは熱が出る人がいます。このような症状は、日光過敏症といい、この病 気でよく見られます。この症状が、病気の始まりであることも少なくありません。しかし、この病気以外にも、日光過敏症を起こす病気がいくつかありますので、それらとの区別が必要です。

口内炎
 多くは、口の奥、頬にあたる部位や上顎側に出来る粘膜面がへこんだもので、痛みが無く自分で気付かないことがしばしばです。痛みを伴うベーチェット病の口内炎と対照的です。

脱毛
 朝起きたときに、枕にこれまでなかったほどたくさん髪の毛がつくようになります。また、円形脱毛のように、部分的に髪の毛が抜けたり、全体の髪の量が減ったりすることもあります。 また、髪が痛みやすく、髪の毛が途中から折れてしまう人もいます。

臓器障害
 様々なものが知られています。すべての症状が起こるわけではなく、一人一人によって、出てくる症状、障害される臓器の数が違います(全く臓器障害のない、軽症の人もいます)。

治療法

副腎皮質ステロイド剤
 自分自身に対する免疫を抑えるため、免疫抑制効果のあるくすりを使います。なかでも、副腎皮質ステロイド剤は、特効薬として知ら れています。病気の重症度によって、その薬の量が違います。この薬剤は、副腎皮質という場所から出ているホルモンを、化学的に作ったもので、代表的なもの はプレドニゾロンです。一日5mg相当のホルモンが体内から出ていますので、5mgのプレドニゾロンを飲むということは、自分自身が毎日作っている量と同じ量を補うことになります。一般的に、重症のかたでは、1日50~60mgを必要としますし、逆に軽症の人では15mg程度で十分のこともあります。最初2週間から1ヵ月この量を続け、徐々に減らして10mg前後を長期に飲み続けます。

免疫抑制剤
 副腎皮質ステロイド剤が、効果不十分か、副作用が強い場合に、免疫抑制剤を使うことがあります。アザチオプリン(イムランなど)、サイクロプォスプァミド(エンドキサンなど)、タクロリムス(プログラフ)、ミゾリビン(ブレジニン)、サイクロスポリンA (サンヂュミン)などです。

ステロイドパルス療法
 副腎皮質ステロイドを、点滴で大量に使用する方法です。口から飲むより、より早く、かつ効果も高いとされており、重症度のかなり高いかたに使われます。一般的には、三日間の使用ですので、この間副作用も比較的少ないとされています。その後は口からの服用に切り替えます。

体外循環療法
 血液中の病気を引き起こしている免疫複合体やリンパ球を、体の外に取り出してこれをフィルターを使って取り除く治療法です。ステロイドや免疫抑制剤がどうしても使用できない、あるいは効果が不十分な場合に使われます。

抗凝固療法
 血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併しているひとでは、小児用バッファリン、ワーファリンなどによって、血栓の予防が行われます。

支持療法、対症療法
 腎不全のときの透析療法など、その病状に合わせて治療が行われます。また、血行障害の強い人では、血管拡張剤などが使われます。

 この病気は、臓器障害の広がり、重さによって、病気の重症度が異なります。関節炎や皮膚症状だけの人は、薬剤によるコントロールもつけやすく、健康な方とほとんど変わらない、普通の生活が出来ることも珍しくありません。一方、腎臓、中枢神経、血管炎などでは、多種類の薬剤を、大量に、そかも 長期にわたって使わなければならないことがあります。したがって、一口に全身性エリテマトーデスといっても、その病気の広がり、重症度によって、その後の 経過は、全く異なります。しかし、そのコントロールは年々改善され、数十年もこの病気と付き合っている患者さんも増えてきました。そのため、高齢化に伴って起こってくる生活習慣病(動脈硬化糖尿病、高血圧など)などに対する対策も必要です。

 

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