嚢胞腎

 多発性嚢胞腎(のうほうじん PKD)は、両側の腎臓に多発性の嚢胞(嚢胞液という液体が詰まっている袋)ができる先天性腎疾患で、多くは腎不全に至ります。常染色体劣性多発性嚢胞腎と、常染色体優性多発性嚢胞腎に分けられます。

 常染色体劣性多発性嚢胞腎は、生後まもなく腎不全で死亡することが多いです。長期生存している患者さんは、腎不全よりも肝不全が問題となります。
 常染色体優性多発性嚢胞腎の原因遺伝子にはPKD1(第16染色体短腕上に疾患遺伝子が存在)、PKD2(第4染色体長腕上に疾患遺伝子が存在)が同定されています。
 約85%の患者さんにPKD1遺伝子異常が、15%の患者さんにPKD2遺伝子の異常が認められています。腎不全に至る年齢はPKD1が平均60歳、PKD2が74歳です。

 

常染色体優性多発性嚢胞腎

症状の現れ方
 受診の原因となった自覚症状として、肉眼的血尿、蛋白尿、側腹部・背部痛、家族に多発性嚢胞腎患者がいる、易疲労感、腹部腫瘤、発熱、浮腫、頭痛、吐き気、腹部膨満などがあります。
 最も大きな問題は進行性の腎不全ですが、すべての患者さんが腎不全になるのではありません。70歳まで生存したとして約50%で末期腎不全に陥り、透析療法が必要となり、透析導入の平均年齢は、男性52・3歳、女性54・5歳という報告があります。

 肝嚢胞により肝機能障害を来すことはほとんどありませんが、圧迫症状が問題となります。また心臓の弁の異常、大腸憩室(けいしつ)、鼠径(そけい)ヘルニア、総胆管拡張を来すこともあります。 

治療の方法
 嚢胞内出血や嚢胞内感染を来し、発熱や腰・背部痛などの症状が現れた場合は、安静とし、止血薬および抗生剤を投与します。
 進行性の腎不全に対しては、高血圧の管理(アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の投与など)を行います。高血圧の管理は、頭蓋内出血や心不全の予防としても重要です。
 また、上部尿路感染症に対してはすみやかに治療を行うことが大切です。肉眼的血尿に関しては、悪性腫瘍が否定できれば保存的に対処します。
 透析に至った患者さんの腹部膨満感を緩和する方法として、両側腎動脈塞栓術が行われ、良好な成績が得られています。
 近年、バソプレッシン受容体阻害薬によって細胞内サイクリック‐AMP濃度を下げれば、腎嚢胞増大が抑制されることが動物実験で示され、バソプレッシンV2受容体拮抗薬の臨床試験が世界的規模で行われています。

 

単純性腎嚢胞

 片側あるいは両側の腎臓に1〜数個の嚢胞(嚢胞液という液体が詰まっている袋)ができる病気です。通常は無症状でほとんど問題になりませんが、嚢胞による圧迫症状や高血圧、水腎症、血尿を来す時は、嚢胞液を穿刺吸引後にアルコールなどで固定したりするなどの外科的処置が必要となることもあります。

原因
 ネフロン閉塞や起因する嚢胞、あるいは遠位尿細管や集合管の小憩室が成長したものなどが原因として考えられています。単発あるいは多発性の嚢胞が加齢とともに増加し、60歳以上ではしばしばみられます。

症状の現れ方
 孤立性の大きな嚢胞ができた場合は、時に圧迫症状を呈することもあります。また腎盂(じんう)の近くにできたものは水腎症を来しやすく、水腎症を起こすと尿が停滞し、腎盂は腫大して嚢状となります。腫大した腎盂により腎実質が圧迫されると、次第に腎実質が薄くなり、腎機能障害が生じます。

治療の方法
 圧迫症状、高血圧、尿路の閉塞などがあれば、外科的切除、開窓術、経皮的穿刺による吸引固定、腹腔鏡下嚢胞切除などが行われます。

 

障害年金のことは『大分別府障害年金サポートセンター』の 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。  こちらへ