知的障害(精神遅滞)

 知的障害は、法律による定義はありませんが、知的能力に障害があり、何らかの支援が必要であることとされています。
 また、その知的な障害のほとんどが発達期(18歳未満)で生じるとされています。
 また、知能障害も知的障害と同じ意味で使われています。

 知的障害には、「精神遅滞」と「高次機能障害等二次的障害」の2種があります。
・ 「精神遅滞」・・・
   先天性又は出生後の早い時期に知的発達が阻害され、知能が低い状態に止まっているもの

・「高次機能障害等二次的障害」・・・ 
   いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の器質障害によって低下したもの

知的障害の度合い
 知的障害は度合いによって、重度・中度・軽度に分けられます。
  知能指数(IQ) = 精神年齢(発達年齢) ÷ 生活年齢(実年齢) × 100

知的障害の程度

IQ

精神年齢

療育手帳の基準(参考)

最重度

20未満

 

A1

重度

20~34

3歳~6歳未満

A2

中度

35~49

5歳~8歳未満

B1

軽度

50~69

7歳~10歳未満

B2

 知能指数が70~85%の場合はボーダーラインであり、知的障害と認定されない場合が多いです。
 軽度の知的障害では、障害があることが見ただけではわかりにくいこともあるようです。

知的障害の原因
 知的障害の約8割が原因は明らかではないとされています。
 軽度の知的障害のほとんどがこれに当たり、原因不明です。残りの2割は、染色体の異常などの先天性の知的障害や出産時の酸素不足やトラブル、乳幼児期の高熱などが原因となっています。

自閉症と知的障害
 自閉症と知的障害には、似たような症状があり、自閉症にも知的障害がある場合もあります。
 自閉症の症状があり、知的障害の症状も顕著な場合、知的障害者として認定される場合が多いです。
 知的障害をともなう自閉症でも、軽度の知的障害など知的障害が目立たない場合には、知的障害者として認定されません。

学習障害と知的障害
 知的障害と学習障害にも、似ている症状がありますが、知能指数(IQ)が70以上で学習障害の症状がある場合には学習障害と診断され、70以下の場合には知的障害と診断されます。
 知的障害は学習面も含めた全面的な知能の発達に遅れがあり、学習障害は特定の学習に困難を生じます。

知的障害者認定
 知的障害者として認定されると、療育手帳が交付されます。療育手帳には、知的障害の程度によってA・Bのどちらかが記載されます。
 最重度・重度の場合はA、中度・軽度の場合はBと記載されます。

 

 知的障害(精神遅滞)は、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいいます。

 医学的には先天性の病気と判断されて、18歳までに発病するものとされているため初診日要件がありません。知的障害や先天性障害の場合は例外として、生まれた日をもって初診日とみなされます。初診日の証明は必要ありません。なお、療育手帳の提示が必要です。地域の精神職業センターなどで職業の適性検査を受けていたということがあります。この場合、精神職業センターなどで証明となる資料を整備いただくと望ましいです。

 20歳を過ぎて以降、『精神遅滞』という診断を受けた場合でも、他の疾病のように初診日から1年6ヵ月経過した後でなければ障害年金を請求できないという訳ではありません。知的障害は、先天性のものとされますので、1年6ヵ月を経過するまで待つ必要はなく、20歳になったら障害年金をすぐに請求することができるのです。

 知的障害である人が後に「うつ病」となった場合でも、先天性の障害とされ、初診日を「0歳」として扱います。

 知的障害と統合失調症の間に因果関係がなければ、それぞれを別疾患として扱います。

 知的障害が3級程度であった人が社会生活に適応できず、発達障害 の症状が顕著になった場合は「同一疾病」とし、事後重症請求の扱いとします(この場合の初診日も誕生日です)。

 知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害のある人については、障害の症状により「別疾病」として扱います。初めて診療を受けた日を初診日とします。

 知的障害が3級程度であった人が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合は「同一疾病」の扱いとします。初診日は誕生日です。

 発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから、原則「別疾病」とします。知的障害と統合失調症の間に因果関係がなければ、それぞれを別疾患として扱うのです「同一疾病」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付してくることがあります。したがって、このような場合は、「同一疾病」とされることがあります。

知的障害や発達障害と認定対象とされる精神疾患を併発した場合の初診日の取り扱い

前発疾病

後発疾病

判定

統合失調症

発達障害

同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) 統合失調症のほうが初診日

うつ病

発達障害

同一疾病として扱う。(診断名の変更となるが、新たな疾病が発症したものでない。) うつ病のほうが初診日

知的障害

統合失調症

別疾病として扱う。 初診日は別々

(知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、知的障害のほうが初診日とされる。)

知的障害

うつ病

同一疾病として扱う。 (知的障害が基因で発症したものとして) 誕生日が知的障害としての初診日

知的障害

神経症で精神病様態

基本的に別疾病として扱う。 初診日は別々 知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断した場合は、誕生日が知的障害としての初診日とされる。

知的障害

その他精神疾患

原則別疾病として扱う。

軽度の知的障害(3級程度)

発達障害

同一疾病として扱う。 誕生日が知的障害としての初診日

3級不該当程度の知的障害

発達障害

別疾病として扱う。 初めて診療を受けた日を初診日(20歳過ぎということがある。)

発達障害

統合失調症

別疾病として扱う。 初診日は別々

(知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断された場合は、発達障害のほうが初診日とされる。)

発達障害

うつ病

同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日

発達障害

神経症で精神病様態

同一疾病として扱う。(発達障害が起因で発症したものとして) 発達障害のほうが初診日

発達障害

その他精神疾患

原則別疾病として扱う。

 

障害の程度

障 害 の 状 態

1級

・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意志の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

・知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意志の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3級

・知的障害があり、労働が著しい制限をうけるもの

障害手当金

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 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断します。

 知的障害の中で軽度の精神遅滞(IQ50~70)であっても、日常生活に多くの援助が必要な場合は、障害年金の対象ということになります。日常生活能力の低下等で社会生活をすることの困難さが、障害等級に該当する程度なのかが重要なのです。

 障害等級に対応する日常生活上の支障の程度は、うつ病統合失調症とほぼ同じですが、会話による意志疎通能力が1級、2級の認定の判断ポイントと考えられます。

 一般に「労働能力がある」という場合は、健常者の方などと同一の労働環境下、同様の仕事をしている場合をいいます。働いているといっても、周りの方の援助や配慮があってなんとか働けている状態なら、障害年金の受給の可能性はあります。職場において、仕事が限定されている、残業(超過勤務)は免除されている、同僚の手を借りながら(同僚に助けてもらいながら)仕事をしている場合など、特別な配慮がなされている場合は「労働能力がある」とはいえないのです。障害者雇用促進法の保護の下や社会復帰施設、就労支援施設、小規模作業所での簡易な軽労働の場合も、「労働能力がある」とはいえません。

 知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。精神の場合には別傷病であっても、病態を分けることができないことが多いので、併合ではなく総合認定で行われる可能性が高いものです。

「病歴・就労状況等申立書」にて

 精神遅滞の場合は先天性のものとなりますので、出生時から申請時までの日常生活や病状に関する申立てをすることになります。幼少期、小学生、中学生、20歳までというように転機ごとに区切って記入しましょう。

 軽度の精神遅滞の方の場合、小中学校は支援学級ではなく、普通学級に通っていたということがある。この場合、
・学校や周囲の支援はどの程度あったのか
・勉強の遅れはどの程度あったのか
・毎日休まずに出席できていたのか
など、支援の必要の程度や学校での生活状況などは申し立てるようにすること。

 

  知的障害者には善悪が理解できないのではないかというのは偏見です。知的に障害があったとしても魂は健全である。脳の機能などに障害があった場合は思いや考えをうまく表現できないだけで、魂では善悪は分かる。だが、周囲の無理解や偏見に苦しんで、悪霊と同通する心を持った場合には、犯罪行為に走ってしまうこともある。

 

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