脳梗塞(脳軟化症)

 脳梗塞とは、脳への血管、すなわち動脈がつまることによって、脳へ血液が流れなくなり、その結果、脳の細胞が死んでしまった状態のことを言います。

 「脳梗塞」は、血管を詰まらせる原因によって大きく2つに分類されます。

  脳の血管に血栓が出来て血管を詰まらせるものを「脳血栓」と言います。

 心臓など脳以外の血管にできた血栓が血流にのって脳へと運ばれて、その血栓が脳の血管を詰まらせるものを「脳塞栓」といいます。

 この脳の動脈がつまる原因には、高血圧による血管の傷害、もしくは高脂血症や糖尿病による動脈硬化(アテローム硬化)、あるいは心臓病などをあげることが出来ます。これらが脳梗塞の危険因子となります。

高脂血症と動脈硬化
 なかでも最近、食生活の西洋化から血液中のコレステロールが高い高脂血症の方が増え、そのせいで動脈硬化にかかる人が増化しています。そして、このタイプの動脈硬化をアテローム硬化と言います。つまり、高脂血症がありますと、長年の間に、動脈の壁にコレステロールなどの脂肪が貯まって、動脈の壁が、動脈の内腔、すなわち血液の流れる側の方に次第に膨らんできます。そして、動脈硬化が起こりますと動脈がその部分で細くなって、最後にはつまってしまうことになるのです。高脂血症の人の増加とともに、最近、このタイプの脳梗塞が増えています。
 正確には、動脈硬化が起こり動脈が狭くなりますと、血液の流れが悪くなってきて、ある日、狭くなった部分に血栓と言う血液の塊が出来て、それにより突然につまってしまうことになるのです。このように血栓が出来て脳の動脈がつまってしまった場合を脳血栓と言い、その結果、脳に血液が流れなくなって脳梗塞が起こることになります。

(1) 皮質枝梗塞
 このタイプの動脈硬化は一般に皮質枝といわれる、脳の動脈の中でも太い血管に起こります。そこで、高脂血症から動脈硬化(アテローム硬化)を起こし、それによって起こるタイプの脳梗塞は皮質枝梗塞と呼ばれます。そして、このタイプでは太い血管がつまりますから、脳梗塞を起こしますと、一般に広い範囲の脳がやられてしまうことになります。そこで、言語中枢のある左側の脳の脳梗塞の場合、この言語中枢がやられて手足の麻痺に加えて失語症と言う言葉の症状も同時に出ることが多いのです。

 なお、脳血栓の場合、しばしば進行性卒中と言って、2~3日かけて症状が悪くなることがあります。つまり最初、手足のしびれだけでも、次の日には手足が動かなくなってしまう場合もあり、あるいは最初軽い手足の麻痺だけでも、次の日には全く動かなくなってしまうような場合もありますので、油断せずに、なるべく早く治療を開始することが大切です。

(2) 穿通枝梗塞
 一方、皮質枝から分れて、脳の中へ直接入って行く細い動脈のことを穿通枝(せんつうし)と言います。この穿通枝は高血圧の影響をとても受けやすいのです。すなわち高血圧が長く続きますと、この穿通枝の壁がもろくなって破れやすくなり脳出血を起こしたり、あるいは逆に狭くなって、つまったりすることになります。
 つまり、高血圧を放置しますと、穿通枝が障害されることによって脳出血と脳梗塞と言う正反対のタイプの両方の病気が起こる可能性があるのです。 高血圧によって起こる脳梗塞がまだ多いのです。
 もともと、日本人には高血圧の方が多いので、脳梗塞のうちでも、高脂血症による皮質枝梗塞よりも、高血圧によって起こる、このタイプのものがほとんどでした。最近、動脈硬化による太い血管がつまるタイプのものが増えてきましたが、それでも、まだまだ高血圧による穿通枝タイプの方がまだまだ多いので油断できません。結局、現状では高血圧が脳梗塞を含めた脳卒中の最大の危険因子であると言えます。
  穿通枝がつまりますと、太い血管と違って、ごく限られた狭い範囲の脳梗塞が起こります。このタイプの脳梗塞のことを穿通枝梗塞と言いますが、別名、ラクナ梗塞とも呼ばれます。このラクナと言う言葉は、このタイプの脳梗塞を起こした脳の切断面が、西洋のチーズの切断面に出来たプツプツとした空気の穴に似ているところからきています。

 

脳血管性痴呆
 このタイプの脳梗塞が何ヶ所も起こると、次第にボケてくることがあり、そのようなものを多発脳梗塞性痴呆(脳血管性痴呆)と言います。痴呆の原因としてはアルツハイマー型痴呆が有名ですが、別名、脳血管性痴呆と呼ばれる脳梗塞によるタイプの痴呆は、日本ではアルツハイマー型痴呆よりまだまだ多いのです。しかし、アルツハイマー型痴呆には現在、有効な治療はありませんが、脳血管性痴呆の場合、普段から脳梗塞の危険因子に対処しておけば、ボケることを予防することが出来るのです。

 

脳梗塞
 脳血栓による脳梗塞は、血圧が下がりやすい夜間に起こりやすい傾向があり、夜間トイレに起きた時に、あるいは朝、起床時に気付くことが多いのです。脳梗塞にならないためには、汗をかいたら、それに見合った水分を補給することを心掛けて下さい。

 脳梗塞を起こした後、血圧が高いと言うのは、血液の流れが悪くなった部分の血液の流れを、血圧を上げることによって良くしようと言う、自己防御反応とも言える状態なのです。そこで、脳梗塞を起こした後の人の血圧が高いからと、安易に血圧を下げたりしますと、血液の流れが悪くなって脳梗塞の範囲が広がったりすることがあります。つまり、脳梗塞が悪化することがありますから、注意しなければなりません。一般に高い方の血圧(収縮期血圧)が200mmHgか、それより少し高い位までの血圧であれば、血圧については、血圧を下げない方が良いと言われています。

 

 高血圧と脳梗塞は相当因果関係「なし」です。

 脳梗塞や脳出血(後発)となったのは、高血圧(前発)が原因の一つだと思われることがあります。しかし、障害年金の認定においては、原則として双方の間(高血圧と脳梗塞)には相当因果関係はないものとされています。つまり、脳梗塞を発症して病院に緊急搬送された場合には、その日が障害年金の請求上での初診の日ということとされているのです。

 糖尿病と脳梗塞は相当因果関係「なし」です。

 代表的な後遺症は、身体の片方だけが麻痺する片麻痺です。重い場合には、上肢はほとんど機能せず、下肢も杖や補装具や車椅子がなければ歩行ができないほどの障害を負います。言語障害、記憶障害、視野障害などが重なる場合には、障害年金の1級が認定される場合もあります。

 障害年金の審査では、身体のどの部位に障害があるのかで重要視されるポイントが変わります。 通常の片麻痺の場合には、日常生活の動作制限が重要視され、診断書の「日常生活における動作の障害の程度」が適正に記載されているかが大切となります。同じ片麻痺でも1肢のみに重い障害が残っている場合(右上肢は全廃しているが、右下肢については軽度の障害にとどまっているなど)には、関節可動域制限や筋力低下が重要視され、診断書の「関節可動域及び筋力」の項目を確認します。

 重い症状の場合、上肢がほとんど機能せず、下肢も杖や補装具、または車椅子がなければ歩行が困難なほどです。言語障害、記憶障害、視野障害などが重なると、さらに障害年金の上位等級が認定される可能性もあります。

 脳梗塞の場合、麻痺により肢体の機能が制限されている場合が非常に高いため、診断書の項目の該当欄に、しっかりと症状が記入されていることも大切となります。 診断書の内容から、あきらかな麻痺の状態が認められれば、筋力低下や関節可動域制限が著しくなくても、障害年金が認定される可能性があるのです。

 脳梗塞の後遺症として多いのが、身体の片側だけの麻痺、言語障害、記憶の障害などあります。後遺症が複数の障害に渡っている場合は、それぞれの診断書の取得が必要になってきます。

 脳梗塞などになった場合の後遺症として、記憶や認知機能などの高次機能障害が残る場合もあります。この時は精神の障害の診断書が必要になります。

 

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