自閉症

 「自閉症」は心の病気ではありません。 自閉症は親の育て方や環境が原因ではない、脳の特性によって起こる発達障害です。自閉症では、脳の特性のために、目や耳から入ってきた情報を整理し、それらを意味のあるまとまったこととして認知することが難しくなってしまうのです。

自閉症の3つの症状(「三つ組」の障害)
 自閉症といっても、症状の現れ方は千差万別ですが、必ず根底には3つの能力障害があります。これを「三つ組」の障害と言い、これがセットであったときに自閉症と診断するという医学的な取り決めになっているのです。
 「三つ組」の障害がセットである場合には、症状の現れ方が違っていても、子どもの伸ばし方の原則がとても共通します。つまり、自閉症かどうかを判断するということは、いま何からどんな教え方をしたら伸びやすいかを調べるということなのです。

(1) 対人交渉の質的な問題
 自閉症というと、人嫌いとか殻にこもるというように、人づき合いの「量」が乏しいと思われがちですが、そうではありません。それどころか、見知らぬ人に突拍子もない言葉をかける子もいるくらいです。要するに、自分と相手との関係を正しく理解できずに不適切な行動をとってしまうのです。 赤ちゃんの場合だと、人見知りがなくて誰にでも平気で抱かれたり、お母さんの後追いが乏しかったりします。
 また、逆に、人見知りや後追いが極端に強くて2~3才を過ぎても、お父さんにすら自分の世話をさせないという子もいます。あやしたときの反応が乏しかったり、手遊び歌をいっしょに楽しむカが伸びにくいこともあります。2~3才になると友達を意識した行動をし始めるものですが、自閉症では友達への関心が薄かったり関わりはもてても極端に一方的だったりします。

(2) コミュニケーションの質的問題
 自閉症では、幼児のときには、ほとんどの子に話し言葉の遅れが見られますが、中には言葉の遅れのない子もいます。診断上重要なのは、遅れのある・なしより、言葉の獲得の偏りや奇妙さです。
 通常、子どもはパパ、ママ、ネンネなど、日常で必要な言葉から覚えていき、覚えた言葉はさっそく使ってみます。なぜなら、言葉は人に対して使うために獲得されるのですから。でも、自閉症の子は興味があるものや繰り返し聞く言葉は言えるのに、肝心の「ママ、パパ」といった言葉を言わなかったり、覚えた言葉も独り言で言うぱかり、ということが多く見られます。言葉のオウム返しが大きくなっても残ることもあります。あるいは、家に帰ってきたときに「ただいま」ではなく「お帰り」というように、相手の言うべき言葉を言ってしまったり、“バイバイ”と手を振るときに、見えたとおりに手のひらを自分のほうに向けて振る「さかさまのバイバイ」をすることも。これは、自分と相手の立場を置き換えて学習することが若手なためと考えられます。また、視線が合いにくかったり、逆に失礼なほど他人の目を凝視したり。微妙な目配せの意味もなかなか理解できません。

(3) イマジネーション障害
 AかもしれないしBかもしれない、という不確定要素を楽しんだり、臨機応変に対応する力が極端に不足しています。ですから不測の事態が起きるとパニックに陥って、本来ならできるはずのことができなくなってしまいます。そのため“いつも同じ状態であること”に強く固執します。
 いつもと同じ道順をたどりたがったり、物の置き場所に勝手に決め事を作ったり。いつも手に何かを握っていないとイヤ、なんてこだわりもあります。遊び方にも特徴が現れて、一列に並べることに没頭したり、2~3才になっても「穴に入れる」とか「押すと鳴る」といった単純なおもちゃに熱中したりします。電車やマーク、文字、数字、特定のキャラクターなどに強い偏った関心を示すこともあります。こうした偏った強い興味は、少し大きくなると特殊な能力として発揮されることもあります。教えないのに2才でアルファベットが書けてしまう、世界中の国旗の国名が言えてしまう、過去や未来のどの日付を言われても曜日を即答できる、など。音楽や絵画などに大変優れた能力を発揮する人もいます。たとえば、山下清画伯は才能を開花させた自閉症であったと考えられています。
 また、常同運動といって、手をヒラヒラさせる、上下に飛び跳ねる、クルクル回る、体を前後に揺らすなどの、動きに没頭することもあります。

(4) 「三つ組」の障害以外の自閉症の症状
 「三つ組」の障害の他にも、付随症状と呼ばれるさまざまな症状があります。必ず現れる症状ではありませんが、よく見られて、特徴的な症状をご紹介します。

多動
 手を放すとどこに行ってしまうかわからないといった落ち着きのなさは、自閉症でも多いものです。落ち着きのなさばかり目立って、「三つ組」の障害に気づいてもらえず、自閉症なのに注意欠陥/多動性障害(AD/HD)と誤って診断されてしまうこともあるほどです。

感覚異常
 自閉症では、音や匂い、手触り、痛みなどの感覚を大脳で正しく情報処理できず、奇妙な反応を示すことが多くあります。例えば、「耳ふさぎ」(音への過敏さ)などもその例です。音は大脳皮質で情報処理されて、こんな音量・こんな音色とか、あのとき聞いた音とか、認識されるわけです。
自閉症では、この情報処理の過程に問題があって、日常のありふれた音を耐え難く認識してしまうことがあります。その子には、ふつうの音がガラスを爪でこするようなイヤな音に聞こえるのかもしれません。触覚の異常のために、 木綿の下着を紙やすりのように痛いと感じる子や、痛みに対して極端に鈍感な子もいます。自閉症で多い偏食も味覚や口の中の触覚が関係していると いう意見もあります。

睡眠異常
 発達障害のある子は、睡眠のリズムの確立が遅れがちで、これもお母さんたちを困らせます。 3才になっても2時間おきに目を覚ますとか、睡眠時間が極端に少ないといったことです。

 同じ自閉症といっても症状の現れ方はいろいろです。他人への適切な警戒心が育っていないという人づき合いの質的問題が、人を避ける形で現れることもあれば、見ず知らずの人へのなれなれしさで示されることもあります。また同じ自閉症でも、他人に関心がなく言葉もないような症状の強い子から、ぺらぺらしゃベるけど一方的、自分の場違いさに気づけなくて、わがまま、しつけ不足、と誤解されてしまうような軽症の子まで、さまざまな段階が存在します。でも、病状の現れ方や程度が違っていても、根っこに「三つ組」の障害があるなら、必要な援助は共通します。そこで、英国の児童精神科医ローナ・ウイングは、ひとくくりにして自閉症スペクトラム(スペクトル)と呼ぼうと提案しました。スペクトラムとは「連続体」という意味で、虹をイメージした言葉です。赤と黄色は別物に見えるけれども、光の波長という意味では連続している、そんな意味合いです。彼女は、典型的な症状を示す子どもたちを「自閉症」と呼び、一見自閉症に見えない自閉症の子どもたちに「アスペルガー症候群」と名前をつけました。

 極端に言薬が遅れていた子が3才で急にぺらぺらと話し始めたり、成長につれてこだわりが出現したり、3才までは症状の評価は難しいものです。また、自閉症の約3割は、「セットバック現象」といって、1才半頃までは健常の発達をしていたのに、ある時期から発達が停滞、あるいは後戻りする現象が見られます。乳児期には「いないいない、ばあ」などをしていたのに、2才になりまったくしなくなったというような例です。弟・妹の誕生や引っ越しが重なると、それが原因で起きた一時的な赤ちゃん返りと混同されやすく、診断の遅れにつながります。自閉症は、最初に挙げた「三つ組」の障害が生涯に渡って続くことがわかった時点で確定的となりますが、その判断ができるのは、おおむね3才を過ぎてからです。しかし、3才未満の子でも3つの条件がそろっている場合、自閉症の特性に合わせたしつけや教育をしてあげたほうが、子どもはまっすぐに伸びていきやすいものです。

 

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