重症筋無力症

 「重症筋無力症」とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患です。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型とよんでいます)。嚥下が上手く出来なくなる場合もあります。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともあります。

 男女比は 1 : 1.7 で女性に多いのが特徴です。発症年齢は、5歳未満に一つのピークがあり全体の7.0%になります。その後、女性では30歳台から50歳台にかけてなだらかなピークがあり、男性では50歳台から60歳台に発症のピークがあります。

 特別な地域や職業歴と重症筋無力症発症の因果関係はありません。

原因
 神経筋接合部の筋肉側(信号の受け手)に存在するいくつかの分子に対して自己抗体が産生され、神経から筋肉に信号が伝わらなくなるために筋力低下が起こります。自己抗体の標的として最も頻度の高いのがアセチルコリン受容体で全体の85%程度、次に筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)で全体の数%と考えられています。残りの数%(全体の10%未満)の患者では、どちらも陽性になりません。自己免疫疾患としての標的分子が約90%の患者で明らかになったことになります。

 しかし、なぜこのような自己抗体が患者体内で作られてるのかは、いまだによくわかっていません。

 一方、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者さんの約75%に胸腺の異常(胸腺過形成、胸腺腫)が合併ことより、何らかの胸腺の関与が疑われています。

 この病気は遺伝しません。遺伝する筋無力症もまれにありますが、これは先天性筋無力症候群と言われる神経筋接合部にある特定の分子の遺伝子変異による疾患です。自己免疫性の重症筋無力症は遺伝をすることはありません。

 筋力低下と易疲労性がこの疾患の症状です。
 この二つの症状は、骨格筋であればどこにでもあらわれるわけですが、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状がおこりやすいことが特徴です。

 一方、発語や嚥下障害などの症状が目立つ患者さんもいますし、四肢筋力低下が強い患者さんもいます。症状が悪化すると、呼吸筋麻痺により呼吸ができなくなることもあります。

治療法
 対症療法と根治的な免疫療法があります。
 対症療法として使われるのは、コリンエステラーゼ阻害薬といって、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤です。ただ、これはあくまでも、一時的な対症療法と考えるべきです。

 治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になります。抗体の産生を抑制するものには、ステロイド薬、免疫抑制薬があり、飲み薬としても点滴としても使われています。

 そのほかには、抗体を取り除く血液浄化療法、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法などがありますが、患者さんの症状や状態に応じて、治療方法が選択されています。これらは、体の抗体産生能を非特異的に押さえたり、全部の抗体を区別なく除去する治療で、疾患特異的な治療ではありません。

 

 重症筋無力症の障害年金では、次のような状態が、診断書や申立書などにしっかりと記載されていることが重要となりますので、記載された内容が実際の状況と整合性がとれているかをしっかり確認します。
良くなる見込みがないこと(今後良くなる見込みがない)
嚥下障害などがあること重症筋無力症により、喉の筋力低下が起こり、嚥下障害やしゃべりにくいなどの症状がある)
日常生活において、家族の援助が必要なこと(手足の筋力の低下による歩行や立つことが困難な状態であり、車いすでの生活のため、家族の援助が必要である)

 

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