骨髄異形性症候群(不応性貧血)

 血液の成分は、血漿と、身体の隅々に酸素などを運ぶ赤血球や細菌を殺す白血球や出血を止める血小板などの血液細胞です。血液の細胞成分やそのもとになる細胞(造血幹細胞ないし血液前駆細胞)は骨髄で造られます。正常な状態では、造血支持組織のなかで、幹細胞や前駆細胞が赤血球、白血球、血小板に成熟していって、それぞれの働きと役割を担うことになります。一般的に血液のがんは、血液の細胞成分やそのもとになる細胞がなんらかの異常をきたし、一部の細胞だけが増えてしまったり、それにより他の細胞成分が増えることができなくなった状態です。その発症のメカニズムはまだ特定できていません。いろいろな原因が重なりあって起こると考えられています。骨髄異形成症候群という病気も、細胞の中にある遺伝子や、それがのっている染色体の異常であるということがわかってきています。この病気は血液のおおもとの1個の幹細胞がわずかに異常を起こし、きわめてゆっくりと身体の血液成分全体に異常が起きてくる状態と考えられます。その結果、骨髄が血液を造るという正常な働きをしなくなり、身体全体に正常な血液細胞を送り出せなくなるためさまざまな身体の異常を呈してきます。

 この病気には、厳密には、いろいろな程度や状態があり、いくつかの病気が寄せ集められたものとして考えることもできます。
 この病気は50才以上の年齢および高齢者に多く、わが国でも人口の高齢化とともに増加傾向にあると考えられています。しかし、この病期の数%ですが若年者にもおこります。抗がん剤などの薬物治療、あるいは放射線治療を受けた場合などには、二次性の骨髄異形成症候群が起こることもあります。また骨髄異形成症候群から、急性白血病になってしまう場合もあります。

症状
 骨髄異形成症候群に特有の症状というものはありませんが、病気の種類と進行度にしたがって、疲れやすい、だるいなどの貧血症状、皮膚に青あざが出るといった出血傾向、原因不明の発熱などの症状が出現します。これらは、身体の中の血液の不足や異常により引き起こされる病態なのですが、なかなか診断がつかないために、「白血球減少症」とか「汎血球減少症」などの暫定的な病名をつけられることもあります。

治療
 治療方法には、症状に応じた対症的な治療と積極的な治療方法とがあります。年齢、健康状態によっても違ってきます。治療もその種類と進行度に応じて異なります。

1) 無治療、経過観察
 不応性貧血の初期では、診断が確定してからも輸血をする必要もなく、無治療で経過観察のみで良い場合も少なくありません。貧血に対して、ビタミンB12、葉酸などの薬剤は無効です。また再生不良性貧血でしばしば使用される男性ホルモン剤も使用されますが、その効果は確立されていません。

2) 赤血球輸血、血小板輸血
 対症療法の一つです。貧血が進行している場合、その症状改善のために赤血球輸血を行います。貧血が進行は病状の進行と無関係ではありません。通常、ヘモグロビン値というものが8以下になった場合、貧血による症状がでてきますし、輸血の適応と考えられます。
 血小板数が少なく、出血傾向のある場合には止血剤の内服治療が必要です。血小板数が2万以上であれば、出血症状のない限り血小板輸血は必要ありません。しかし、これより減少した場合や、出血があり止まらない場合は、緊急の血小板輸血が必要となります。
 白血球減少症には無治療で経過を見ますが、身体の抵抗力が弱って感染症を併発しやすくなります。

3) 化学療法および細胞増殖因子などによる生物学的治療
 これらについては有効性が証明されていないので、いくつかの臨床試験が行われています。

(1) 化学療法
 抗がん剤には、注射薬または内服薬があります。化学療法は、骨髄中のがん細胞を殺す目的で行われます。ただし化学療法は全身の治療であり、全身に行き渡る薬あるいは抗がん剤の投与を受けるわけですから、白血球減少症、血小板減少症、脱毛、吐き気といった副作用も起こります。最近、分子標的療法薬が開発されて、臨床使用可能となってきています。ビーダーザは異常細胞のメチル化に関わる細胞伝達経路を遮断する薬剤で、MDSに対する治療効果が報告され、実際に臨床応用されています。

(2) 生物学的治療法、細胞増殖因子など
 自分の身体の細胞をさらに刺激して、病気と一層たたかうようにしむける治療で、身体自体にすでにあるものをさらに実験的につくりなおし改良し薬として注射し、病気に対する身体の防御力を高めたり、保ったりさせます。白血球を増やす薬物や赤血球を増やすホルモン剤が、骨髄異形成症候群に有効であるかどうか、現在さまざまの臨床研究が進められております。また、分子標的療法薬の一つとして、レブラミドが発売されています。レブラミドはサリドマイドの誘導体であり、5番目の染色体の欠失を有するMDSの症例に対して高い有効性が報告されています。

4) 造血幹細胞移植
 比較的発症年齢が若い場合には、骨髄移植治療が実施されることがあります。

 

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