心臓ペースメーカー等の装着

 心臓弁疾患が進行すると心臓の血液送り出し機能が低下します。心臓はこの低下した分の機能を補おうとして、酸素をたくさん含んだ血液を各器官や組織へ必要なだけ送り出すべく懸命に働きます。こうしてオーバーワークとなった心臓は次第に持ちこたえられなくなり、息切れ、めまい、胸の痛み、疲れ、体液の貯留といった症状を引き起こします。そうした場合、身体検査、さらに詳しいテストの後で、医師が弁の取り替えをすすめることにもなります。

 

(1) 心臓ペースメーカー

 心臓が力強く収縮するためには、心臓の細胞が電気的に活動(興奮)する必要があります。興奮を指示する信号は、最初に心房の一部(洞、または洞結節)でつくられ、刺激伝導系と呼ばれる電線のようなシステムを通じて心房から心室へと伝えられます。この時、興奮の信号が流れる方向は必ず一方通行でなくてはなりません。脈が病的に遅くなる「徐脈」の主な原因は、興奮信号を発する機能が悪くなる場合(洞不全症候群)と、電気の通り(伝導)が悪くなる場合(伝導障害)に分けられます。伝導障害は多くの場合、心房と心室の連結部(房室結節)で生じ、それは房室ブロックと呼ばれています。このような徐脈に対する最も有効で確実な方法は、ペースメーカーを取り付ける、つまりペースメーカー植え込み術です。

 心臓ペースメーカーは心臓の徐脈性不整脈を監視して治療するよう設計されており、ペースメーカー本体と、心臓の電気信号を感知したり電気刺激を伝えるためのリードと呼ばれる電線で構成されています。ペースメーカー本体とリードを接続することで初めて治療が可能となります。

 ペースメーカーの本体は、表面がチタンという丈夫な金属で覆われており、その内部は長時間の作動を維持するための電池と、頭脳である制御回路でできています。

 ペースメーカーは本体に接続されたリードを介して心臓の電気信号を24時間監視し続け、患者さんの心臓リズムを整える必要がある場合には本体から電気刺激を送って治療を行ないます。

 心臓ペースメーカーは脈の遅い患者さんを治療する目的で先端技術の粋を結集して作られた精密医療機器です。

 

(2) 植込み型除細動器(ICD)

 植込み型除細動器(ICD)は、命に関わる不整脈を治療するための体内植込み型装置です。

 不整脈が起こらないように治療するものではなく、常に心臓の脈を監視し、命に関わる不整脈の発作が出た場合にすみやかに反応して、電気ショックを発生させてその不整脈を退治し、発作による突然死を防いでくれる装置です。

    ICD (Implantable Cardioverter Defibrillator)

 ICD本体とこれに接続した細い電線(リード線)で構成されたものでペースメーカーとよく似たものですが、使用目的と働きが違います。

 電線の先を心臓に取り付けてICDの本体と電線を接続することで心臓の脈を監視し、命に関わる不整脈が起こった場合に本体からの電気刺激を心臓内に伝えることにより治療を行う仕組みになっています。

 ICD本体の大きさは大体約70gぐらいで、手のひらに乗るサイズですが、ペースメーカーよりは大きいものです。

 ICDの電池の寿命は、作動状況によって異なりますが、大体4~5年ぐらいです。電池の寿命がくれば交換が必要となります。リード線が1本用のものと5本用のものがあります。患者さんの不整脈の状態で使いわけをします。

 心室細動や心室頻拍という不整脈のときに除細動(電気ショック)が必要となります。一度心室細動が起こると、心臓のポンプ機能は停止して血液の流れが止まり、3~5秒でめまいが起こり、5~15秒で意識を失い、3~5分続くと脳死の状態になるといわれています。

 そして、この不整脈の発作は突発的に起こるため突然死を引き起こします。心室細動がいったん起こると自然に回復することはほとんどなく、電気ショックを与える必要があります。また心室頻拍の場合は、心臓のポンプ機能が低下し、脳に送られる血液が減り、その結果めまいや失神を起こしたり、心不全の引き金になったり、心室頻拍に続いて、心室細動が起こる場合もあり、これも突然死を引き起こします。

 この不整脈にも電気ショックを与える必要があります。電気ショックの装置はどこにでもあるものではないので、この不整脈を起こす危険性の高い人に植込み型除細動器(ICD)を植込みます。

 脈が病的に速くなる「頻脈」は多くの場合、心臓の中で興奮信号(電気)の流れがぐるぐる回転することで発生します。このような異常な回路が心室にできてしまうと、心室頻拍、心室細動といった生命に関わる頻脈となります。心室頻拍、心室細動などの危険な頻脈を治療する切り札として期待されているのが、植え込み型除細動器(ICD)です。

 

(3) 人工心臓弁

 新しく植え込まれる心臓弁は「人工心臓弁」と呼ばれるもので、その中には「機械弁」と「生体弁」があります。

機械弁

 全て人工の材料が使われている。現在主流である機械弁は二葉弁という、主にパイロライティックカーボンという黒鉛が材料で半月状の2枚の弁葉が開閉する構造をしている。この素材は硬さ、強さ、耐久性、血液の付着しにくさなどの点で理想的な材料といえます。

生体弁

 牛の心膜や豚の心臓弁が現在使用されています。

 

 心臓の手術は「全身麻酔」を用いて行う手術です。人工弁置換の手術は、開胸して直接目で見ながら行うため、一時的に心臓を止めなければなりません。そのため、全身の血液循環を代用するものが必要になります。それを「人工心肺」といいますが、人工心肺は、全身を循環して静脈から戻った血液を、心臓と肺を迂回させて人工的に酸素加し、再び動脈に送り込む役割を果たしています。

 

 心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定する時期は、心臓ペースメーカー又は人工弁を装着した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)とします。施術を施した場合、その日が初診日から1年6月以内にあるときはその日を障害認定日とします。

 人口弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)の装着手術を受けたときは、原則3級となります。

 障害年金では、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁の4つの弁のうち、一つでも人工弁に置き換えれば3級となります。複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則3級相当となります。4つの弁をすべて人工弁にしても経過が良好な場合は3級のままです。

 人工弁を装着したにも関わらず、術後の経過や原疾患の性質などによっては障害年金2級以上に該当する場合もあります。人工弁を装着術後、6ヵ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するものは障害等級2級です。術後に障害等級に認定するが、1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定することとしています。

 人工弁を装着していなくても、状態が悪ければ2級や1級となりえます。

 

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