年金は大丈夫? (5) 世代による年金の差

 ある経済学者の試算によれば、1940年生まれと2010年生まれの人とでは、社会保障全体の給付と負担の差し引きは、6000万円近い差が出て、2005年生まれの人は2740万円も「損」をするという。

 70代の人は一生を通じて平均で、払った分より約3000万円多くもらい、今生まれたばかりの子供は逆に3000万円近くの損になるという。  

 1960年当時は11人で1人を支えていたのが、今は2.5人で1人、2050年には1.3人で1人になっていくのだから、システムがもつはずがない。どこかで抜本的な制度見直しをしないといけないのです。

 ところが、厚生労働省の説明はまったく違う。2004年の年金改革「百年安心プラン」によれば、「2005年生まれの人でも、厚生年金加入者は保険料負担額の2.3倍は年金をもらえます」という試算を出している。

 厚生労働省の試算では、保険料負担から事業主負担分を除いているところにある。厚生年金の保険料は、半分ずつ労働者と事業主が出している。つまり、労働者が天引きされている額と同じ額を企業などが負担しているのです。厚生労働省は「これは本人の負担でなく事業主の負担だから、計算に入れない」と説明する。しかし、実際には、労使折半だろうと全額事業主負担だろうと、労働者の賃金に転嫁されているのです。これは経済学の基本です。

 つまり、企業からすれば、本来給与として払うべき金額から事業主負担分を差し引いて、労働者に払っているのです。

 事業主負担分も試算に入れるべきところを、厚生労働省は外して「2.3倍もらえます」と数字を偽造し、「年金は絶対に損はしません」と言っている。さらに、時点の異なる金額を比較する際に、通常「利子率」で算出するところを、厚生労働省の試算では「賃金上昇率」を使っている。本来の利子率で計算すると、「1.6倍」となり、事業主負担分を入れれば「0.8倍」が正しい数字となる。

 政府はすでに破綻しているこの年金制度を「百年安心」などと宣伝してきた。そのプランがうまく機能していないと知られると、今度は「増税すれば年金制度は維持できます」と言っている。

 これらもネズミ講が様々な口説きのテクニックで、加入者を増やそうとするのと同じとみられます。

 ただ、公的年金がそう簡単に破綻しないのは、ネズミ講組織と違って、政府に「徴税権力」があるからだ。今のところ現役世代がより多くの保険料を払って損をすることで、何とか成り立っているからです。「積立方式」だと偽ってお金を集めていた積立金を取り崩すことも、制度延命の方法だ。そして、何よりも今回の消費税増税のように税金を引き上げ社会保障に投入すれば、相当の年数生き延びさせることができる。

 現状では、社会保障費の半分を占める年金に関しては、「賦課方式から積立方式への移行」というような抜本的な改革は行われる気配はありません。

 また、医療・介護に関しても、健康を維持・増進して医療費を削減するような試みは実施されず、大企業や高所得者への負担を増やすだけの施策にとどまりました。

 「費用が増えるから、費用を賄うための負担を増やす(増税する)」などということは、誰にでもできる仕事であり、高給を払ってまで、政治家や官僚にしてもらう仕事ではないでしょう。

 「安心」を確保しながら、負担を増やさないためには、現在の「常識」をいったん白紙で見直すことが必要です。

 今後、公的年金を維持するために必要な金額が約900兆円と試算されていますが、実際に残っているのは2013年度末で約126兆円です。年金は事実上破綻しており、このままでは、税金をつぎ込んでも焼け石に水です。消費税増税をすれば、年金世代はもちろん、現役世代の家計を圧迫し、ますます維持が難しくなります。

 年金制度には、原則強制的に加入させられてしまいます。そのため、年金保険料は事実上の「税金」ともいえます。強制加入の仕組みを改め、保険料として支払っているお金を自由に使えるようにして、各自老後に備えて貯金したり、老後も働くなど、選択の幅を広げるべきでしょう。

参考

 「怠け者が得をして、勤勉な人が損をする」制度になれば問題です。

 そこで、幸福実現党は、現行制度を廃止して積立式年金を創設し、生涯現役を推進するとしています。これは「稼ぐ人」を増やして「もらう人」を減らすことで、自助努力型の社会を創るという趣旨で、最も抜本的な改革案となっています。

 年金を維持するには、せめて積立方式に変えるべきでしょう。

 積立方式とは「現役時代のうちに、自分の老後に使うための年金を積み立てておく」という方式。「自分の老後は自分で面倒を見る」というものであり、その根本には「セルフヘルプの原則」がある。

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