年金は大丈夫? (7) 社会保障と税の一体改革

 『社会保障と税の一体改革案』によると、例えば、消費税5%引き上げで約13兆円の税収増になるが、このうち年金に回るのは6千億円に過ぎない。

 厚生労働省の内部試算では、年金財政には550兆円の債務が隠されている。ですから、70歳支給開始にして1人1千万円ずつ年金を減らし、支給総額で344兆円を浮かして、隠れ債務をなくそうとしているのです。

 「社会保障と税の一体改革」の本当の目的は、社会保障の充実ではないように見えます。財務省主導による増税が主たる目的です。年金・介護・医療は、少子高齢化という大義名分があり、国民も納得しやすいでしょう。また、国の借金が1000万円ということを盛んに喧伝して、財政危機に直面していることを煽れば、何も知らない国民は「増税やむなし」ということになります。そこには、何も「未来ビジョン」もなければ、成長に寄与する政策もありません。

 「社会保障と税の一体改革」の先にあるのは、国民の富を「税金」として大量に吸い上げ、「富の再配分」を行う「社会主義国家」です。

 

3つの問題点

 第一の問題点は、「消費税増税」を筆頭に「増税ラッシュ」を図るものであるということです。

 「社会保障と税の一体改革」とは、一言で言えば、国民に対する「アメと鞭(ムチ)」です。同素案の前半では、「アメ」となる「社会保障制度の持続と充実」を打ち出していますが、政府の本当の狙いは、後半の「鞭(ムチ)」である「大増税」にあります。

 消費増税以外にも、所得税や住民税、相続税等の課税強化、地球温暖化対策税(環境税)の創設や金融課税の軽減特例の廃止など、「増税ラッシュ」をかけようとする財務省の強い意志が表れています。

 増税に加え、厚生年金の保険料引き上げや住民税の年少扶養控除の廃止等により、年収500万円世帯の場合、年間20万~30万円の負担増になるとの計算が出ています。

 第二の問題点は、「マイナンバー」による国民管理制度にあります。財務省の主眼は「マイナンバー制度」にあると言われています。

 今は、各省庁や自治体等がバラバラに管理されている国民情報を「マイナンバー」の下、統一して管理し、更に、銀行・金融機関や医療機関等と情報を連携することで、国家が国民の全資産や些細な金銭の出入りまで把握掌握することができる制度です。

 たとえ、消費税増税で景気が悪化して税収が減ったとしても、「マイナンバー制度」を機能させれば、パートや副業、アルバイト等の些細な収入であっても、いつでも、あらゆる収入や資産から合法的に税金を巻き上げるシステムが出来上がります。

 第三の問題点は、「国家の肥大化」「大きな政府」をもたらす構造となっていることにあります。

 例えば、「社会保障と税の一体改革改革」で、厚生労働省は真っ先に「未来への投資(子ども・子育て支援)の強化と貧困・格差対策の強化」を打ち出しています。

 「子ども・子育て支援」では、幼稚園・保育所の一体化した「総合施設」をつくることを掲げ、文科省の管轄である幼稚園行政まで入り込んでおり、厚労省のスリム化どころか、「焼け太り」を目指していることは明らかです。

 「大きな政府」へと肥大化することは避けられません。

 福祉国家は持続不可能

 「税と社会保障の一体改革」は、「社会保障」を大義名分とした「増税議論」に過ぎませんでした。

 社会保障の危機に際して、私たち国民は、国家に依存せず、自分の人生に責任を持つ人生計画を設計していくべきです。また、家族や地域、NPO、宗教団体による「共助」を充実していく必要があります。

 「育児の社会化」や「介護の社会化」は、「家族解体」(=家族のいらない社会)を目論む共産主義思想です。民主党の「子ども手当」や「税と社会保障の一体改革」も、「国家が子どもを養い、老人を養う」(=国民を支配する)という国家社会主義思想の流れを汲んでいます。

 自由主義国家における社会保障は、本人の備えと家族の助け合いを基本とすべきであり、私たち国民が、今そうした意識転換を行わなければ、政府と税金は無限に拡大していくことになるでしょう。

 「税と社会保障の一体改革」には、社会主義国のように「個人が国家によって養われる」社会を現出し、その結果、血の通った「家族の絆」を解体していきます。「税と社会保障の一体改革」は健全な社会を蝕む恐れがあります。

 今後、社会保障は、本人の備えと家族の助け合いを基本とし、少子化を食い止め、超高齢化社会を支えるべく、「家庭の価値」を見直すべきです。

 そして、政府は家族の助け合いをサポートすると共に、「選択と集中」により、確かなセーフティー・ネットを整えていくべきです。

 財政健全化の王道は、増税ではなく、経済(景気など)をよくすることである。1997年以降のデータが示すように、いくら消費税を増税しても、マクロの成長とデフレ克服がないかぎり税収は低下している。

 社会保障の予算は、医療における規制緩和などによって削れる部分も多い。しかし、大きな政府を容認する現政権の議論は、こうした点を無視して、社会保障の財源確保ありきで進んでいる。

 マクロ経済の大幅改善と歳出削減なくして社会保障費などを消費税増税で賄おうとすれば、北欧を超える「重税国家」になってしまう。国民が不安なのは「年金がもらえるか」より「日々の消費税はどこまで上がるのか」なのです。デフレと低成長を放置し、将来の消費税率についての展望がないまま消費税を上げれば、日本経済は決定的に悪くなってしまう。

 決定的におかしいのは、「増税ありき」の政策論議になっていること。「増税しない、こんなやり方もある」という議論を起こし、両者のメリット・デメリットを冷静に比較すべきである。

新たな成長戦略を立てて景気をよくすれば税収が増えるので、増税は必要ない

参考

 サッチャー元首相以前の「イギリス病」のように、「福祉国家を目指す」と称して、国家がますます仕事を増やし、それが財政を圧迫し、更なる増税が要求され、経済が徐々に疲弊していく悪循環に陥ることになります。

 「富の再配分」を盾に取り、国民から税金を吸い取る財務省の正体に、今こそ国民は気付かなくてはなりません。

 規制を緩和し、事業を民間に委ねれば、企業の競争原理の中で国民はより良いサービスを受けることができ、そこから雇用も生まれます。

 財務省に操られ、「経済成長なき増税路線」を突き進む「社会保障と税に一体改革」は国民を苦しめるものでしかありません。

 こうした「国家社会主義」路線の最大の問題点は、ハイエクが指摘しているように、「自由」を侵害し、「隷属への道」に至る危険があることです。

 特定の勢力によって「自由」は常に脅かされ続けています。ヒトラーが最も憎んだのは「自由」という言葉でした。だからこそ、「自由」は闘いを通じて守り育てていくことが大切なのです。

 サッチャー首相が力説したように、「働かざる者、食うべからず」という人生の基本に立ち返るしかない。政府が貧しい人にどれだけ金銭を与えても、貧困から抜け出せるわけではない。必要なのは、自己責任の考え方や勤勉の精神なのです。

年金は大丈夫? へ

経済 へ

「仏法真理」へ戻る