保育園の民営化で潜在待機児童を解消

 保育所とは、仕事などの関係で、家庭で育てることが難しい親御さんに代わって、0歳から5歳までの小学校に通う前の子供を預かる施設です。

潜在待機児童の問題

 今の日本では出産を期に退職する女性は7割にも上る。「仕事も子育ても」という選択は、事実上難しいというのが現状です。人口を増やすには、「仕事を続けながら子育てができる」という状況をつくり出すことが必要になる。その中心的な役割を担っているのが保育事業である。

 潜在的には100万人もの待機者がいると見られている。都市部は人口そのものが増えているので、保育所を増やして入所できる児童が増えても、それを上回る入所希望者が現れるという。この保育の問題で知っておきたいのは、国や自治体が多くの補助金(税金)を使っている点です。

  児童1人につき、年間200万円以上の税金が使われている。汗をかき、知恵を絞って、社会的に高い地位や収入を得た家庭は、税金をたくさん納めて保育所などを支えている一方で、自分の子供を預けたくても預けにくい、という逆説的な問題が起きています。

 「認可保育所」とは、子供一人当たりの施設面積や保育士の数など、国が定めた基準をクリアしている保育所のこと。補助金を受けて運営しているため、保育料は月2~3万と安い。一方、「認可外保育所」は、国の基準を満たしていないため、補助金の支給がなく、保育料は平均月6~7万程度と高い。

 当然、保育料の安い認可保育所を希望する人が多くなるが、開所時間が短いなど利用者のニーズに合っていない面がある。また、入所条件として、両親が共働きであるなど、「保育に欠ける」ことが前提となっている。そのため、「就労証明書」がないと保育所には入れないが、逆に保育所が決まらなければ就職面接にも受かりにくいという矛盾が生じている。

 他にも、サービスの内容など、保育事業には課題が多い。

そもそも「待機児童問題」とは

 現在は、国や自治体が「保育所に」補助金を渡す仕組みです。しかし、「こういう設備がないと認可しない」「これでは基準を満たしていない」という具合に、行政が箸の上げ下ろしまで口を出しているため、企業や団体が積極的に保育所をつくりにくい状況です。

 「これをやれば、これだけの補助金を出します」という現在の仕組みだと、保育所は行政の顔色ばかりうかがうようになり、子供や親御さんのニーズとかけ離れたサービスを始めてしまいます。

 しかし、バウチャー制度では、国や自治体が親御さんにバウチャー(クーポン券、引換券)を渡します。それは保育所でしか使えないので、多くのバウチャーを集めた保育所が多く補助金を受け取れる仕組みです。そうすると、素晴らしい保育をしている施設や団体にお金や利用者が集まっていき、また、新しい施設をつくっていけるようになります。ある程度、市場の原理を活用するわけです。

 ほかにも、施設の設置基準や建物そのものの容積率の緩和など、さまざまな「規制緩和」を組み合わせていけば、「待機児童」問題も改善していくはずです。

 安倍晋三首相は「一億総活躍社会」を目指し、強い経済、子育て支援、社会保障というアベノミクス「新3本の矢」を打ち出した。その中身は、待機児童のゼロ化や子供の多い家庭への支援、介護施設の整備や所得の底上げなど。

 待機児童問題を解消するために、自民党が掲げた「すべての子どもたちの幼稚園や保育園の費用の無償化」という政策が的外れです。

 全面無償化は財源に無理があり、現実的な政策ではない。高所得者層の保育料を無償化する必要がないにもかかわらず、全面無償化をすれば財源が足りなくなるのは当然です。

 認可保育所には多額の税金が投入されているにもかかわらず、認可外にはほとんど投入されていない。保育料の安い認可には、ただでさえ預けたい人が殺到している。空きがなく認可外保育所を利用せざるをえない家庭は、認可にも入れなかった上に、無償化の対象にもならない。

 

政府がすべきなのは無償化ではなく「多様化」

 企業の参入をもっと自由化したほうが、サービス内容は向上すると思います。補助金を受けている認可保育所は、競争しなくても児童が入ってくるので、横並びの談合が行われています。たとえば、どこか一つの園がお預かり時間を延長すると、他の園もそうしないといけなくなるので、とにかく負担が増えないように足並みを揃えようとするのです。

 認可保育所には、法律上は民間企業が参入できるようになっているが、実際は補助金の使途制限や実質的な配当の禁止など、既存の保育所が優遇されているため参入は極めて困難である。

 利用者のニーズに応えられないばかりか、利権構造のなかにある認可保育所をさらに税金を使って増やしたところで、どこまで有効な投資となるかは疑問である。

 むしろ、民間の株式会社による保育所の供給を促し、自由競争によってサービスの質を向上させていくのが現実的と言えるでしょう。

 事業所内保育施設もニーズがある。親としては、勤務の休憩時間などに子供に会いに行けるというのは安心です。あるいは、駅を単なる電車の乗降場所と考えるのではなく、一種の宿場として捉えれば、ここに託児所を作る企業も出てくる。

 他にも、家事代行サービスやベビーシッター派遣など、子育てを支援する産業を次々と興していくことが大事です。

 また、事業所内保育施設をはじめ、短時間勤務や在宅勤務、育児休業の取得など、働く女性の出産・子育てを積極的に支援する企業には、税の優遇政策を取ることも効果的でしょう。

 現在、保育所を設置するには規制があり、保育サービスの提供側は、国から認可を受けなければ、安価で事業をすることが難しい。これでは保育所の数も足りず、手ごろな金額でサービスを受けることも難しい。

参考

 ならば、志ある企業や団体が自由に保育所をつくれるように規制緩和が必要です。もちろん、保育を担う人や施設、安全面などの情報開示を義務化し、利用者側が安心して利用できる環境を整える必要があります。

 保育サービスの自由化が進めば、駅に近い保育所や企業内の保育所、地域の方のベビーシッターなど、子育てに多様な選択肢が生まれ、母親も育児と仕事を両立しやすくなるでしょう。

 認可保育所には税金の補助があるため、他の保育所に比べて設備がよく、利用者が払う保育料も安く抑えられています。

 そのため、政府が予算を組んで認可保育所を増やせば増やすほど、「価格の安い保育所に入れたい」という希望者も増え、「待機児童」が減らないのです。

 

規制緩和で保育所を増やす

 公立の認可保育所は高コスト体質になりがちです。経済学者の鈴木亘氏によると、公立の認可保育所で0歳児1人の保育にかかる費用は平均月40~50万円。しかし、利用者が支払う保育料は平均月2万円。その差額は税金でまかなわれています。保育所の運営費用全体に占める人件費の割合も70~80%と高くなっています。

 しかし、市町村区の中には株式会社の保育所参入を事実上認めていないところもあります。

 現在の認可保育所の設置基準では、保育所に調理室や医務室を備える必要がある上、部屋の広さについても細かく決められている。東京都独自の制度である「認証保育所」の設置基準は、「認可保育所」の条件よりは緩和されているが、地価が高く、人口も多い東京では、安全基準を担保できるという条件のもと、もう一歩規制緩和を進めても良いのではないでしょうか。

参考

 設置基準を緩和し、経営ノウハウを持つ株式会社が保育所に参入できるようになれば、税金をそれほどかけずに保育所を増やせるはずです。

 例えば、小泉政権下では構造改革の一環として「待機児童ゼロ作戦」が計られ、認可保育所の設置用件の緩和を通して民間の参入を促す試みがなされました。しかし、規制緩和は限定的なものとなっています。

 規制緩和以降も、自治体によっては条例によって独自の基準を作り、事実上認可保育所を社会福祉法人に限定しているところが多く、まだまだ民間参入が進んでいません。

 また、社会福祉法人が運営する認可保育所は、国からの補助や税制優遇によって利用料が安いのに対し、認可外になると認可保育園の3倍の額になります。(認可保育所の平均保育料は月額2万円強、無認可保育所は月額約6万円)

 税制上でも株式会社には大きなハンディがあります。社会福祉法人は、法人税、事業税、住民税、固定資産税、消費税が非課税ですが、株式会社やNPO法人は、法人税、事業税、住民税は課税されます。ゆえに、株式会社の保育事業に対しては減税や課税免除を行い、不公平な参入障壁を排除し、民間の保育事業参入を促すべきです。

 「社会保障と税の一体改革」では、消費増税分によって7千億円分の財源を投じ、認可保育所の整備をすることになっていますが、そもそも増税によって認可保育所を増やすという考えは間違っています。

 必要なことは、保育業への民間の参入障壁を排除することであり、その流れの中で企業内保育所の設置を推奨すべきです。

 復職を願う母たちの声を聞くと、最も多い答えは「職場に保育所があることが一番安心」というものです。

 企業内保育所は、大企業を中心に近年増え始めていますが、全体の割合からすればまだまだ足りていません。

 現実に、女性が働きやすい環境を整備している企業の多くは、生産性も高く、業績好調な企業が多いという点も見逃せません。

 企業内保育所を設置する企業の法人税を優遇するなど、民間の力を有効に使えば、消費税を増税せずとも待機児童問題の解決は可能なのです。

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