アベノミクスを考える

 アベノミクスは、
1 経済に資金を供給する「金融緩和」 (第一の矢)
2 政府がインフラ補修など公共事業を行う「財政出動」 (第二の矢)
3 新たな事業を生むための「成長戦略」 (第三の矢)
を組み合わせることで資金を循環させ、景気回復、経済成長を目指す政策です。

 「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の三つの経済政策を打ち出していたことから、「三本の矢」と表現されております。

 参考

 第一の矢と呼ばれる「金融緩和」。これは、民間の金融機関が持つ国債を、日銀が買い取ることによって市場に出回るお金の量を増やし、個人や企業がお金を借りやすい環境をつくる政策。大胆で積極的な金融緩和を次々と打ち出したことで、景気回復の期待が高まり、一時株価も上昇しました。安倍政権では「財政の健全化」を訴える機会が増えました。

 第二の矢の「財政出動」は、公共事業を増やすことで、民間企業の投資や雇用を増やす政策。

 第三の矢の「成長戦略」は、規制を緩和して企業が新規事業を始めやすくし、新しい商品やサービスを生み出すというもの(成長戦略)であった。

 ところで、幸福実現党は2009年5月の立党時から、これらの経済政策を掲げていた。

 その年の衆院選での公約に、
 (1)3%程度のインフレ目標など大胆な金融緩和
 (2)交通・都市インフラなどへの大規模投資
 (3)農業・医療・建築などの抜本的な規制緩和と大減税
を盛り込んだ。

 アベノミクスは、幸福実現党の経済政策に沿ったものと言えます。

 ただ、決定的に違ったのが、第三の矢である「成長戦略」の中身と「消費増税」の導入です。人工インフレを起こしたあと、経済が実体を伴うために、新しい資金の供給に見合った産業を育成することが大事であったのだが。

 しかし、安倍政権では、「医療の成長産業化」「農林水産業の強化」「外国人医師の受け入れ」など、どれも小ぶりなものばかりで、期待していた市場は失望。既得権益の打破や規制緩和を進めることができていない。その中で消費増税8%を導入したため、回復の兆しが見え始めた日本経済に冷水を浴びせる形となった。

 第一、第二の矢で日銀や政府を動かしたまでは良かったが、第三の矢で個人や企業の創意工夫に委ね、民間主導の経済成長を目指すべき段階で、アベノミクスの限界が露呈したのです。

 「景気回復は、すべて政府主導で実現できる」という財務省的な、中国にも似た社会主義的な経済だったと言える。それは、「大きな政府」が民間を抑圧・統制する経済である。

 

幸福実現党が言い出した「3本の矢」の狙いとは
 2008年のサブプライム・ショック以降、アメリカやEUの企業は巨額の借金を抱え、その返済に一生懸命になった。いわゆるバランスシート不況が世界を覆い、企業が積極的にはお金を借りて新しい事業を始めようとしなくなった。仕方がないので政府が「借金して公共事業をやりましょう」ということが、アメリカや中国などで大々的に行われている。経済学で言えば、不況の緊急時に財政出動で一国の経済を支えるケインズ経済学のやり方です。1929年の大恐慌後、アメリカのルーズベルト政権やドイツのナチス政権で実行され、不況を退治した実績がある。日本の場合、1990年のバブル崩壊以降の20年以上、ほとんどの政権がこの手法を採り続けてきた。ただ、日本の多くの企業はその借金返済を2005年あたりには一通り終えていたという。やっと身軽になって、「さあ、これからだ」という時に、サブプライム・ショックが世界を襲った。日本の企業の多くは、今度は280兆円もの内部留保を持ちながら、立ちすくんでいるのが現状です。幸福実現党は企業にそのお金を日本国内で思い切って投資してもらうために、アベノミクスの「第3の矢」にあたる抜本的な規制緩和を提案したのだった。

 さらに、2015年9月に発表された「新3本の矢」では、規制緩和は消えてしまった。「一億総活躍社会」を目指し、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障の3つであり、経済政策というよりは社会保障政策に近い。

 待機児童のゼロ化や子供の多い家庭への支援、介護施設の整備や所得の底上げなど。   

参考

 だが、待機児童の対策や介護施設の整備については、規制緩和によって、民間業者の事業への参入を増やすことが、解決の近道と言えよう。これは、アベノミクス「3本の矢」の規制緩和を徹底すればできたこと。安倍首相は各業界の反対を受け、規制緩和路線を捨てて、バラマキ政策で解決を図ろうとしている。「新3本の矢」はアベノミクスの終わりを示すものと言える。

 また、政府は企業に賃上げや女性管理職の登用目標の設定、携帯料金の値下げなどを指示してきた。だがこれらは、企業にとっては「規制」でしかなく、成長戦略と逆行するもの。

 今、政府が行うべきは、民間の自由な経済活動を妨げているものを取り除くこと。すなわち、安倍首相がいったん捨てた規制緩和や減税政策により、日本の底力を引き出すことである。

参考

 8%への消費増税が資金循環を断ち切った。以来、国民の消費支出は減少している。先送りはしたものの、10%への増税が待ち受ける。日本経済は、安倍政権誕生前よりもひどいデフレスパイラルに逆戻りする可能性が高い。

 では、もし安倍政権がデフレを防ぐため、日銀に金融緩和を続けさせればどうなるか。

 金融緩和は、日銀が民間銀行から国債を買い入れることによって行われている。効果のない買い入れをいつまでも続ければ、国債価格の下落や、円の価値下落によるインフレで、経済を混乱させる可能性もある。

 「成長戦略」はうまく実行できず、金融緩和政策だけが繰り返された。ところが、狙った効果は出ず、ついに「劇薬」とされる「マイナス金利政策」が行われたが、景気回復効果が出るどころか、株価が下落してしまった。 

 アベノミクスが行き詰まっている一番の原因は、間違いなく消費増税にある。

 一連の金融緩和政策の大きな狙いは、民間への貸出しを増やすことで市場に資金を供給することにあった。しかし、消費増税が2014年に実行されたことにより、実体経済の消費と投資は抑制されて資金の需要は減り、景気は回復しなかった。実際、消費増税が行われて以降、個人消費も大幅に下がっている。

 財政健全化とは、要するに、「政府の借金が増えているから、増税が必要だ」という話が通るものなのか。

 安倍政権では、「財政健全化を着実に進めることは、国民の将来不安を軽減し、消費が拡大することを通じて経済成長を促す」としています。

 言い換えると「増税すれば消費が拡大する」と言っているからです。そんな馬鹿なことはあり得ないでしょう。

 増税すれば、政府の懐は温かくなるかもしれませんが、取られた国民の懐は寂しくなります。どこの世界に懐が寂しくなることで、不安が軽減されて、さらに買い物をしようと考える人がいるのでしょうか?

 増税は国民に向けられた「毒矢」にほかなりません。これまでの三本の矢が成功しつつあるからといって、次に放つ矢も不況退治の矢と思って油断していると、大変なことになります。国民は毅然として ノー と言う必要があります。

 消費税、所得税、相続税の増税。これらをすれば、三本の矢である「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の効果をすべて打ち消してしまうのです。

 2、3本目の矢である「財政政策」と「成長戦略」はもちろんのこと、経済の活力を根本から取り戻す消費減税が必須となってくる。

 日本は1989年に消費税3%を導入し、1997年には5%に増税しましたが、その結果20年以上、景気の低迷が続き、肝心の政府の税収は減少傾向にあるからです。8%に増税すれば、アベノミクスが失速することは分かっていた。

マイナス金利

 政府が目指すべきは、消費税をはじめとするさまざまな税金を軽くして、デフレを脱却し、経済成長を実現した結果として、税収を増やす「減税路線」でしょう。

本来の『第3の矢』 は こちら