移動時間が3分の1になればGDP 3倍

 田中角栄氏は日本中を「一都市」にするビジョンを持ち、新潟や富山を「東京都内」にし、島根や高知を「大阪市内」にすると語っていた。また、こんな予測もしていた。

 「人間の1日の行動半径の拡大に比例して国民総生産と国民所得は増大する」

 これはある程度、実感できる。新幹線開通前の1956年、東京~大阪間の移動は7時間半かかっていたが、1992年には3分の1の2時間半に縮まった。その36年間で日本の1人あたりの実質GDP(国内総生産)は3倍に増えた。つまり、国民の所得が3倍になった。

 例えば、新大阪から松江までは岡山経由で約3時間半かかる。それが「山陰新幹線」ができると約1時間半。移動時間が半分以下になれば、島根や鳥取の人たちの所得が2倍以上になる可能性があることを意味する。

 

新幹線が「社会保障」になる

 新幹線による所得増の効果は、北陸新幹線や博多~鹿児島間の九州新幹線でも実証されている。九州では1世帯あたり年間所得が5万円近くも増えたという。田中角栄氏の言うように、短時間での移動範囲が広がることで、その地域全体に富が生み出される。

 新幹線の通っていない島根や鳥取、高知、愛媛、大分、宮崎といった県は、高齢者の割合が高い。ここに新幹線が通ることで、仕事が増え、若い世代の人口流出が止まり、高齢者を支えることができる。

 高齢化が進んだ地域は自殺率も高い。実は、「その原因は新幹線の整備・開通の遅れ」という説がある(注)。ならば、新幹線やリニアを全国に張り巡らせることで、高齢者を若い世代が支え、自殺に至るような人たちを救うこともできる。

 注)自殺総合対策推進センター(東京都小平市)の本橋豊センター長が指摘。

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