スウェーデンの年金改革

 諸外国でも、少子・高齢化で、これまでの年金制度が限界にきて、その改革が重要な課題になっています。どこかの国で、成功するか、参考にしょうと見守っている状況と言ってよい。そのなかで、日本が注目したのが 1999年から始まったスウェーデンの年金改革です。

スウェーデンが、①高齢化の進展と ②経済の低迷 の二つの原因によって、年金制度の持続可能性に危機感を持つようになりました。それが、超党派による年金改革の原動力になりました。

 スウェーデンでは、1990年に 10%だった高齢人口が、2040年には 25%まで上昇すると予測されています (日本では33%)。旧制度は、日本と似たように 1階の「基礎年金」の上に「補足年金」と報酬比例の「付加年金」ある確定給付の年金でした。つまり、「所得比例年金」を基本に、低所得者には税金で負担する「最低保証年金」を支給するというものです。基本はサラリーマンや自営業といった仕事に関係なく、各自の所得に応じて拠出し、拠出に比例した年金を受給するという。  1990年代になって経済の低迷が続くと予測され、保険料負担が 30%~35%にもなると推定されました。そのため、年金改革は超党派、労使協調で進められました。

 国が拠出するのは最低保証年金の部分だけにとどまり、所得に比例して負担する保険料率は、18.5%に固定されます。そのうち、16%が「賦課方式部分」で、政府で運用し、2.5%が「積立部分」にあてられ、積立部分は それぞれ市場で運用して、変動のクッションにしました。もう一つの特徴は「拠出建て」を組み込んだことです。一般に、拠出建てでは相応の積立金が必要ですが、現役世代が納める保険料や税金でまかなう賦課方式をとった。年金資産に応じて給付が変動する方式になっています。

 ところで、スウェーデンの年金改革は、シンプルな体系が注目されますが、その考え方に特徴があります。  ① 確定給付から年金額が変化する概念上の確定拠出制度に移行、保険料率を18.5%に固定  ② 自動的に年金収支を均衡させるシステムを導入した  ③ 国庫負担を見直して、最低保証年金に限定した  ④ 障害年金と遺族年金を切り離して別の制度にした  ⑤ 20年という長い期間をかけて段階的に新制度に移行する

概念上の確定拠出制度とは  

 確定拠出とは、「保険料はあらかじめ確定しているが、受給する年金額は変動する」制度です。  導入した、「概念上の確定拠出」 とは、「あらかじめ仮想した運用利回り」 で、各自の年金口座に積み上げた額を年金権とするもので、変動を先取りするというものです。ただし、出生率の低下など、各種変動リスクへの対応には、課題が残ります。

 

 日本の 2004年の年金改正では、①保険料をいずれ 国民年金を16,900円、厚生年金を 18.3%に固定する、②年金水準の引き下げと改訂を自動的におこなう、「マクロ経済スライド」という制度が、スウェーデンの年金改革を参考にしたようです。

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