仕事をすること自体が幸福

 成果につながらない長時間労働には改善の余地がある。しかし、休日返上で働いて会社の危機を救ったり、新規事業の立ち上げや作品の創作のために全力を尽くすための長時間勤務もあり、一律には否定できない。

 昨今の「ブラック企業批判」において、長時間働くことを「悪」とする見方の背景には、「仕事 = 苦役」ととらえる見方が見え隠れする。そのような中、現代の日本人にとって示唆に富む、「仕事をすること自体が幸福」という幸福論がある。 19世紀に「スイスの聖人」と呼ばれたカール・ヒルティ(1833~1909)の代表的著作である『幸福論』です。ヒルティは弁護士、大学教授、政治家などを務め、敬虔なクリスチャンでもあった。ヒルティの『幸福論』は「仕事論」から始まっており、「ひとを幸福にするのは仕事の種類ではなく、創造と成功のよろこびである」と述べた。どんな仕事でも真剣に創意工夫し、成果を生むことで、仕事は楽しくなるとしている。

 ヒルティは仕事をする人には「嫌々、仕事をしている人」と「喜んで仕事をしている人」の2種類あるとした。

  「嫌々、仕事をしている人」は、「仕事自体を税金のように思い、人間として生きていくため、食べていくためにしかたがないので、苦役としてやっていて、余暇の方に関心がある」と指摘。一方、「喜んで仕事をしている人」は、「お金ではなく仕事そのものが報酬であり、よく仕事をすればするほど、もっとやりがいがあって、もっと多くの人に影響を与えられる仕事ができる。それが『人生の報酬』なのだ」と考えるという。

 自分の仕事の素晴らしいところは何か、そして、より良い仕事をするにはどうすればいいか。仕事を通じて幸福になる道に目を向けるうちに、毎日の仕事のやりがいが高まるだけでなく、さらにやりがいがある仕事への道が開けるかもしれない。

 

労働法規は70年前のもの

 労働法規の問題にしても、必ずしも企業側だけの責任とは言えません。今の労働法規は70年近く前につくられたもので、工場での事故など「労働災害撲滅」が長い間最優先課題とされてきました。ホワイトカラーが増えた現状に対応できていない部分もあります。

 「成果を出さないとすぐ辞めさせられる」という批判もあります。しかし、解雇規制についても、民法では解雇自由ですが、労働基準法ではいろいろな要件が必要という矛盾があります。裁判所がどちらの基準を採るかで判断は変わるわけです。

 ただ、日本の解雇規制は、OECD諸国の中でトップ10に入るくらい条件が厳しい。それほど簡単に解雇できないのです。

 

創業の精神にこそ立ち返るべき

 企業はどこも世の中に貢献したいという創業者の強い情熱から始まっています。各企業がまとめている社史には、創業時の苦労話や熱意などが書かれています。そういう創業者の言葉が社員を感化します。

 例えば、リクルートの創業者である江副浩正氏の「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉は、今も多くのリクルート社員を感化しています。

 もし、経営者がブラック企業批判を気にするようならば、創業者の精神を忘れているのかもしれません。経営者は、「自分たちの仕事が世の中を変えた」という喜びを従業員に与えることで、彼らの努力に報いることが大事だと思います。

 新しい製品やサービスなど、世の中に付加価値を提供する企業には、時間を忘れて仕事に没頭する社員が必ずいる。世界的な大企業をつくった創業者たちの働きぶりは、ブラック企業顔負けです。

 マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、BASIC(プログラミング言語)の開発を進めていたころは、毎日日の出まで働いていた。

 実家のガレージでアップル社を創業したスティーブ・ジョブズは、寝食を忘れて何週間も開発に没頭していた。世界的な大企業になってからも、開発メンバーはジョブズが納得する製品ができるまで、休みなしで働くことも多かったという。

 日本でも、松下電器(現パナソニック)の松下幸之助やホンダの本田宗一郎、カップヌードルを開発した日清食品の安藤百福などは、ヒット商品を生み出すために、早朝から深夜1時、2時まで研究を続けるような日々を送っていた。

 「長時間労働=悪」となれば、今後世界から大企業が誕生する可能性はなくなる。世界有数の黒字企業は超ブラック企業だったからです。

 ブラック企業は、どこまでも顧客のニーズに応えてくれる優良企業とも言える。実際、デフレ不況が長引き、低価格路線の競争が続いている中、それでも生き残っている企業はコスト感覚に長け、サービス精神旺盛な「黒字企業」です。

 消費者を飽きさせない新商品を次々と繰り出し、採算ラインぎりぎりまで値引きする知恵と工夫の積み重ね。日本人の生活は、こうしたブラック企業の努力の上に成り立っているともいえる。

 仕事が楽な上にブランドのある会社は良く見えるかもしれません。しかし、楽ということは裏を返せば『成長せず、仕事のスキルが身に付かない』ということ。そうした企業に勤めても、自分自身の市場価値はそれほど高まらないため、リストラや倒産などがあった際に再就職が難しいというリスクがあります。

 ノルマの厳しい企業では、社員が必死に働くため競争力が高まり、収益は安定して、結果的に倒産しにくい「黒字企業」になる。成果主義で厳しいノルマの企業は、個人を成長させると同時に、雇用を守ってくれる優良企業ともいえる。

 ブラック企業でよく言われるのが「若者を使い捨てにしている」という批判。しかし、企業にとって仕事を覚えてきた社員を手放すのは、採算の観点からもマイナスになる。

 仕事で壁にぶつかったり、あるいは適性を見出せずに辞める人の率が高いからと言って、企業側が使い捨てにしているという批判はフェアではないでしょう。

 

従業員を鍛えて雇用を守ってくれる企業

 企業は利益を出さなければ事業を続けられない以上、ノルマのない仕事はありえない。

 仕事が楽な上にブランドのある会社は良く見えるかもしれません。しかし、楽ということは、裏を返せば、成長せず仕事のスキルが身に付かないということ。そうした企業に勤めても、自分自身の市場価値はそれほど高まらないため、リストラや倒産などがあった際に再就職が難しいというリスクがある。

 ノルマの厳しい企業では、社員が必死に働くため競争力が高まり、収益は安定して、結果的に倒産しにくい「黒字企業」になる。成果主義で厳しいノルマの企業は、個人を成長させると同時に、雇用を守ってくれる優良企業と言えないでしょうか。

 

社員は運命共同体

 起業家は、自分のビジョンに共感して助けてくれる人を求めています。社員は同じ船に乗る運命共同体である。社会に貢献したいという熱意を持っている経営者は、人を使い捨てにするつもりなどありません。

 ブラック企業でよく言われるのが「若者を使い捨てにしている」ということ。しかし、企業にとって仕事を覚えてきた社員を手放すのは、採算の観点からもマイナスである。

 仕事で壁にぶつかったり、あるいは適性を見出せずに辞める人の率が高いからと言って、企業側が使い捨てにしているという批判はフェアではない。

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