スマホ認知症 「情報の過剰摂取」に注意

 最近人の名前や次にしようとしていたことをよく忘れる。漢字が書けなくなった。つまらないミスをよくする。何となくやる気が起きない。そのような症状を引き起こしている犯人は「スマホ」かもしれません。

 スマホの普及によって世の中はより便利になりました。その一方で、スマホの使い過ぎで脳が疲労し、「スマホ認知症」とでもいうべき症状に陥っている人が増えています。

 

脳に入る情報量が過剰すぎる

 デジタル機器に頼りすぎている若者には、脳損傷者や精神疾患患者と同じような認識能力の低下が見られるという。スマホの使い過ぎで、認知症のような症状が出る若者が増えている。

 何か分からないことがあったら、すぐにスマホを取り出して検索。暗記すべきことは写メで保存。そうしたことを続けていると、脳の記憶系の機能が低下するのは当然と言えば当然でしょう。

 スマホを多用していると、記憶力が衰えるだけでなく、「もの忘れ」も深刻化すると言われています。ネットサーフィンや動画視聴などで、脳にインプットされる情報量が過剰になりすぎ、脳の検索・取りだし機能が低下するのです。脳にさまざまな情報が散乱し、どの情報が自分にとって大事なのか分からない「情報メタボ」の状態です。

 食べ過ぎによる「生活習慣病のメタボ」はよく問題になりますが、スマホによる「情報メタボ」にも同じくらい危機感を持つべきものと言えます。こうした状態にある「スマホ認知症」の人は年々増えています。 

 

「本物の認知症」を引き起こす可能性が高い

 企画やレポートを考える際、自分の頭で考える手間を省いて、「ネットのコピーで済まそう」という誘惑に駆られたことがある人は多いでしょう。こうしたことを続けていけば、次第に創造力や企画力が落ち、論理的に考えて解決策を見出す思考力や判断力が低下してくることは必至です。

 また、ぼんやりしている時によいアイデアが湧くことがあります。近年の研究では、脳には「ぼんやりする時間」が不可欠と分かっており、米ワシントン大学医学部のマーカス・レイクル教授も、「ぼんやりしている時の脳内では、活動時の15倍のエネルギーを消費している」との研究結果を発表しています。

 しかし、スマホは、アイデアの宝庫である「ぼんやりする時間」も奪ってしまいます。「ぼんやりする時間」の代表格だった待ち時間も、スマホでラインやメールをチェックしたり、ゲームをする時間となり、休まる暇はありません。

 夜間にスマホをいじれば、スマホの光によって睡眠が妨げられて睡眠不足になり、記憶力や集中力、思考力、判断力が落ちていきます。「スマホ認知症」の人のほとんどには、だるさなどの不調状態やうつ症状が表れます。スマホの見過ぎでオーバーワークした脳が、悲鳴を上げている。

 「スマホ認知症」の人たちは、20年、30年後、アルツハイマー症などの「本物の認知症」を発症する可能性が高いとまで言われています。

 スマホは便利である反面、気をつけなければ心身に大きなダメージを及ぼします。では、どうしたら「スマホ認知症」から脱却できるのでしょうか。

 参考になるのが、修道女たちのエピソードです。80代半ばで亡くなったある修道女は、亡くなる直前まで、もの忘れなどの症状もなく、認知機能検査でも高得点を上げていました。しかし、死後に脳を解剖すると、重度のアルツハイマー型認知症のような状態だったのです。こうした修道女は数多くいたと言います。なぜ、修道女に認知症の症状が表れなかったのでしょうか。それは、彼女たちが若いころから数多くの書物に触れ、多くの人とコミュニケーションを取り、物事を深く考えて日記をつづっていたためと考えられています。人や自然とリアルに交流し、自らの考えをアウトプットしていたことが、認知症の発症を抑えていたのです。

 つまり、「リアルなつながり」や「リアルな体験」を増やし、インプットした情報をアウトプットする機会をつくることが重要ということです。

 まずは、必要のない時にはスマホを脇に置き、脳を休めるためのぼんやりする時間を取る意思を持つことが大切でしょう。そして、人に直接会うなど、できるだけアナログな活動をしたり、自然の中を散歩したり、すぐにスマホで検索する習慣を控えることも有効です。

 自らの意志と習慣の力を駆使して、「スマホに支配される人」ではなく、「スマホをうまく活用する人」になっていきたいものです。

イノベーション へ

「仏法真理」へ戻る