介護保険・介護施設のありかた

機能が回復すると介護保険報酬が減少 成果が見えづらい仕事

 介護保険の仕組みに見直すべき点があります。

 たとえば、要介護度が4から2に軽減、つまり、リハビリがうまくいって介護対象者の身体の機能が回復したとします。そうすると、支給される介護保険報酬が減らされて介護事業者の収入が下がってしまいます。これは、要介護度の重い方が介護報酬が高く設定されているという制度上の問題です。

 さらに、ある分野で業務の効率化をすると、介護報酬が見直され、前と同じ仕事をしても入ってくるお金が減ってしまいます。

 2018年の介護報酬改定では、1ヵ月あたりの利用者数が901人以上の大規模型(Ⅱ)と呼ばれる施設は、1ヵ月あたりの利用者数が751~900人の大規模型(Ⅰ)に比べてサービスの利益率が高いと指摘され、報酬が引き下げられました。これはスケールメリットや効率化を否定する動きです。これでは、抱えている職員の待遇を良くすることもできません。

 医療と同じく、公的保険料や税金が投入されている分野ですので、「儲ける」ことは許されないという発想なのでしょうか。こんなことでは介護対象者の機能を回復させたり、組織の業務効率を上げたりする努力が報われないことになります。正しいケアをして、評判がよい施設には、多くの入居者が集い、スタッフの待遇が上がるというのが正しいあり方です。Beautiful asian businesswomen on white background

 しかし、要介護度が改善した、というような実績は大々的にアピールすることは難しい。介護施設にも、医療機関と同じく広告制限があり、「医療の内容」「治療実績」のようなものを成果としてアピールできないのです。

 もちろん、「治療実績」をアピールするため、要介護度の改善が見込めない人を受け入れないような施設が出てきては困りますが、「入居者がよくなった」ということを成果とし、その点において競争原理を働かせるべきです。

 現在の介護保険制度は、高齢者の要介護レベルが上がれば上がるほど、保険で利用できる介護サービスの限度額も上がる。こうした制度では、さらなる介護費の増加は避けられない。政府は、高齢者の自助努力をサポートする方向で、制度を設計し直す必要がある。

 

介護業界にもマネジメントが必要

 家族だけでは介護が難しいケースもありますし、身寄りのない方も尊厳を持って人生の最期を迎えられるようなサービスは必要です。

 ただ、介護業界は他の業界に比べても離職率が高く、なかなか人材が定着しない問題があります。2016年度の離職率は16.7%で、全産業の離職率15%と比べてやや高めです。

 離職率が高い理由として、「激務なのに賃金が安い」という処遇面を指摘されるケースが多いのですが、処遇面よりも、「心身の不調」「事業者の理念や運営のあり方に不満があった」「職場の人間関係」を理由に挙げる人の方もおられます。これは、介護施設のマネジメントに問題があるといえそうです。

 

仕事の体系化がなされていない

 介護といっても、その仕事はさまざまです。食事や入浴など要介護者の生活周りのサポート、要介護者やその家族に精神的な励ましや希望を与えるカウンセラー的な役割、ケアプランを組み立てるなどです。

 介護分野は仕事が体系化されておらず、教育の方法論が確立しにくい状態にあると指摘されております。

 また、医師、看護師、薬剤師などには、その資格を持っていなければできない「独占業務」がありますが、介護職だけに許される業務はありません。そのことも、介護とは何かを定義しにくい理由のひとつでしょう。

 もちろん、規制を増やせば、介護に携わる人が減ってしまい、現場での柔軟な対応が妨げられるなどの弊害も増えますが、本来専門知識や技能が必要であるにもかかわらず、「介護は誰でもできる仕事」と軽く見られることがある。人の尊厳や生命を扱う介護の仕事には、工夫の余地が無限にあり、一定の知識と経験を備えた人材はプロとして尊敬されるべきといえます。

 「独占業務」を設けることまで必要はないとしても、一般企業の仕事のように、介護職に対してもキャリアプランや養成プランを組み立て、何をもってプロと定義するかをはっきりさせるべきです。

参考

 超高齢化社会を迎えている今、すべて政府に老後の面倒を見てもらおうとするのではなく、家族で助け合う文化を復活させることも必要です。

 介護を受けていた方が、再び自分で自分のことができるようになったら施設の収入が上がるような仕組みが必要でしょう。

 政府も、高齢者ができるだけ自分のことは自分でやれるように後押しをすべきです。高齢者向け施設をつくるにしても、スタッフが何もかも世話をしてくれる特別養護老人ホームではなく、気の合う仲間と少人数で暮らし、お互いに助け合いながら生活する「グループホーム」を充実させた方が良いかもしれません。

 介護に投じられる税金と保険料は、2000年当初は3.6兆円であったが、2015年に10.1兆円になった。2025年には21兆円になる様子です。

 65歳以上が毎月払う介護保険料は、2015年から2017年の平均で5,514円。15年間で約2倍増となった。2020年には6,711円、2025年には8,165円となってしまう。介護保険サービス費用も1人当たりの保険料負担も増え続けています。

 現在の介護保険制度は、高齢者の要介護レベルが上がれば上がるほど、保険で利用できる介護サービスの限度額も上がる。こうした制度では、さらなる介護費の増加は避けられない。政府は、高齢者の自助努力をサポートする方向で、制度を設計し直す必要があると思います。

 

介護費用

要支援2 の場合(日常生活の支援が必要な状態)

 (自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約3,400円

要支援3 の場合(食事、入浴、排せつなど日常的な動作すべてに介助が必要な状態)

 (自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約24,000円

要支援5 の場合(寝たきりで、日常生活のすべてに介助が必要な状態)   

 (自己負担割合が1割の場合) 1ヵ月にかかる介護費用 約39,000円

 

介護施設は月々5~30万円が目安

特別養護老人ホームを利用する場合(要介護3以上)

 公的施設である特別養護老人ホームには初期費用はなく、月額で利用料がかかる。

 補助金や助成金が入るので、利用料は民間より安い。

  相部屋  月額 約5~10万円   個室   月額 約13~15万円

 

民間の有料老人ホームを利用する場合

 民間の施設は提供できるサービスが幅広い。

 利用料は特別養護老人ホームより高い。

 設備などによって価格差が大きい。

  入居時に払う費用  0~数千万円   月額利用料  約12~30万円

 

介護施設の問題点

・施設では、利用者の安全やサービス効率を重視する。   

 施設に入ると自由な行動が制限されがち。その結果、寝たきりになったり、認知症が悪化するケースもある。

・思いやりにあふれた施設もあるが、利用者の要介護度が上がると施設の補助金が増える現在の仕組みでは、施設が利用者の自立を支援するモチベーションを持ちづらい。

 

これからの介護施設のあり方

自立を支援するプロがいること  

 けがなどで一時的に介護が必要になっても、リハビリによって再び元気になれる施設

認知予防のグループホーム  

 気の合うご近所さんや友人たちと助け合いながら過ごせば、認知症の予防にも役立つ。  

 人生の最期まで健康で社会に貢献する「生涯現役社会の構築が急務ですが、介護が必要になるケースもあります。

 政府はお金の面から在宅介護を進めていますが、大切なのは、『どうしたら介護する側もされる側も幸福になるか』という視点ではないでしょうか。

高齢者の自立を支援

介護サービスに頼りすぎることの危険

 介護サービスは、手厚ければ手厚いほど高齢者のためになるのでしょうか。

 医療や介護を充実させ、高齢者を手厚くサポートすることは、かならずしも『健康長寿』にはつながらない。階段や段差など、生活の中に適度な『バリア』があることが足腰の機能を保ってくれて、寝たきりにならずに済むのです。(ザ・リバティ 11月号記事「幸せな介護のすすめ」より)

 高齢者の自立を支援するためには、高齢者に「自分でできることは自分でやる」という姿勢を失わせないことが大切です。本格的な介護が必要ない段階から、介護保険サービスに頼りすぎることは、まだ残っている生活機能を わざわざ失わせることにもなりかねない。生活機能を失うと、要介護度が上がり、寝たきりに近づくので、本人も家族も幸せな老後から遠ざかってしまう。

 

施設から家庭へ

 死という人生の卒業式を迎えるにあたって大切にしたいもの。それは、愛する人との絆ではないでしょうか。家族の温かみを感じられる自宅が介護の場に適しています。「自宅で穏やかに最期を迎える」という視点から、家族を支援する税制優遇や、医療・介護サービスの充実を考えていくことが必要です。

 もちろん、在宅介護が難しい方や身寄りのない方で、施設を利用される方もおられるでしょう。その場合も、縁ある人たちとつながり、最期まで夢を持って生きられる道を考えたいものです。

 介護する側は大切な人に愛の心で接し、介護される側はそれを感謝で受け止める。そんな時を過ごせたなら、介護はきっと幸せなものになるはずです。

 

家族の絆が深くなっていく

 介護は、縁ある人の最期の世話をすることで、それまで受けた恩を返す貴重な機会にもなる。もちろん、「介護離職」の問題は解決していかなければならないが、介護を施設任せにして、家族や親戚がまったく面倒を見なくなることは望ましくない。

 幸福の科学大川隆法総裁は、著書『奇跡の法』で介護について次のように述べておられます。

「国や都道府県が面倒を見ることができないというのは、一見、非常に不幸なことのようにも見えますが、逆に、それぞれの家族のなかに自衛手段が働いてくるため、家族のきずなというものが深くなっていくだろうと思うのです。すなわち、子供が親を養わなければいけないような時代が、もう一度、到来するのです」

 超高齢化社会を迎えている今、すべて政府に老後の面倒を見てもらおうとするのではなく、家族で助け合う文化を復活させることも必要です。

 

自宅で穏やかに過ごすために

生涯現役が基本  

 ・75歳まで働き続けられる社会の実現

地域のサポート体制  

 ・地域コミュニティやNPOが介護者を精神的にサポート

在宅医療・介護サービスの充実  

 ・訪問診療や訪問看護などを担う人材の養成  

 ・介護者を助けるデイサービスなどの充実

減税で家族の介護を応援  

 ・固定資産税や相続税の免除  

 ・住民税などの減税

 「人間はあの世からこの世に生まれ、人生で様々なことを学んでこの世を卒業し、あの世に還る」という人間観・人生観が介護の前提であるべきです。人生の終末期において家族の絆を強めることも、日本の福祉の未来をひらく鍵になるでしょう。

介護は本当の愛を学ぶ機会