2019年度の年金額の改定

 平成31年1月18日(金)、総務省統計局より平成30年平均の全国消費者物価指数(CPI)が公表されたことにより、平成31年度(2019年度)の年金額改定率等の基本数値が公表されました。

 

平成31年度の参考指標

  1. 物価変動率: 1.0% (1.010)
  2. 名目手取り賃金変動率: 0.6% (1.006)
  3. マクロ経済スライドによる調整率: ▲0.2% (0.998)
  4. 前年度までのマクロ経済スライド未調整分(特別調整率): ▲0.3% (0.997)

全国消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)

 通常、ニュースや新聞記事等で報道される「全国消費者物価指数」は、天候等の条件により価格が大きく変動する生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)が用いられます。しかし、年金額の改定等に用いられる「全国消費者物価指数」は、年金生活者の生活実態を反映させるため、「生鮮食品の価格を含めた総合指数」を用いることとしております。

平成30年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含めた総合指数)は、前年比で「1.0%」上昇しました。

名目手取り賃金変動率

 「名目手取り賃金変動率」とは、「前年の物価変動率」に「(2年度前から4年度前までの3年度平均の)実質賃金変動率」と「(3年度前の)可処分所得割合変化率」を乗じたものです。

名目手取り賃金変動率(1.006)
 =平成30年の物価変動率(1.010)× 平成27~29年度の3年度平均の実質賃金変動率(0.998(▲0.2%))
  × 平成28年度の可処分所得割合変化率(0.998(▲0.2%))

物価変動率と名目手取り賃金変動率 どちらを使う?

年金額の改定方法では、前年の物価変動率の幅と名目手取り賃金変動率の幅との関係で、下表のように、物価変動率または名目手取り賃金変動率を用いることにしております。

                              (2021年度より)

 

賃金と物価の関係

現行の改定率

見直し後の改定率

 

賃金

物価

新規裁定者の年金

既裁定者の年金

新規裁定者の年金

既裁定者の年金

 

賃金

物価

賃金

物価

 

賃金

賃金

賃金

賃金

賃金

物価

賃金

物価

据え置き

据え置き

賃金

賃金

物価

物価

賃金

賃金

賃金

物価

賃金

物価

 新規裁定者(67歳到達年度以前の者)については、「名目手取り賃金変動率」を基準として年金額(再評価率)を改定するのが原則です。また、既裁定者(68歳到達年度以後の者)については、「物価変動率」を基準として年金額(再評価率)を改定するのが原則です。

 平成31年度の参考指標において、物価変動率の上昇率(1.0%)が名目手取り賃金変動率の上昇率(0.6%)を上回っています。新規裁定者は、原則通り「名目手取り賃金変動率」を基準として年金額(再評価率)を改定します。既裁定者は、例外規定によって、「名目手取り賃金変動率」を基準として年金額(再評価率)を改定することとなりました。よって、平成31年度については、新規裁定者も既裁定者も、「名目手取り賃金変動率」を基準として年金額(再評価率)を改定することになりました。

マクロ経済スライドによる調整率

 平成31年度は、財政均衡期間(おおむね100年間)のうちの「調整期間」に入っています。

  (「調整期間」とは、マクロ経済スライドを適用する期間のこと)

 

マクロ経済スライドによるスライド率(0.998(▲0.2%))
 = 平成27~29年度の3年度平均の公的年金被保険者総数の変動率(1.001)
  × 平均余命の伸び率(0.997(▲0.3%))

マクロ経済スライド調整率の繰越し制度(キャリーオーバー制)

 物価変動率や名目手取り賃金変動率がプラスになったとしても、マクロ経済スライドを適用した結果、マイナスとなって年金額の引下げを行わなければならなくなった場合(マイナス改定となる場合)には、マクロ経済スライドを全面的には発動せず、年金額は前年度の年金額と同額で据え置かれます。マクロ経済スライドに未調整分が残るが、この未調整分を物価変動率や名目手取り賃金変動率がプラスになるときに(景気がよくなったときに)、マクロ経済スライド調整率に、特別調整率として繰り越したものをさらに加えて、年金額改定率(再評価率)を引き下げることにしました。これを「キャリーオーバー制」と呼びます。

 キャリーオーバー制は、平成30年度に新設されました。

前年度までのマクロ経済スライドの未調整分 

 「マクロ経済スライドの未調整分」とは、マクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、調整しきれずに翌年度以降に繰り越された未調整分を指します。この仕組みは、平成28年の年金制度改正において導入されたもので、マクロ経済スライドによる調整を将来世代に先送りせず、できる限り早期に調整することにより、将来世代の給付水準を確保することにつながります。

 累積されていた未調整分の特別調整率(▲0.3%)をさらに繰り越して、平成31年度の年金額改定率(再評価率)を「0.1%(1.001)」としました。

 つまり、名目手取り賃金変動率 0.6%から、平成31年度のマクロ経済スライド調整率(▲0.2%)と平成30年度から繰り越されたマクロ経済スライドの未調整分(▲0.3%)が加わることにより、合わせて▲0.5%分を差し引いて、0.1%(1.001)を平成31年度の年金額改定率(再評価率)としました。

年金額改定率(1.001)
 = 名目手取り賃金変動率(1.006)× マクロ経済スライド調整率(0.998)
  × 特別調整率(0.997)

 すなわち、+0.1%になります。

 

満額の老齢基礎年金の額

 平成30年度の改定率 0.998

 平成30年度の老齢基礎年金の満額 780,900円 × 0.998 = 779,300円

 

 平成31年度の改定率 0.999 = 平成30年度の改定率(0.998)× 1.001

 平成31年度の老齢基礎年金の満額 780,900円 × 0.999 = 780,100円

 

夫婦2人分の標準的な年金額(老齢基礎年金を含む)

  221,277 円

 厚生年金は、夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8万円)で 40年間就 業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準です。

(内訳)
  夫  老齢基礎年金 65,008円  老齢厚生年金 91,261円
  妻  老齢基礎年金 65,008円