加速器

 現在膨張しているこの宇宙も、物質同志がお互いに重力で引き合うことで、膨張速度は少しずつ遅くなっているはずで、物質がたっぷり存在して重力が強ければ将来この膨張が止って収縮に転じるし、物質量が不足していれば、減速しながらも永遠に膨張を続けることになります。この境界の密度を臨界密度と言い、現在の宇宙に存在する物質の密度と臨界密度の比を密度定数Omegaと呼んでいます。まだ正確な値がわかっていない密度定数を測定することが、重要な課題ですが、暗黒物質を含めても膨張を止めてしまうほどの物質は存在していないようであり、われわれの宇宙は永遠に膨張し続けるものかも知れません。

 アインシュタインの一般相対性理論によれば、物質ないしはエネルギ-が存在すると、その周りの空間に歪みを生じます。この物質が運動をすると、空間の歪みの様子が変り、それが波として伝搬します。これが重力波です。したがって、中性子星やブラックホールの合体、ビッグバン直後の宇宙初期の状態のような大規模な質量、エネルギーの変動が重力波の有力な発生源と考えられます。重力波の観測から従来の手段(電磁波、ニュートリノ)では得られなかった宇宙物理的な成果が期待されます。しかし、一般相対性理論で予測されてから約80年、実験研究が始まってから約30年になりますが、重力波の直接検出はまだなされていません。その理由として、重力波の効果で生じる空間の歪みが極端に小さいことがあげられます。2点間の距離の変化を精密に測ることにより歪みを検出できますが、歪みの大きさは10-21程度で、これは地球ー太陽間の距離が原子1個分変化することに相当します。重力波観測では微少な距離変化を精密に測るために、実験技術上の極限的な課題をいくつも解決しなければなりません。そのため、レーザーを使った大規模なマイケルソン干渉計が重力波の検出器として活発に研究されています。

 エネルギ-は、いろいろな形で保たれています。例えばボ-ルを投げた時、ボ-ルは腕からエネルギ-をもらって飛んで行きます。この時、ボ-ルは運動のエネルギ-をもっていると同時に、重力によって下に落ちて行くことでわかるように、重力の下での位置エネルギ-をもっています。ボ-ルは飛んでいる間もその質量は変わりませんが、ボ-ル自身の質量(重さ)があり、質量エネルギ-を持っていると言います。ボ-ルを投げるところから、ボ-ルが飛んで行ってどこかに落ちるまでの間、ずっとエネルギ-の総和は変化しません。これをエネルギーの保存則と言います。さて、粒子加速器というのは、粒子に運動エネルギ-を与えて、速度を上げるための装置です。粒子を光の速度近くまで加速して、高いエネルギ-状態にするのが高エネルギ-加速器です。  粒子の加速には、電場を用います。電荷をもった粒子は、電場の中で、エネルギーをもらい速度が高くなります。これは、二つの電極板により電場をつくって、負の電荷をもった電子を穴から電場に入れると、正の電極板に向かって引き寄せられます。この時、電子は加速され、速度を上げて正の電極に向かいます。この時の電子の運動エネルギ-は、電場の中での位置エネルギ-が運動エネルギ-に変えられたものです。 電極間の電圧が 1ボルトの時、電子の得るエネルギーを1電子ボルトと言います。

   1電子ボルト=1eV=1.602×10-19ジュ-ル

 このように、荷電粒子は、電場の中で電場からエネルギーをもらって速度を上げる。これが加速器の原理です。加速器の世界では、エネルギ-は上の電子ボルトで言い表します。

 日常の生活の中でも加速器は使われています。その代表がテレビやパソコンのディスプレー用のブラウン管であり、陰極からの電子が約2万ボルトの電位差の中で加速され、20keVのエネルギーを持った電子ビームとして、ブラウン管の発光面を叩くことで、光を出しています。 粒子を加速するための電場をどのように用意するかによって、各種の加速器が開発されてきました。その最初は、1932年、コッククロフト(John D.Cockcroft)、ウオルトン(Ernest T.S. Walton)によって作られた多段の倍電圧整流回路によって作られた、700kV(キロボルト)の高電圧発生装置によるものでした。粒子は700 keV(キロ電子ボルト)のエネルギ-にまで加速されます。加速電圧のかけ方と粒子ビームの扱いによって、次のような代表的な加速器の種類があります。

 

加速器の種類(加速粒子)

加速電場

ビーム軌道

エネルギー領域

コッククロフト・ウオルトン型加速器 (陽子、イオン)

静電場

直線

2~4 MeV

バンデグラーフ型加速器 (陽子、イオン)

静電場

直線

10 MeV

サイクロトロン (陽子、イオン)

高周波

ら旋

数十 MeV

ベータトロン(電子)

高周波

数十 MeV

シンクロトロン (電子、陽子、イオン)

高周波

1 TeV

線形加速器(電子、陽子)

高周波

直線

数十 GeV

 さらに、加速したビームをどのように使うかということから、リングの中で電子ビームを蓄積して出てくる光を実験に使う放射光実験用加速器とか、粒子同士を正面衝突させる衝突ビーム型加速器(コライダー)などがあります。

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