宇宙の起源

 観測によると、遠くの銀河とわれわれの銀河との距離は、少しずつ増加している。それぞれの銀河は、われわれの銀河との距離に比例する速度で、われわれから後退している。宇宙には、あらゆる銀河がお互いに後退しているという、普遍的な膨張があるのである。この膨張について、時間を逆に見ていくと、すべての銀河がお互いに近づいていくことになる。宇宙の歴史を現在から過去に向かって遡っていくと、銀河はだんだん接近していく。どこまでも遡っていくと、宇宙はどうなるのでしょうか。最後には宇宙の全物質が一点に集められ、宇宙の大きさはゼロにまで収縮してしまう。  

 科学の発達は、物質進化を遡って、宇宙創成の瞬間に次第に近づいてきた。知られている物理法則を使って、普遍的な膨張をずっと遡り、少しずつ宇宙創成の瞬間にまで近づいてきた。現在の銀河間の距離とそれが離れていく速さが分かれば、宇宙の物質が非常に高密度に詰まった最初の状態から、現在の距離に到達するまでにかかった時間を計算することができる。後退速度は距離に比例しているので、どんな距離にある天体をとっても同じ時間になる。計算の結果は、約150億年である。同位元素の存在量から推定される宇宙の年齢や、星の進化の理論に基づく球状星団の年齢からも、宇宙の年齢はほぼこの数字になる。こうして、現在の宇宙の膨張は、すべての物質が非常に高密度に凝縮した状態から始まったと考えられる。宇宙のこの膨張は、約150億年前に起こった「ビッグバン」と呼ばれる巨大な爆発から始まったのである。宇宙は、150億年前のビッグバンよって誕生し、その爆発の中心から投げ出された破片から、宇宙の歴史が始まったのである。  

 宇宙の歴史で重要なことは、それが膨張するにつれて冷却していくということである。時を遡るにつれて、宇宙の物質は圧縮されてだんだん密度が高くなり、高密度の圧縮は大きな熱を生じさせる。宇宙はかつて非常な高温にあり、それ以来膨張しつつ冷却してきたと考えられる。温度が上昇するにつれて、含まれている分子はだんだん早く運動するようになる。物質中の分子は互いに強く頻繁な衝突を行うので、固体は液体になり、液体は気体になる。分子はやがて結合していることができなくなって原子に分解する。宇宙の歴史を逆に見ていくと、ついには銀河はたった一種類の原子の固まりになっていく。  

 ビッグバンにさらに近づいていくと、現在の宇宙とは違った変化が現われてくる。そこまで遡ると、宇宙の温度が極めて高くなり、原子の衝突も激しくなるので、原子核から電子が引き離されて自由に動き回るようになってくる。宇宙の温度が十分高いので、原子核と電子がたまたま出会ってできた原子は、どれも衝突で破壊される。宇宙の温度が下がって、衝突による破壊的な力が相対的に小さくなり、電磁力の引力がこれに打ち勝つようになるまでは、原子の形成は起こりえない。それ以前では原子が存在しなくなり、反対の電荷をもった粒子(自由電子と原子核)がお互いと関係なく自由に動き回る、プラズマという状態になる。  

 プラズマよりもっと以前の宇宙の状況は単純ではない。宇宙の膨張の初期の段階では物質の密度が十分に大きいので、重力だけでなく電気的な力や原子核の力も一役を演じる。それは、宇宙が素粒子の相互作用のみによって支配されている期間である。粒子時代の重要なできごとは、質量とエネルギーの互換性に依存している。もし十分なエネルギーがあれば、それから物質をつくることができるし、逆にもし物質があれば、それをエネルギーに転換することが可能である。孤立している中性子は、ベータ崩壊によって電子とニュートリノを放出して陽子になるが、粒子時代の初期の段階では、ニュートリノが陽子を中性子に、中性子を陽子に容易に転換できるほど、温度が十分高く衝突のエネルギーが十分活発であったと考えられる。

 ここまでの過程は、その現象を実験室(加速器)で造りだして検証することができる。しかしながらそこからさらに遡って、宇宙創成の一瞬にもっと近づいていくと、宇宙の温度が限りなく高くなり、粒子のエネルギーはいくらでも大きくなる。そのような高温や高エネルギーを実験室で再現することは、残念ながらできていない。それ以前の宇宙は、人間がいまだ実験的に経験したことがなく、そしておそらくは実現不可能なエネルギーと温度の領域になる。そこに存在していた物質がどんなもので、そこでどんなことが起こっていたのか、確実なことはわかっていない。したがってそれ以前の宇宙のことは、物質とエネルギーについての理論的な思考だけを指針として考えざるを得ない。  

 科学の知識の最前線は、宇宙の創成のときに向かって急速に発展してきた。時間を遡るにつれて実験的な証拠が少なくなり、理論の確実性が減少しはするが、既に宇宙創成から10-35秒か10-43 秒後までは近づいてきたといえる。しかしながら現在の知識によって、宇宙創成の一瞬(宇宙創成からの経過時間がゼロ秒の時点)にまで遡ることはできない。10-43秒(プランク時)以前では空間自体が揺らぐため、一般相対論と量子力学をあわせた理論が必要であるが、量子重力理論はできていない。そこに到達すると何を見ることになるのか、また、そもそも原理的に創成の過程そのものを理解することができるのかどうかは、今のところ想像の域を大きく出てはいないように思われる。

 我々の住むこの宇宙は、約137億年前の ビッグバン(Big Bang)と呼ばれる大爆発から始まり、現在も膨張していると考えられています。つまり最初は非常に高温かつ高密度の状態で、星も生命も存在しない素粒子が飛び交う状態であったのです。膨張とともに温度が冷え密度も下がり、現在我々が目にする様々な物質や天体が形成されてきました。

 現在知られている4つの力(重力、電磁気力、弱い力(弱い核力)、強い力(強い核力))が分離したのも、この宇宙のごく初期のころのことだといわれている。まず、ビッグバンの10-44秒後(宇宙の温度は1032Kくらい)に重力が別れ、ついで10-38秒後(宇宙の温度は1029K)に強い力が別れ、最後に(10-11秒後、1015K)に弱い力と電磁気力が別れ、今日の宇宙のようになったと考えられている。

 これらの4つの力を統一的に説明しようとするのが「超大統一理論」である。

 

ビッグバンからの宇宙の歴史

 ビッグバンから10-43秒後になって、時空の量子的揺らぎの時代が終わった。この時の宇宙は大きさが約10-4cm程度で、衝突のエネルギーが1019GeV(ギガ電子ボルト)に下がり、統一された一つの力から、重力が分離された。それでもこの時代の物質は、フェルミオンとボソンの二種類しか存在しない簡単なものであった。温度は1018Kもあり、エネルギーは1015GeV以上あるので、弱電力と強い力は統一されており、したがって、弱い力しか感じないレプトンと、強い力も感じるクォークも統一されていた。そこではクォークがレプトンに、またはその逆に変わる現象が可能であった。交換可能な粒子は区別できず、実際上同一と考えられる。

 10-35秒後に、宇宙は約1cmほどに膨張し、温度は1026Kまで下がり、衝突エネルギーが1015GeVくらいになって、強い力が弱電磁力と分離した。それ以下のエネルギーでは、自発的対称性の破れの効果が現われ、強い力は弱電力と違ってみえるようになる。衝突のエネルギーが統一に必要とされるエネルギーよりも少なくなると、二つの力の統一が失われるのである。非常な高温のもとで同一であった力は、温度が下がると自発的対称性の破れを経て、別個のものとなっていく。クォークとレプトンが相互に転化する反応が凍結されて、クォークとレプトンの区別が生じた。その際に、粒子と反粒子の対称性が破れ、粒子と反粒子の数にわずかな差(10億分の1)が生じて、現在の物質宇宙のもとができた。ほとんどすべての粒子と反粒子が対消滅し、その数のわずかな差の部分が、宇宙の物質として後に残された。

 10-16秒後に、宇宙は約3億kmまで膨張し、1016Kまでに冷却されて、衝突エネルギーが100GeV以下になり、弱い力と電磁力が分離した。弱い力と電磁力を担う四つの粒子の対称性は、衝突のエネルギーに比べて質量を無視してよいような、非常な高エネルギーの状態で見られものである。この対称性は温度が下がるにつれて自発的に破れ、相転移が起きて、四つの粒子のうち一つは質量のない光子になり、他の三種が、質量をもったW粒子とZ粒子になった。この理論は、電磁気力と弱い力を同じ粒子族の交換の結果として統一する。温度が非常に高くて80から100GeVのエネルギーが得られると、この二つの力は同一となるのである。  対称性の自発的な破れや相の転移という概念は、極めてわかりにくい。つぎのような比喩が説明のために用いられている。液体の水が相転移して固体になると、液体のときに水分子の配置がどの方向でも区別がつかなかった(すべての方向に対称性があった)ものが、氷では結晶の軸の方向とそうでない方向とで対称性が破れる。相転移とは、圧力や温度に応じて、固体、液体、気体の状態変化のように物質の対称性が変わる現象である。凍結という言葉は、このような意味での比喩的な表現である。

 10-16秒と0.001秒の間に、高温のクォークの海からから素粒子が凝縮され、それまでは単独で存在していたクォークが、中間子とバリオンに閉じ込められた。0.0001秒後の温度は一兆度であった。温度が下がるにつれ、陽子を中性子に変えるのに必要なエネルギーが得られなくなり、陽子が増えてくる。さらに時間が進むにつれ、中性子は自然に崩壊して減少し、やがてすべての中性子が崩壊するか原子核に束縛されていった。また、この時期には、光子のエネルギーが十分高いので、何百という別の種類の素粒子も作り出された。そのような素粒子はすべて不安定で、中性子よりもずっと早く崩壊する。これらの粒子はいろいろな組合せに崩壊していった。このとき存在した主な粒子は、陽子、反陽子、中性子、反中性子、電子、陽電子、パイ中間子、光子の8つであった。ほぼ同数存在していた反粒子と粒子のほとんどが対消滅して、後に残されたわずかの過剰粒子が現在の宇宙のもとになった。

 10-11秒後(温度10+15度の頃)、ワインバーグ・サラム理論の相転移が起り、電磁相互作用と弱い相互作用が分離しました。

 ここまでの過程で物質と反物質のつりあいに小さなズレが生じたと考えられています。元々は、物質と反物質は同等に存在したはずであるが、CP対称性(電荷と空間反転に対する物理法則の対称性)の破れをもった相互作用と非平衡状態の組合わせにより、ほんのわずか物質の方が反物質より多くなり、結局現在の宇宙を物質の世界へと導いたのです。(Bファクトリ-実験)

 ビッグバンから0.01秒後、宇宙の温度は1000億Kにまで下がった。この頃まで、電子と陽電子の生成消滅の反応があり、ニュートリノが電子や陽電子と反応していた。

 1秒後、宇宙の温度は約100億Kで、その大きさは数億光年(現在の30億分の1)程度になり、ニュートリノは、そのエネルギーが減少してすべての粒子と反応しなくなった。

 1分後、温度10+9度になると、中性子と陽子が反応してできる重水素が分解されないで残ることができるようになるので、それを種とした核融合反応が進み始め、ヘリウム、リチウム、ベリリウムと言った軽い原子核が合成されます。このような宇宙初期の軽元素合成は、理論計算の結果と観測値がほぼ一致し、ビッグバン宇宙モデルの重要な証拠になっています。

 その後も、軽元素の原子核、電子、ニュートリノ、光子からなる宇宙は、膨張とともに温度が下がった。

 それから10万年以上にわたり、水素核、ヘリウム核と電子が混ざったプラズマ宇宙が膨張を続けた。現在の宇宙の主成分は、7~8割の水素と2~3割のヘリウムであり、これらの水素とヘリウム核はビッグバンの数分後につくられたものである。

 宇宙が膨張して温度が1万度以下になると、ヘリウム原子核が自由電子をとらえ、約20万年後の4,000K程度に下がるころまでに、水素原子核が自由電子をとらえた。素粒子は原子核や原子を形成する能力をもっており、それ自身の性質によって次々と原子を形成し、わずかな粒子が原子を造らずに取り残された。

 20万年が経過して、自由電子と原子核から原子が形成され、プラズマの時代から現在の原子の時代が始まった。宇宙の現段階は、熱いプラズマが原子に凍結することから始まったのである。  水素とヘリウム原子が一様に薄く広がった宇宙で、複数の原子がその運動によって普通より接近してくることがある。こうなると、それは近くの原子に普通よりいくぶん強い引力を及ぼして、新たな原子を引っ張り込む。星雲の中のほんの少しの物質の偏在が、次第に回りの水素ガスを寄せ集め、原子を一か所に集中させていく。十分な物質が一点に集まると、その合成の重力によって付近の物質をさらに強く引き付け、それによって重力はもっと強くなる。原子は原子同士で衝突して分子になり、分子が集合して物質ができてきた。原子は分子を、分子は物質を造る性質を本来もっており、この過程はまったく自動的に行われた。

 こうして、物質は重力の影響を受けて局所的に集まり始め、別々の物質の集団に分離していく。星雲の中にできた小さな塊は少しずつ成長し、それにともなって中心に加わる圧力で温度が次第に上昇していく。やがては中心部で核融合反応が始まり、ついには恒星が誕生する。これらの集団が銀河を形成し、ビッグバンから10億年ほど経って銀河系が形成された。大きな質量を引き寄せる重力の力によって、銀河や銀河内部の星が形成されてきたのである。銀河と星が形成された後に、恒星の内部での核融合反応や超新星爆発によって、水素とヘリウム以外の元素が合成された。このようにして造られたそれらの元素は、現在の宇宙にほんの微量しか存在してない。これらの元素の存在量が、ビッグバン理論の一つの検証になっている。また、現在の宇宙の温度は約3Kであり、これが背景輻射として観測されていることも、この理論の有力な証拠となっている。

 宇宙の温度が高いときは、原子核や電子はばらばらに飛び回るプラズマ状態であった。自由に動き回る電子は光を反射する。金属も自由電子があるので光を反射する、また自由電子があるので電気を伝える性質がある。

 ビッグバンから30万年くらいたつと、宇宙の温度は4000K(ケルビン)から3000Kくらいまで下がる。このくらいの温度になると、それまで自由に飛び回っていた電子が、水素やヘリウムの原子核に捉えられて、水素原子やヘリウム原子ができる。すると、それまで電子によってじゃまをされていた光子がまっすぐに進める(直進できる)ようになる。これが「宇宙の晴れ上がり」である。宇宙が透明になったということである。

 この水素原子や、ヘリウム原子から原始銀河、さらには恒星や惑星が誕生していくことになる。

 

 以上のようにして、現在の宇宙ができてきた。素粒子も物理法則も、宇宙の歴史的な産物である。ビッグバン以来、宇宙は温度が下がるごとに次々と相転移し、新たな粒子が生成され、そして力が分化してきた。宇宙の物質は、クォークや素粒子から超銀河団にまで進化し、四つの基本的な力も、宇宙の最初に分化してできたものである。それ以来の宇宙には、膨張ということ以外のどんな根本的な変化も起きていない。宇宙のほとんどの生涯は、その最後の段階である今の時代が占める。ここで星が生れ、地球が形成され、生命が育まれてきたのである。

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