合算対象期間 詳しい解説

 ここでは、主に昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間の合算対象期間のなかで、任意加入しなかったが、合算対象期間となれるものについて、詳しく見ていこうと思います。

・厚生年金保険、船員保険及び共済組合の加入者の配偶者で、国民年金に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 保険料を納付した期間と免除された期間を合算して10年に満たない場合に、婚姻して配偶者の健康保険の扶養になっていた期間を合算対象期間とするのが最も考慮される期間です。

 夫が厚生年金加入者の場合、妻は、昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間は適用除外とされ、国民年金への加入は任意でした。よって、その任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間は、合算対象期間となります。(昭和61年4月1日以後、第2号被保険者の被扶養配偶者に該当する者は、第3号被保険者となります。)

 この期間は国民年金の加入は任意ですから、国民年金の保険料の免除申請をされたような方が見受けられますが、この免除期間は修正されることがあります。

 ところで、ここで言う期間は、配偶者が厚生年金に加入していた期間のみのカウントです。ところが、配偶者が厚生年金に加入していなくても、合算対象期間とできる期間があります。それが次の要件です。

・被用者年金各法の老齢・退職給付、障害給付、遺族給付の受給権者の配偶者で、国民年金に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 国民年金では、昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間は、被用者年金各法に基づく老齢または退職給付、障害給付、遺族給付の受給権者と配偶者は適用除外とされ、国民年金に任意加入できる仕組みをとっていました。そのため、これらの方のうち、昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間で任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間は、合算対象期間となります。

 たとえば、夫が昭和61年3月までの(旧法の)老齢厚生年金を受給していた場合、この老齢厚生年金を受給していた期間をカウントできます。配偶者が厚生年金に加入していない期間もカウントできるわけです。ここは大抵のかたが知らなくて、盲点となっております。

(旧法の)老齢厚生年金だけでなく、夫が障害給付や遺族給付の受給権者であった期間もカウントできます。ただ、遺族給付の受給権者となると、子か孫の死により父か祖父母である夫が受給者と限定できますが、その時は妻も受給者というわけです。遺族給付の受給権者としての合算対象期間のカウントは実際は考えにくいものです。

・被用者年金各法の老齢・退職給付、障害給付、遺族給付の受給権者で、国民年金に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 老齢年金の受給権者と聞くと、違和感を覚える方もおられると思います。「既に老齢年金を受給しているのだから、合算対象期間を議論する必要はないではないか」と。ところが、旧法の老齢厚生年金は5年や10年の加入で受けられておりましたが、昭和61年4月以降に国民年金の加入がある場合の老齢基礎年金を受給するには、合算対象期間を含めて25年以上必要であったため、その確認に必要であったのです。

・学生(夜間制、通信制、各種学校を除く)であって国民年金に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 学生は、平成3年4月1日から国民年金に強制加入となりました。それ以前は、本人に概ね保険料の負担能力がないことから適用除外とされ、国民年金への加入は任意でした。そのため、昭和36年4月1日から平成3年3月31日までの間で任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間は、合算対象期間となります。

・厚生年金保険・船員保険の脱退手当金を受けた期間

旧厚生年金保険法では、保険料の掛け捨てを防止するため、一定の要件を満たす者に対して脱退手当金が支給される場合がありました。昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間のうち、昭和61年4月1日前に厚生年金保険の脱退手当金を受けた方の、その脱退手当金の計算の基礎となった期間は、合算対象期間となります。ただし、合算対象期間となるのは、昭和61年4月1日以後65歳に達する日の前日までの間に保険料納付済期間、または、保険料免除期間を有する者に限ります。

外国人または外国人であった方で、昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方、または、永住許可を受けた方

(1) 昭和56年12月までに来日し、昭和56年12月までに日本国籍の取得または永住許可を受けた場合

 日本国籍の取得または永住許可を受ける前日までの期間が合算対象期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

(2) 昭和56年12月までに来日し、日本国籍の取得または永住許可を受けたのが昭和57年1月以降の場合

 昭和56年12月までの期間が合算対象期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

(3) 昭和57年1月以降に来日し、日本国籍を取得した方または永住許可を受けたのが昭和57年1月以降の場合

 日本に上陸する前日までが合算対象期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 日本国籍を取得または許可が昭和61年4月以降であった場合も、日本に上陸する前日までが合算対象期間となります。

 日本国内に住所を有する外国人は、昭和57年1月1日から国民年金に強制加入となりました。昭和36年4月1日から昭和56年12月31日までの期間は、日本国籍を有する方以外は、日本に来ていても、国民年金に加入することができませんでした。昭和36年5月1日以後、20歳に達した日の翌日から65歳に達した日の前日までの間に日本国籍を取得した方、または、永住許可を受けた方などが日本国内に住所を有していた期間のうち、適用除外とされていた昭和36年4月1日から昭和56年12月31日までの20歳以上60歳未満の期間が合算対象期間となります。

 また、中高齢となってから日本国内に住所を有することになった者の場合を考慮して、昭和36年4月1日から日本国籍を取得した日等の前日までのうち、日本国内に住所を有していなかった期間(20歳以上60歳未満)も合算対象期間となります。(厚生年金保険法昭 和60年改正法附則 第8条第5項第11号)

注意

 在日外国人の人が国民年金に加入出来なかった間の在日期間で、昭和36年4月1日から昭和56年12月までの20歳以上60歳未満の期間はカラ期間とされます。

 日本に上陸した日以降は、基本的に国民年金間被保険者になります。永住許可までない方が、日本に上陸してから昭和56年12月までの期間をカラ期間とできるわけです。

 これらにおいて、海外在住機関、日本に上陸した日を確認するために、20歳以降の出入国を確認できるパスポートが必要になります。

 当時のパスポートを紛失している場合、出入国管理在留管理庁にて外国人登録原票を取得するか、出入国管理記録を入手して日本に上陸した日を確認することになります。

出入国管理在留管理庁に出入国管理記録を請求する場合→日本上陸の時期が確認できない場合

 外国人の出入国記録は、「出入国管理マスタファイル」で昭和45年11月以降の管理をしています。なお、昭和45年(1970年)10月前の記録については確認できないため、昭和45年10月以前に帰国した場合の把握はできない。このような場合、昭和45年10月以前の期間は合算対象期間と認められないことになります。

在留資格における「永住者」と「特別永住者」

 日本に在留している外国人の中には、「永住権」を得ている永住者や「特別永住権」を得ている特別永住者がおられます。

永住者

 永住者は、「出入国管理及び難民認定法」に基づき、原則10年以上継続して日本に在留していて、下記の3つの要件を満たす外国人が対象となります。(日本人と結婚している場合は3年で良いなどの特例あり)

 1.素行が良好であること

 2.独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

 3.その者の永住が日本国の利益に合すると認められること (ただし、日本人・永住者または特別永住者の配偶者またはその子の場合は、1及び2に適合することを要しない)

 上記に該当する方が「永住許可申請」をして法務大臣から許可されると、「永住権」を得ることができます。

「永住許可申請」は、居住地を管轄する地方入国管理官署に申請します。「出入国管理および難民認定法 第22条2項」を基に審査の結果、法務大臣から許可されます。

 なお、永住者は在留資格の更新が不要です。

特別永住者

 1991年(平成3年)11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に定められた在留資格を有する者を、特別永住者といいます。(「出入国管理及び難民認定法」、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱したもの等の出入国管理に関する特例法」に基づく。)

 第二次世界大戦中に、日本の占領下で日本国民とされた在日韓国人・朝鮮人・台湾人の人たちが、敗戦後の1952年のサンフランシスコ平和条約で朝鮮半島・台湾などが日本の領土でなくなったことにより、日本国籍を離脱しました。その在日朝鮮人・韓国人・台湾人とその子孫について、日本への定住などを考慮したうえで永住を許可したのが特別永住権です。

 特別永住者証明書の交付申請をして法務大臣から許可される。

 申請先は、在留資格が地方入国管理官署なのに対し、特別永住者証明書の交付申請は居住地の市区町村窓口になります。

 特別永住者は、働かず生活能力がなくても、犯罪歴があっても、日本に住み続ける権利を法律が保障している。

 特別永住者は、昭和36年4月から昭和56年12月末の期間がカラ期間?

・国民年金に任意加入したが保険料が未納となっている期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 任意加入未納期間は、年金機能強化法に基づき、平成26年4月1日から、合算対象期間に算入されることになりました。

 従来は、任意加入被保険者が保険料を納付しなかった期間は未納期間とされ、受給資格期間に算入されませんでした。合算対象期間に算入される任意加入未納期間は、基礎年金制度導入前の被用者年金制度の加入者の配偶者が、国民年金に任意加入したが保険料を納付しなかった期間や、基礎年金制度導入以後の海外居住者が、国民年金に任意加入したが保険料を納付しなかった期間などが該当します。

 なお、平成26年4月1日前の任意加入未納期間は、平成26年4月1日に合算対象期間に算入されて、それから受給権が発生するということがありました。なお、過去に遡っては算入されたわけではありません。

(昭和61年4月1日以降の)・第2号被保険者としての被保険者期間のうち、20歳未満の期間又は60歳以上の期間

 国民年金の保険料の徴収は昭和36年4月1日に開始され、被保険者の範囲は20歳以上60歳未満の者とされたことから、老齢基礎年金の額は、すべての人が公平に昭和36年4月1日以後の20歳以上60歳未満の期間を基礎として、計算されなければなりません。このため、第2号被保険者の被保険者期間や被用者年金制度の加入期間を保険料納付済期間に算入する場合は、公平を期すための措置が必要となります。

 第2号被保険者の被保険者期間のうち、保険料納付済期間となるのは20歳以上60歳未満の期間に限ることとされているように、被用者年金制度に加入していた期間でも一定の期間は、合算対象期間となります。

 第2号被保険者としての被保険者期間のうち、合算対象期間となるのは、昭和61年4月1日以後の期間で、20歳未満と60歳以上の期間です。第2号被保険者の20歳未満と60歳以上の期間は、基礎年金拠出金の算定対象に含まれていないことから、この期間を合算対象期間とすることで、費用負担の面での公平性が図られています。

・日本人であって、海外に居住していた期間のうち国民年金に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間に限る)

 海外に在住する日本国籍を有する方は、制度が改正されて、昭和61年4月1日以後国民年金に任意加入することができるようになりました。そこで、海外に在住する日本国籍を有する方については、昭和61年4月1日以後で任意加入しなかった期間のうち、20歳以上60歳未満の期間も合算対象期間となりました。

 それ以前の適用除外期間、つまり国民年金に任意加入できなかった昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間のうち、20歳以上60歳未満の期間も含めて合算対象期間となります。

 日本に住民票を残したまま海外へ移転した場合、出国後の海外機関は国民年金の第1号被保険者として取り扱われる。パスポートの持参があっても合算対象期間に参入できない。

 日本の住民票登録を削除し海外へ移転している場合、住民票にて出国が確認できるので、合算対象期間に参入できる。

 戸籍の附票が廃棄されている等、日本に住所を有していたことが確認できない場合で、パスポートや滞在国が交付した居住証明等により、海外に1年以上居たことが確認できたときには、その1年経過後の13ヵ月目から合算対象期間とすることができる。その13ヵ月以降の期間が、それ以前の期間から引き続いて国民年金第1号被保険者(さらに未納期間であること)となっているときは、事後的に住民票の記載を修正できた場合は、合算対象期間として扱うこととしている。なお、出国して1年は、国民年金の第1号被保険者として取り扱われる。

 

 合算対象期間は、老齢年金の受給資格期間10年を満たすか否かを見るだけでなく、遺族年金の受給期間を見る場合にも利用されます。遺族年金の受給資格は、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせて25年以上あるか否かを見ることになります。