企業の目的と使命

企業の目的

 ドラッカー曰く、企業の目的は「顧客の創造」である。そして、企業が何であり、何を生み出すかを規定し、企業が成功するか否かを左右するものは「顧客」である。顧客のみが雇用を創出し、企業の成功と存続をもたらしてくれる存在である。

 この本質が理解され、企業文化として社員に浸透していれば、あえて「顧客第一主義」と謳わなくても当たり前のように顧客重視の姿勢が生まれる。

 ところが、現実にはあらゆる組織が内部のことに忙しく、顧客に焦点を合わせることができないでいる。マーケティングにおいても、顧客視点で求められる商品・サービスというよりも販売視点で「売るための商品・サービス」に重点が置かれている。即ち、自社都合の判断が優先された商品・サービスとなっている。

「天動説」ではなく「地動説」

 ドラッカーの経営思想の原点は、顧客が中心にいるという事実にある。顧客がいて企業が存続できる。商品・サービスは、企業の側から見ると「売れている」と思われるが、実は顧客によって買われているのです。

 企業がニーズを発見し、商品・サービスを企画・開発し、提供してはいるが、企業が中心ではない。あくまで顧客が中心である。そのためのマーケティングであり、イノベーションであり、マネジメントである。

 経営トップの役割において、すべては顧客を理解することから始めなければならない。そして、顧客にとっての価値を創造することである。

 顧客の声に耳を傾け、顧客が価値とみなすものを知り、次に顧客にとっての価値を客観的な事実として受け入れ、それを社内のあらゆる検討と意思決定の基盤とすることである。まさに「顧客第一主義」である。

 顧客に価値あるものを供給し、顧客を満足させることが企業としての成果とすべきものである。その結果として、顧客の創造(企業の目的)に繋がり、売上や利益がついてくる。

顧客についての四つの問い

 「顧客第一主義」といっても、あらゆる顧客を満足させることはできない。誰をも喜ばせることが大事なのではなく、大事なことは、対象とする顧客を深く喜ばせることである。したがって、行うべきは対象とする顧客の定義である。

 ドラッカーで有名な顧客について、四つの問いを発しなければならない。 1 われわれの顧客は誰か? 2 顧客にとっての価値は何か? 3 あなたは何を成果とするか? 4 あなたの顧客戦略は何か?

 まさに、ドラッカー流マーケティングの基本である。 「われわれの顧客は誰か?」 これは、「あなたの会社は、誰を満足させたとき、成果を上げたといえるか?」という質問の答えが、そのまま顧客は誰かを教えてくれる。

 この「われわれの顧客は誰か?」という質問に答えることによって、顧客にとっての価値を知り、組織にとっての成果を知り、行動のための計画を立てることができる。

 われわれの顧客は誰かを繰り返し考え続けなくてはならない。なぜなら、顧客は常に変化する。成果をあげるには、原則に忠実でありつつも、顧客の変化に応じて自らを変化(イノベーション)していくことができなければならない。(『経営者に贈る5つの質問』より)

 顧客にいかなる価値を提供できるかは、経営トップ自身が顧客に何を問い、その答えをどう解釈し、いかにイノベーションするかにかかっている。このような顧客中心の考え方、アウトサイド・インの考え方が、「顧客第一主義」の本質であり、そしてマーケティングの基本である。

 また、ドラッカーは「顧客の創造」とは別に次のように述べている。

 第一に、経済的成果、即ち市場に商品やサービスを提供し、利益を上げること。

 第二に、非経済的成果として、従業員の幸福や地域社会や国家への貢献がある。

 

企業の使命

 企業の使命は社会や国家を経済的繁栄に導くことである。

 経営者たる者、正しい経営を目指すとともに、公(おおやけ)に奉仕する気概・精神をも持たなければならない。

 経営者はこのような使命を背負って経営しなければならない。大きな気概をもって、使命感をもって、企業は黒字を出し、社会や国家の発展・繁栄に貢献しつつ 前に進まなければならない。