「顧客第一主義」の本質

 「顧客第一主義」を経営理念や経営方針として掲げている企業は多い。しかし、経営者自身がその本質を理解しているかどうか疑わしい。

 

「顧客第一主義」とサービス・マインド

 多くの企業が「顧客第一主義」とともに「顧客満足度」を重要テーマに掲げている。

 事業の目的は「顧客の創造」である。従って、すべての活動が顧客を中心にしたものでなければならない。そして、顧客に価値あるものを供給することが企業の目的であり、顧客を満足させることが企業としての成果である。顧客を第一に考えるからこそ、わが社が提供した製品やサービスが顧客に満足を与えているかを常に考えていなければならない。そして、「顧客満足度」を向上させる鍵を握るものが何かというと、それは顧客サービスを行う人たちのマインドではないでしょうか。

 どのようにしたら相手に喜ばれる製品やサービスを提供できるか。それは、相手のニーズに応えるときの「心遣い」にあるのではないか。

 お客様や上司など他の人々のニーズに良く応えるということは、ある意味でのサービス・マインドである。真心を込めて仕事をする、すなわち、製品を企画し、製造し、サービスを提供する。他の人を気遣う心。所謂、他の人のニーズに、知恵、技術、感性、ユーモア、遊び心などを真心を込めて提供する。この様に、真心を込めた仕事が相手に喜ばれ感動を与えるのではないだろうか。

 「顧客の喜ぶ顔がみたい」 そのために心を込めて仕事(営業、開発、サービス、諸業務)に打ち込む。これがサービス・マインドであり、顧客満足度向上に繋がる鍵である。これが、口コミや評判となって広まっていくことに繋がっていく(顧客の創造)。

 一般的なマニュアルによる顧客サービス(マニュアル主義)だけでは駄目である。顧客に喜びや感動を与えるためには、もう一歩踏み込んだサービスが必要である。これは、各個人の心から出てくるものである。この各個人の心の表れである心遣いが顧客に喜びと感動を与える。

 最高の「サービス・マインド」とは、「お客様に喜んでもらいたい」という心のこもった愛の念いである。

 

顧客サービス  熱狂的ファンをつくる秘訣

 「顧客満足度」について、ファン顧客やリピータ顧客を獲得するにはどうしたらよいか。単にお客様が満足しているといってもそれで十分ではない。それでは顧客をつかんでいることにはならない。ほかにもっと良いところを見つけたらさっさとそちらに行くでしょう。本当に顧客を「つかむ」ことを望むなら、単に満足した顧客で良しとするのではなく、熱狂的なファンにしなくてはならない。そのためには、まず自分が何を望むのかを決めなければならない。即ち、ビジョンを明確にしなければならない。自らが描くありたいビジョンである。自分が望むものを決めるには、顧客を中心にした完全なビジョンをつくらなければならない。自分の考えを基に、自分が望む世界像をつくることである。この場合、自分自身が完全である必要はない。空想ではあるが、顧客を中心にした完全な世界を考えるのです。

 このようにビジョンをつくり、それを現実の在り方に当てはめてみる。そうすると、やらなければならないことや何処に障害があるかなど、理想と現実のギャップが分かってくる。

 次にやるべきは、顧客の望むことを知ることである。しかし、すべての人の全ての望みに応えようとしてはならない。顧客サービスとは、顧客のあらゆる気まぐれに応えることではない。それは無理なことである。

 最初に描いたビジョンに沿った顧客サービスの範囲を決める必要がある。ここで、ドラッカーの顧客についての四つの問いが出てくる。

 まずは「われわれの顧客は誰か?」である。 次に「顧客にとっての価値は何か?」で、「顧客の望むことを知る」に繋がる。これは、マーケティングにおける知覚である。

 そして、最初に描いたビジョンと顧客の望んでいることのギャップを埋めていく。ここでの注意事項は、顧客にとっての優先事項は、自社にとっての優先事項とは違うということである。あくまで顧客中心でなければならない。

 顧客サービスにとってもう一つ必要なことは、「もう一つ余計に実行せよ」(プラスアルファの努力、プラスアルファのギブ)である。そして、実行したことの「一貫性」が不可欠である。この「一貫性」が信頼を生む。この「一貫性」担保するには、システムが必要となる。システムであってルールではない。ルールは、ロボットをつくる。システムはある成果を得るための仕組みのことである。そして、大切なのは、成果を得ることで、システムを守ることではない。システムは環境に合わせて変化させること。