サバクトビバッタが中国を襲う

 サバクトビバッタは、2018年にアラビア半島を襲ったサイクロンによって異常発生し、その数は4月18日時点で、数千億匹と推定されている。

 このバッタが農作物を食い荒らす「蝗害」は、エチオピアやジブチが過去25年、ケニアが過去70年で最悪となった。

 

1日で3.5~100万人の食料を奪う

 サバクトビバッタは、過去、たびたびアフリカ、中東、アジアに被害を与えてきた。このバッタは普通のバッタと比べて体が大きい。成虫のオスの体長は4~5センチメートル、メスの体長は5~6センチメートルである。

 飛行スピードが速く、移動距離が長い。1日に約150キロメートルも行軍する。毎日、自分の体重分の約2グラムを食べるという。もし、現在の勢力を保てば、1日、最低でも約3.5万人の食料(約100万人の食料説もある)を食い荒らすと言われる。

 サバクトビバッタの一部は、すでに東アフリカへ侵入し、ケニア・エチオピア・ソマリアなどに甚大な被害を与えた。他方、別の一部が、目下、東へ向かって進軍を続けている。縦60キロメートル、横40キロメートルにもおよぶ大軍団である。向かう先は中国である。

 

中国襲来のXデーは2020年6月?

 ハッピー・サイエンス・ユニバーシティで昆虫食などを研究する木村貴好アソシエイト・プロフェッサーはこう話す。

 「サバクトビバッタの成虫は、全長5センチメートル前後で、1日に100キロメートル以上移動できます。普段はおとなしい虫ですが、密集状態を経験すると体の色が変化し、翅の長い個体になります。これを『相変異』と呼びます。なぜ人間活動に実害を及ぼすまで性質や生態が変わるのか、まだ未知の部分があると考えます。

 これまで中国を襲ってきたのは、トノサマバッタであり、サバクトビバッタの例はありません。サバクトビバッタが襲来すれば驚天動地の事態となります」

 科学でも分からない未知の脅威が中国に迫っている。サバクトビバッタは6月までに襲う可能性があります。小麦などの収穫時期を直撃し、穀物市場は大混乱するでしょう。

 実際、中国の国家林業草原局は、雲南省やウイグル、チベットなどに侵入する恐れがあると見て対策に入った。

 

バッタの襲来は「天罰」が常識

 古来、バッタの大群は「天罰」として人々に恐れられてきた。世界的に有名なのは、旧約聖書の「出エジプト記」の話である。

 紀元前13世紀ごろ、指導者モーセは、エジプトで迫害を受けていたイスラエル民族を解放し、新しい国をつくるため、民とともにエジプトから脱出。その際、神はエジプトに「十の災い」をもたらし、その一つとしてバッタが大量発生したという。

 「十の災いのうち、半分は生物です。バッタのほかに、虻や蛙などの群れも発生したと言います。

 日本では、一般的に台風や地震などが天罰とされます。ユーラシア大陸とその縁とでは、天罰の種類が違うのかもしれません」

 中国では、蝗害は水害と干ばつと並ぶ三大災害とされる。

 かつて蝗害による餓死者は、943年に数十万人、946年には100万人に達した。食べ物がなくなれば、「親が子を食らう」「墓を掘り返し、死体を食らう」などの凄惨な事件が起きたと言い伝えられている。

 古代王朝・殷の時代には、トノサマバッタが北方の寒地である北京にまで押し寄せた記録まである。今回のバッタ軍団は、種類が違うとはいえ、その可能性は捨てきれない。

 儒教では、「およそ天変地異のもとは、ことごとく国家の失に生ずる」(『春秋繁露』)と考えられ、天災の原因は為政者にある、という思想がある。

 『貞観政要』には、唐の皇帝・太宗が自身の政治のあり方を反省し、蝗害をなくしたエピソードがある。太宗はバッタ被害の拡大に頭を抱え、現場に赴く。庭を埋め尽くすほどの大群を見て、数匹を拾い上げると、そのバッタにこう語りかけた。

「国民の大切な穀物を食べ尽くしてしまうと、どれほどの害を与えてしまうだろう。国民に何か落ち度があったなら、罪は皇帝である私にある。できるなら、民の穀物を食べる代わりに私の内臓を食べてくれ」

 そう語りかけた太宗は、バッタを丸呑み。天は太宗の姿に感動し、やがてバッタの大群は姿を消したという。

「国難に際しては、為政者が謙虚に反省する」のが、中国の伝統的なトップの姿である。

 

中国でバッタの被害が広がれば何が起きるのか

 バッタの大群が中国に襲来すれば、小麦などの穀物価格が急騰し、世界的な食糧危機が起きることが予想されます。

 例えば、2008年、トウモロコシなどを原料とするバイオ燃料に注目が集まった際、トウモロコシの価格は約2倍に高騰。これにより発展途上国を中心に食料が高すぎて買えなくなる現象が起き、飢えに苦しむ約8億人が危機に直面しました。多くの国で食料をめぐる暴動が起きたことは記憶に新しい。

 中国政府が安定供給のために指定する穀物は、コメや小麦、トウモロコシ、大豆、イモ類です。それらをできるだけ自給する体制を整え、昨年の生産量は約6億6千万トンでした。政府が抱える穀物の在庫も、約2億トンに上ります。

 もし、バッタが中国の穀物生産の2割に被害をもたらせば、生産量は1億3千万トン余り消えます。政府は在庫を放出し安定供給に努めるでしょう。

 同時に、放出した分の在庫を補充しようと世界中で手当たり次第に穀物を買い漁ります。

 特に、大豆の場合、中国国内の需要1億トンに対し、生産量は1600万トン前後です。大半を輸入で賄っているため、供給不足になりかねません。

 ですが、貿易で取引される穀物の総量はそれほど多くないので、中国の買い占めにより、一気に価格が高騰するでしょう。その影響で、トウモロコシなどをエサにする牛や豚などの価格も値上がりする可能性があります。

 バッタの被害で穀物の生産が2割減れば、習近平政権の転覆が十分に起こり得るのです。

 中国の歴史では、バッタの被害によって時の政権が滅びることはよくあります。中国の人民はデジャヴ(既視感)で、王朝交代を想起するはずです。

 そうなると、当然日本にもバッタによる食糧危機の影響が飛び火し、食品などの値上がりに直面します。不景気に突入する中で物価も高くなるという「スタグフレーション」が起きかねません。

 日本政府は食料の増産方針を打ち出すでしょうが、第一次産業は高齢化などで弱体化しています。コロナ問題の煽りを受けて外国人労働者も減っており、一部の地域では、農業や水産加工業の人手不足が起きています。

 日本はこれまで軽視してきた食糧安全保障を見直すべきでしょう。

自国の食料は自国でつくる

バッタが中国に襲来すれば、どれぐらいの被害が起きるのか

 数千億匹に襲われたパキスタンの例をもとに試算すると、同国では、農作物全体の約15%が被害に遭い、最も被害が大きかった地域で40%も消失することになる。

 試算では、バッタが中国に侵入する地域は西南、中南、華東の3つと想定。ここで作られる穀物(小麦、コメ、トウモロコシ)は全体の約60%を占める。

 これらを前提にシミュレーションを行った結果、パキスタンで生じた15%の被害と同規模の蝗害が起きれば、中国の穀物が9%消える。さらに、40%の被害と同等だった場合は、穀物が24%も消えることが判明した。

 「中国の穀物が2割減れば、習政権が転覆する可能性」は起こり得る。

 別の角度からも試算してみる。国連食糧農業機関での さまざまな条件をもとに、中国を襲うバッタは2兆匹と仮定する。理論上、2兆匹が穀物の1割を食い荒らすには最短で約82日かかる。習政権の転覆ラインである2割に達するには約165日となる。

「バッタは165日も生きられない」と思う人もいるでしょう。しかし、気象条件によっては大繁殖するため、被害が数年に及ぶのが一般的である。「2割の穀物が消えるのに2年程度かかる」という見通しは妥当と言える。中国はその際に緊急輸入を行うため、世界の穀物価格が高騰。日本も影響を受けることは避けられない

 日本がこれまで豊かな食生活を送れたのは、穀物のサプライチェーン(供給網)を分散させ、他国から輸入できたためです。だが、それは平和な時代では通用しても、有事では難しくなる。

 戦後最大の危機が近づく今、日本は食糧安全保障を見直し、農林水産業を復活させ、自助を基本とした国づくりに転換すべきです。

 

アフリカの祟り神が、「第三の天罰」があると示唆

 アフリカなどで猛威を振るうサバクトビバッタ。大川隆法総裁は、2020年4月上旬、アフリカの祟り神であるズールーの霊言を行い、その霊的背景を調査した。

 現れたズールーの霊は、「悪しきバッタは牛でも人間でも食べますので。骨になります、全部」「服を着ていても、服ごと食いちぎられますから」などと指摘。バッタではないものの、ボリビア人男性が軍隊アリに襲われ、亡くなった例もある。虫の大群に襲われれば、生死に関わる事態になりかねない。

 またズールーの霊は、「バッタより早いものが出る可能性もあります」とも語った。別の天罰があることを示唆したが、それが何であるかは今のところ不明。だがすでに中国国内では、害虫「ツマジロクサヨトウ」の大量発生や、雲南省で干ばつが起きるなど、中国共産党への災厄は相次いでいる。

 さながら、旧約聖書の「十の災い」が起きているかのようです。