経営管理・戦略を学ぶ

企業の目的

 ドラッカー曰く、企業の目的は「顧客の創造」である。そして、企業が何であり、何を生み出すかを規定し、企業が成功するか否かを左右するものは「顧客」である。顧客のみが雇用を創出し、企業の成功と存続をもたらしてくれる存在である。

 この本質が理解され、企業文化として社員に浸透していれば、あえて「顧客第一主義」と謳わなくても当たり前のように顧客重視の姿勢が生まれる。

 ところが、現実にはあらゆる組織が内部のことに忙しく、顧客に焦点を合わせることができないでいる。マーケティングにおいても、顧客視点で求められる商品・サービスというよりも販売視点で「売るための商品・サービス」に重点が置かれている。即ち、自社都合の判断が優先された商品・サービスとなっている。

「天動説」ではなく「地動説」

 ドラッカーの経営思想の原点は、顧客が中心にいるという事実にある。顧客がいて企業が存続できる。商品・サービスは、企業の側から見ると「売れている」と思われるが、実は顧客によって買われているのです。

 企業がニーズを発見し、商品・サービスを企画・開発し、提供してはいるが、企業が中心ではない。あくまで顧客が中心である。そのためのマーケティングであり、イノベーションであり、マネジメントである。

 経営トップの役割において、すべては顧客を理解することから始めなければならない。そして、顧客にとっての価値を創造することである。

 顧客の声に耳を傾け、顧客が価値とみなすものを知り、次に顧客にとっての価値を客観的な事実として受け入れ、それを社内のあらゆる検討と意思決定の基盤とすることである。まさに「顧客第一主義」である。

 顧客に価値あるものを供給し、顧客を満足させることが企業としての成果とすべきものである。その結果として、顧客の創造(企業の目的)に繋がり、売上や利益がついてくる。

顧客についての四つの問い

 「顧客第一主義」といっても、あらゆる顧客を満足させることはできない。誰をも喜ばせることが大事なのではなく、大事なことは、対象とする顧客を深く喜ばせることである。したがって、行うべきは対象とする顧客の定義である。

 ドラッカーで有名な顧客について、四つの問いを発しなければならない。

 1 われわれの顧客は誰か?

 2 顧客にとっての価値は何か?

 3 あなたは何を成果とするか?

 4 あなたの顧客戦略は何か?

 まさに、ドラッカー流マーケティングの基本である。 「われわれの顧客は誰か?」 これは、「あなたの会社は、誰を満足させたとき、成果を上げたといえるか?」という質問の答えが、そのまま顧客は誰かを教えてくれる。

 この「われわれの顧客は誰か?」という質問に答えることによって、顧客にとっての価値を知り、組織にとっての成果を知り、行動のための計画を立てることができる。

 われわれの顧客は誰かを繰り返し考え続けなくてはならない。なぜなら、顧客は常に変化する。成果をあげるには、原則に忠実でありつつも、顧客の変化に応じて自らを変化(イノベーション)していくことができなければならない。(『経営者に贈る5つの質問』より)

 顧客にいかなる価値を提供できるかは、経営トップ自身が顧客に何を問い、その答えをどう解釈し、いかにイノベーションするかにかかっている。このような顧客中心の考え方、アウトサイド・インの考え方が、「顧客第一主義」の本質であり、そしてマーケティングの基本である。

 また、ドラッカーは「顧客の創造」とは別に次のように述べている。

 第一に、経済的成果、即ち市場に商品やサービスを提供し、利益を上げること。

 第二に、非経済的成果として、従業員の幸福や地域社会や国家への貢献がある。

 

企業の使命

 企業の使命は社会や国家を経済的繁栄に導くことである。

 経営者たる者、正しい経営を目指すとともに、公(おおやけ)に奉仕する気概・精神をも持たなければならない。

 経営者はこのような使命を背負って経営しなければならない。大きな気概をもって、使命感をもって、企業は黒字を出し、社会や国家の発展・繁栄に貢献しつつ 前に進まなければならない。 

 

理念を掲げる

「経営理念」の定義

 「企業経営における基本的な価値観・精神・信念あるいは行動基準を表明したもの」(広辞苑による

 組織に方向性を持たせ、成果をあげさせるためには「理念」なり「目標」なりが必要となります。

 経営トップは、求心力の核となるべき精神的主柱を社員に提示する必要があります。これが「経営理念」であり、「目標設定」です。

 「経営理念」というのは、「わが社はどの方向に向かっていくのか」、「わが社は何のために存在しているか」、さらには「わが社の行動原理」などを規定したものです。いわゆる「錦の御旗」のようなものです。

 経営理念は、企業に正統性と存在意義と方向性を与え、経営に関わるあらゆる戦略、判断、行動などの基準となるべきものです。

 経営理念は、経営トップの持つ使命感、理想、信念、価値観などを表したものでなければならない。そして、それは、多くの社員が共感し、勇気づけられ、発奮の原動力となるべきものでなければならないし、さらには社会の発展につながるものでなければならない。

 経営理念から、新たな戦略やビジネスモデル、あるいは商品やサービスを生み出す。経営理念に基づいて、社員や経営担当者の教育を行うことによって、経営マインドを持った社員が生まれる。

 経営理念には、組織をまとめ、自身も迷いなく事業に邁進することができるという効用がある。

 経営理念の有無と企業の業績には相関関係がうかがえるという。ただし、経営理念を保有しているとはいえ、業績が低下している企業も、約6割の企業は経営理念の有無ではなく、その内容や浸透度さらには経営能力や その実践力などの問題も大きいと思われる。経営理念の社内への浸透なには課題が残る。

 正しい経営理念を定め、社員に徹底的に浸透させることによって、強い組織が生まれ企業の発展に繋がっていきます。人はミッションを共有し情熱をもって共に働くとき最大の成果をあげる。そして、これが企業発展の原動力となるのです。

 顧客がその商品やサービスを購入することによって、企業は経済的な資源を富(売上・利益)に変えることができる。

 時とともに変化する環境の中にあって、企業の目的が「顧客の創造」であることから、企業には二つの基本的な機能が必要となる。その基本的機能が「マーケティング」「イノベーション」である。

 ビジネスで言えば、業態と組織のこと。武器は商品サービス。マーケティング戦略の実行、マネジメント、オペレーションといった実行に関することです。

 

経営計画

 机上で勝ちがイメージできないのに、実戦で思うように事が運ぶはずがない。「計画なくして経営なし」である。

 計画性のない投資は失敗します。成功するためには、慎重に計画し、リスク管理を徹底し、勝算を立ててから投資すべきです。

 孫子の兵法によると、当たって砕けたら死ぬ、負けたら死ぬ、という命がけの判断にある。経営者は社員の命を預かっていると考えてみてはどうか。管理職は部下の命を預かっていると考えてみよう。勝てるかどうかも分からない戦いに社員や部下を追いやるだろうか。戦場に投入する前に、勝てるかどうかを吟味し、慎重に命令を下すのではないか。きちんとストーリーを描き、計画を立てて、シミュレーションしてみるのではないか。  

 そもそも、計画やストーリーは、その通りに行くことだけのために作るものではない。少しでも計画からズレたら、すぐそれに気付き、早めに修正を行えるようにするために計画がある。ズレるから計画するのであって、計画通りに事が進むなら、なんでも思い通りになるということだから、計画など不要である。

 机上の空論段階、すなわち計画策定段階で「勝ち」がイメージできないのに、実戦で勝つことはないし、社員が納得、得心して取り組めませんから、組織を動かすこともできません。まずは、勝つための戦略ストーリー、その展開計画を明確にしていきます。

 

現状分析

 現代経営において、経営戦略を策定する場面等で、現状分析の重要性は認識されています。このため、様々な分析ツールが開発されています。

 代表的なものに以下があります。

PEST

 PESTとは、「政治(Political)」「経済(Economic)」「社会(Social)」「技術(Technological)」の頭文字をとったもの。戦略が「時流」に乗っているかなどを検討するために行います。また、新市場探索のために利用します。

・政治分析・・・政治動向分析、特に政策(新法律、規制緩和、補助金など)

・経済分析・・・景気、株価、金利、為替、原油価格、国民負担率など

・社会分析・・・人口動態、高齢化率等の年齢構成、ライフスタイルなど

・技術分析・・・自社関連技術、社会インフラ技術(ITなど)など

SWOT

 自社はどの市場で優位にたっているのか、どの商品分野が強いのかなどを知ることである。自社、他社、顧客、周囲の環境をよく認識した上で、経営に臨むことが肝要である。

 会社経営・ビジネスにおいては、SWOT分析(強み(Strength)Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の分析)が相当すると思います。その中でも、自社の強みとそれを投入する機会(顧客等)をしっかり把握することが重要です。

・強み分析・・・お客様が感じる好印象部分、競合他社と比較した場合に勝る部分の洗い出し

・弱み分析・・・お客様が感じる悪印象部分、競合他社と比較した場合に劣る部分の洗い出し

・機会分析・・・チャンスとなりそうなトレンドなどの分析

・脅威分析・・・逆風となりそうなトレンドなどの分析

自社の強み、弱みを知る

 企業に実力以上の勢いをつけるためには、充実した人員と強みをもって、ライバルの弱みや意表を突く方法をとるのがよい。

 企業において、顧客や競合他社の動向と同時に自社の前線の状況を把握しておくことが重要である。さらに、「孫子」では、これに先立って、時勢の把握、用兵の熟知、人心の一致、周到な準備、有能なリーダの五つを勝利のコアコンピタンスとして取り上げている。このことは、現代の企業におけるリスクマネジメントやコンティンジェンシープランにおいても通じる。

 ビジネスでは、戦う前に目的目標となる市場や顧客、敵であり障害となる競合他社をよく調べましょう。

 まず、市場の状況はどうか、顧客は何が欲しいのか、顧客の決裁者は誰か・予算を出すのは誰か・製品を選ぶのは誰か、予算はいくらか・納期はいつか・製品サービスを選ぶポイントは何かなど、マーケットや顧客について調べましょう。

 次に、競合他社の戦略・組織・製品・担当者・企画内容・提案内容など、敵についての情報も調べられる限り調べましょう。

 意外にきちんと理解できていない自社についても冷静に分析しましょう。ヒト・モノ・カネは充分か、製品やサービスはマーケットの求めるものに合致しているか、競合に勝っているか、など冷静に分析しましょう。

 これらの顧客・競合・自社の情報をよく知っておけば負けることはありません。

 仮に分析の結果、自社が劣っていて どうやっても勝てない場合には、戦わないという選択をすれば負けません。

 ライバル企業の状況、自社の状況、市場、地域の状況、経済の時流、事業のタイミング等を正しく把握すれば、確実に成功できる。

 企業に実力以上の勢いをつけるためには、充実した人員と強みをもって、ライバルの弱みや意表を突く方法をとるのがよい。

 これらの分析のための手法としては、SWOT分析 や PEST分析 があります。SWOT分析は、自社のもつ「強み」「弱み」と自社を取り巻く環境の「機会」「脅威」を洗い出して、戦略を検討するものです。PEST分析は、自社を取り巻く環境について「政治」「経済」「社会」「技術」の各分野ごとに情報を洗い出し、「機会」や「脅威」となりうるものを分析していくものです。

 このような分析手法を活用して、相手のこと・自分のことをよく理解してビジネスを進められるようにしていきましょう。

3C

 3Cとは、「市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の頭文字をとったもの。SWOTと同じく、戦略の実効性を高めるため、新市場探索のためなどに行います。 ・市場分析・・・

 市場規模やトレンド、お客様のニーズなどを分析します。

 どの市場で戦うか、どのような価値を提供するかの検討材料にします。

・競合及び自社分析・・・

 競争相手や自社の強みや弱み、商品特性や価格などを分析し、差別化するポイントの検討材料にします。

5Fs

 5Fsは、以下の5つの力(Forces)が、競争戦略に影響するとする考え方です。ハーバード大学のマイケルポーター教授により提唱されました。

 5つの力は以下の通りです。

 ①新規参入の脅威 ②業界内の競合企業との敵対関係 ③代替品の脅威 ④買い手の脅威 ⑤売り手(供給業者)の脅威

 3Cと似ていますが、5つの視点での分析ですので、より漏れのない分析になっています。

 SWOTなどの分析は、戦略立案時だけでなく、少なくとも1年に1回は定期的にされることをお勧めします。また、政権交代などビックイベントなどのタイミングでもされることをお勧めします。これを繰り返すことで、外部内部の環境変化に敏感になり、アンテナをはった状態になりますので、より質の高い情報を集めることができるようになります。

 いわゆるロジカルシンキングといわれる手法も必要です。顧客が言っていることが真実なのか? なぜそう言うのか? と考え、真のニーズに迫る思考方法が求められます。この思考方法を学習するとともに、アンテナを張って顧客と真摯に会話するなどして、本質的な分析結果を得られるようにすることが大切です。

 戦いは、己を知るところから始まります。 現実的な自社の置かれた経営環境、開発力、生産力、営業力を確認すれば、それを生かした戦い方をしなければ、勝つことはできません。

 敵を知るとは、マーケットを知り競合他社の状況を知ることであるが、自社の状況についても冷静に判断することが重要です。そうしてから戦えば、あやういことはないということをうたっています。「危険がない」だけで「百戦百勝」とは言っていない。敵と味方を知ることが、ビジネスにおけるスタート地点ということではないでしょうか。

 敵の実情を知らなくても、自分を知っていれば勝てることもあるが負けることもある。しかし、自分を知らなければ全ての戦いで負けてしまう。

 組織の実情を知るためにも、情報共有が欠かせません。不透明な部分が多ければ多いほど、「己を知ること」ができなくなり、勝てる勝負も勝てなくなります。組織やチームが「己を知る」ためには、きちんと情報を共有できる仕組みと共有できる信頼関係の構築が重要です。

 敵の動きをつかみ、味方の把握もきちんとできていれば、百回戦っても危なげなく戦える。これは、敵の方が強くて味方が弱いと分かれば逃げることも含まれているから、百戦百勝ではなく、百戦殆うからずとなる。敵の把握は不充分でも、味方の掌握はしっかりできていれば、勝ち負けは五分五分となる。敵の把握もできておらず、味方の動きもつかんでいないとすれば、毎度毎度危ない目に遭う。『孫子』のこの一節は、企業経営、マネジメントの要諦を示している。競合対策もどうだろうか? 現場任せや営業任せになっていないか? 敵のことを知らない将軍が指揮をとっては、それこそ孫子の兵法に反することになる。

 「彼を知り己を知れ」ば、当然そこに軌道修正や指導がなされて、マーケットニーズと自社の対応状況とのマッチングが行われなければならない。何もしないのでは知った意味がない。それは、当然のことながら、タイムリーに日々行われなければならない。マッチング作業が週単位、月単位、四半期単位で行われていては、常に変化するマーケットニーズに対応することなどできない。特に小さな会社が経営スピードで勝負しようと思えば、ここのサイクルを速くすることは必須である。

 ここにおいて、必須となる3つの機能、「マーケット情報収集機能」「自社対応状況管理機能」「日次行動修正機能」を整備し、スピードアップし、精度向上させることがマネジメント力アップにつながる。

参考

戦略とは

 戦略とは、「市場に多くの競争相手がいる中で、実際に競争をする以前に有利な状況をつくりだすことや、あるいは競争を避けながら有利に展開するための策略」のことです。

 

戦略の必要性

 戦略が無ければ、今100やっていることを120にするために血みどろの努力をします。100件の訪問を120件にしたり、100円の原価を90円に下げたり。それが出来るうちはよいのですが、今はみんな努力してやっています。そのお客様も販路開拓を必死でやっていらっしゃる努力は良いでしょう。しかし、そのような「直線的な努力」では限界があるのです。結局体力の限界で力つきていきます。

 「販路開拓」に力を入れるのではなく、例えばそれを別の会社にやってもらう、お客様からこちらを探してもらう、そもそも販路開拓なんかしないで代理店にやってもらうなど、ちょっと角度を変えてみれば今の努力が必要では無いかもしれません。「そもそも販路開拓なんているのか」という見直しが必要なのです。

大幅な改善・向上には戦略が不可欠

 売上や利益を2割上げるためなら、今やっていることを20%改善する、今の努力の延長、言ってみれば「もっと頑張る」で達成できます。しかし、売上・利益を3倍、10倍にするために、今の努力を3倍、10倍にできますか? 今1日10時間働けば出来るところを12時間働いて20%稼ぐことはできるでしょう。しかし、1日30時間働いて3倍にすることは出来ないわけです。

 直線的改善ではなく、飛躍的向上には戦略的な発想が必要なのです。戦術的な努力、今の100を120にする発想では、売上・利益が2倍にはなっても、10倍、100倍にはなりません。今やっていることを全く別の観点から見直して、ビジネスを再構築していくためには戦略が必要ということ。

 戦略を考えて実行する ということは終わりのない競争という側面を持っています。決して楽ではありません。うまくいってしまった戦略が、環境の変化に応じきれず、負の遺産となってしまうようなことも数多くあります。

 

戦術は戦略に従う

 今やっていることをもっと頑張って20%向上することは出来ます。それが戦術です。細々した改善をして、少しずつ改善していく発想です。それを3倍にしようとすると、そのような努力では無理です。それを可能にするのが戦略です。

戦術=頑張って戦う

戦略=賢く戦う

戦略の3要素

1 目的は何か

 定義:何を達成しようとしているのか? 達成しなくてもよいことは何か?

 優先順位:その目的はどれくらい大切なのか? 会社の存続を賭けるようなものか? 

2 それに対しての最適な行動は何か

 今やっていることはその目的に対して最適な行動か? そもそも、今やっていることをやらなければいけないのか?

3 資源をどれくらい使うのか

 お金、時間がどれくらい必要なのか? その資源を投入するくらいに、目的の優先順位は高いか?

 この3つが相互に絡み合って戦略が出来てきます。

 

マイケル・ポーターが説く競争戦略

 『競争の戦略』の中で、3つの基本戦略があると論じている。

 1 コスト優位

 2 差別化

 3 特定の市場セグメントに集中し、上の1か2を実現

1 コスト優位

 コスト優位とは、他社より安く同じものを提供できるということ。他社と同じ値段で売れば、自社が競合他社より儲かる。

 そして、他社が利益が出ない水準で売っても、自分は利益が出せる。同じものを買うなら、安いほうがよい。

 お客様にとっての価値 

 =「製品・サービスの価値」-「必要な価値(払うお金、買う手間など)」

 払うお金が少ないほど、お客様にとっての価値が上がる。こんなことをわざわざ説明しなくても「安い方がいいに決まっている」という。

 コスト優位は安く提供できれば儲かるということ。

2 差別化

 「同じものを買うなら安い方がよい」という前提に立てば、その競争市場で安くつくれる1社だけが勝ち残ることになる。しかし、現実は必ずしもそうなっていない。

 安い方がよいというのは一面の事実にして、「安ければよいというものでもない」という事実も存在する。

 一言で言えば、「あの商品・サービスでないとダメだ」とお客様が思ってくれれば、その商品が売れる。少々難しく言えば、「代替性が無い」ということだが、要するに「アレじゃないとダメだ」と思っていただくこと。

 これらの商品・サービスを好んで使うお客様は、「この商品・サービスじゃないとダメだ」と思っているということ。「他社では提供できない」ということです。これが差別化。

 他社では提供できなければ、価格は最低価格では無いかもしれないが、それが欲しければ、他に提供されていないので、そこから買うしかない。他に選択肢が無い。

 差別化というのは、競合製品・サービスより優れているから買うということ。マーケティングで言えば、「高くて良いもの」は、それ自体で差別化されている。しかし、経営戦略の目的は利益をあげることだから(マーケティングの目的も利益ではあるが)、それが利益につながらないのであれば意味がない。

 同じ費用で、「他社では提供できない」商品・サービスを提供すれば、他社よりも高く売れる。

 3 の特定セグメントに集中するというのも、コスト優位か差別化の手段であるから、ポーターが言っているのは、コスト優位か差別化しか無いということです。

 

経営戦略

 経営戦略とは

 1 利益をあげることを(一つの)目的とし、

 2 費用低減戦略 か 差別化戦略 で行くかを決めること。

 経営であれば、経営目標、例えば利益の増大を達成するために、最適な行動の組み合わせを考えることが戦略です。「利益=売上-費用」ですから、売上の増大と費用の減少しかありません。

 利益を増大するために、費用を減らす方が簡単であればそちらを、売上を増やす方が簡単であればそれを行うことです。営業であれば、営業戦略とは売上を上げるために最適な行動の組み合わせを考えることです。

 今と同じ時間・お金を使って、2倍、3倍の目標を達成するには、頭を使って賢く戦うことが必要になります。それが戦略なのです。

 資金調達、人材育成、組織、製品・広告、など様々な戦術は存在する。経営資源は、「ヒト、モノ、カネ」+「情報」などと言われるが、どのようにヒト、モノ、カネを使うか、それは、全て究極的にはここに行き着く。

 費用低減戦略を取るのであれば、

 ・生産性の高い人材

 ・効率的な組織

 ・低コストで生産できる製品

を志向することになる。

 差別化戦略で行くのであれば、

 ・他社と違う何かが提供できる人材

 ・他社にはマネできない組織

 ・他社には生産できない製品

を志向することになる。

 費用低減戦略と差別化戦略が同じようなヒト、モノ、カネの使い方にならないことは明らかである。

「費用一定で売上を上げる」か「売上一定で費用を下げる」か

 そうなると、

 利益法則1 費用を一定で売上を上げる

 利益法則2 売上を一定にして費用を下げる

 のどちらの戦略をとるか、ということになる。利益法則2・費用低減戦略は、ある競争市場においては1社しか勝てない。同じもので勝負する限り、一番安いところが勝つからである。もちろん、短期的な価格勝負はできる。しかし、長期的に勝つのは、一番費用を低減できる会社一社である。

 通常の会社は差別化戦略をとることになる。

 差別化とは、他社とは違うということである。しかし、他社より品質が低い、立地条件が悪いなどでは、当然のことながら お客様に選んでいただけない。

 どうすれば差別化が競合優位につながるのか? このあたりで「マーケティング戦略」と「経営戦略」はつながってくることになる。

 経営戦略とは、

 ・差別化をしてお客様の価値をよりよく満たすために

 ・自分の強みを磨き、提供する

といったところに落ち着く。

 そして、「どんな価値を、どのような強みを使って提供するのか」という基本指針に従って、

 ・ヒト:人材採用、育成、組織づくり

 ・モノ:製品(どのようなものを作るのか)、生産(自社、他社委託)

 ・カネ:資金調達(そのためにどれくらい資金がいるのか)、投資先

をどのように集めて、使っていくのか、が決まっていくわけである。

 逆に、今、どんなヒト、モノ、カネという経営資源を持っていて、それをどのようにお客様の価値へと転換・展開できるかを考えることもできる。

 ・お客様にとっての価値

 ・自分の強み・経営資源

との相互作用・相乗効果、という形でぐるぐる回っていくのが経営戦略なのである。

 

差別化戦略

 差別化戦略とは、競合他社と違っていればよいというものでは無い。劣っている方向で差別化しても意味がない。ではどのように違っていればよいかと言えば、「お客様にとって価値がないところで差別化しても意味がない」ということ。差別化とは、「お客様に、より良い価値を提供する」ということが本質なのです。

3つの差別化方法

 差別化の方策は、基本的には3つある。

1 商品・サービスそのもので差別化する

 当然ながら、商品・サービスで差別化するのがまず第一に来る。

 典型的な方法は4つです

 1) スピード:同じことをより早くできる

 2) 同じことをより便利にできる

 3) 高品質:同じことをよりよくできる

 4) 差異化:違うことができる

製品を売っている場合、例えば、ビデオデッキを買うとしよう。あるビデオデッキだけには、CMカット機能がついていた。それが便利なのであれば、それを買うかもしれない。小売店の場合、売っているものは同じにしても、商品・サービスについて、色々教えてくれる、相談できる店員がいるところのほうがよい。

2 提供方法で差別化する

 1) スピード:より早く提供される

   同じものを買うのなら、早く手に入れられる方がよい。

 2) 利便性:より便利に買える、入手しやすい

   同じものを買うのなら、買いやすいほうがよい。

3 顧客対応力で差別化する

 1) 安心・信頼

   同じものを買うにしても、安心できるところで買えるほうがよい。

   同じものを買うなら、信頼できるところ・人から買いたい。特に高額な買い物や大法人顧客相手のビジネスの場合には、リスクが大きいので、若干価格が高くても、信頼できるところに任せたい事も多い。

 2) 情報提供

   同じモノを買うなら、色々なアドバイスをしてくれるところがよい。特に、高額な買い物、売り手と買い手の知識のギャップが大きい買い物の場合はそうなる。

   スーツ・洋服を買うなら、最近のファッションのトレンドや、顔色とスーツの色の相性などのアドバイス・情報を提供してくれるところで買いたいでしょう。パソコンを買うなら、色々な機種の性能の違いが使う際にどう影響するのかを教えてくれる店員さんがいるところがよい。

「ブランド」で差別化できるか

 ブランドは、作ろうとするものではあるが、基本的にはお客様によって作られるものである。お客様が、商品・サービスそのものや、その提供方法、広告などのコミュニケーション、全てがからみあった認識である。

価値を決めるのはお客様

 価値とは、お客様にとっての価値であり、売り手にとっての価値ではない。売り手にとってはいかに大変な思いをして作ったこだわりの製品、素材、製法などでも、それがお客様にとって意味がないことであれば、それは「価値」にはならない。

 価値があるかどうかを決めるのはお客様である。従って、お客様にとっての価値が価値であって、あなたにとっての価値は、お客様にはどうでもよいことである。

 あなたが大変な思い入れ・こだわりを入れることが重要でないと言っているわけではない。あなたにとって大変な思いをしてつくったということが、お客様にとって重要であれば、それは立派な価値になるし、それを評価しないお客様にとっては価値にならない。 

価値とは

 価値とは、自分が欲しいモノであるから、煎じ詰めて言えば人間の欲求・欲望である。

1 生存欲求 : 生理的なニーズ 基準は身体的快楽

2 社会欲求 : 他人との関係ニーズ 基準は他人の評価

3 自己欲求 : 自分自身で完結するニーズ 基準は自己満足

の3つである。

 

お客様は欲求充足を買っている

 

 お客様は、製品・サービスに対してお金を払うのではなく、価値にお金を払う。

 その価値とは、

 1 生き延びたい、楽をしたい

 2 みんなに認められたい、名誉・ステータスが欲しい

 3 自分のしたいことをしたい、楽しみたい

のどれかである。そうであれば、あなたの提供している製品・サービスが、この3つのどれかを満たしていなければ、それはお客様にとっては「価値」が無いということになる。

差別化とは よりよく欲求を満たすこと

 差別化とは、この3つの欲求をよりよく、または違った形で満たすことである。であるから、経営者の仕事は、まず「どんな価値を満たしたいのか」と自らに、そしてお客様に問うことが重要になる。

 ここから先がマーケティング戦略である。人によって欲求が違う。セグメンテーションを行ってターゲティングをし、それにあった製品・広告をつくる などのマーケティング戦略を考えていくことになる。

 差別化戦略とは、「競合他社より、いかに優れた価値をお客様に提供するか」ということになる。当然、より優れた価値を提供する製品・サービスが選ばれる。経営者の仕事は、「どのような価値を提供するのか」ということを決めることでもある。価値を提供するということは、具体的にはどのようなことかが次のポイントとなる。このあたりから、経営戦略とマーケティング戦略の垣根が無くなり、一体となってくるのです。

強みを活かせ

 価値を提供するにあたっては、あなたが一番得意とすることを活かす必要がある。弱みで差別化するということは普通ありえない。差別化は強みを使って行うのである。

 差別化とは、よりよい価値をお客様に提供することである。そのよりよい価値は、あなたがどんなことが得意かで決まる。あなたが不得意なことでは「よりよい価値」は作り出せない。

 あなたが一番強いところで勝負して、それで負けたのであればどうしようもない。その時点で、競合があなたの強みを上回っていたということである。あなたの強みを磨いていくしかないのです。

どんな強みをどんな差別化に使うか

 強みは差別化のために使うわけだから、その分類も差別化方法に従ったほうがよい。

1 商品・サービスそのもので差別化する場合

 この場合には、商品・サービスの開発力・企画力・高品質な生産力などが強みになる。

 あなた、またはあなたの会社の社員が、企画・開発力や、高品質な生産力があるのであれば、商品・サービスそのもので差別化できる。

 優れた生産設備や、強力な独自仕入れ先、独占契約を結んでいる調達先などがあれば、それも商品力で差別化できることになる。

2 提供方法で差別化する

 この場合には、組織力が強みになります。全員が一体的につながり、効率よく、早く提供できるような特性を持っていれば、より早く、お客様により便利な提供方法を考え、実行することができる。

 チームワークに優れ、効率的に働ける社員が多い場合には、その強みを活かすに当たっては有効な差別化方法となる。

3 顧客対応力で差別化する

 愛想がよく、お客様対応が好きな人好きのする社員が多いのであれば、それを活用する手はある。同じモノを買うなら、信頼できる人、愛想の良い人から買いたいものです。

 また、商品知識やお客様が求めるものの知識を豊富にもつ、マニアックな社員が多いのであれば、その知識自体がお客様にとって価値のあることかも知れない。イタリアンレストランであれば、愛想が良く、ワインの知識が豊富な店員は店にとって強力な差別化となりえる。

 競合相手と同じことをすると、相手の強みと自分の強みがぶつかります。逆に、競合相手の弱いところを研究して、そこに自分の強みをぶつけていけということ。マーケティング戦略的には「差別化」という概念と近い。

 矛盾のマネジメントが経営者の仕事だとも言えます。「選択と集中」ということで、ある一つのことだけをやっていれば楽かもしれません。しかし、それではリスクが大きすぎます。逆に分散しすぎると、自分の得意分野への集中が損なわれてそれもまずい。だから、集中と分散をどのようにバランスを取るか、というのが経営的意思決定の一つでもあるのです。

 困難に見える事業でも、ライバルの参入していないマーケットで展開すれば、失敗の恐れは少なくなる。ライバルの弱点を逆手にとって事業展開すれば、新規参入しても成功できる。

 ライバル会社が強大で、資金も人員も相手が優っているようであれば、真正面から対決することは避けるべきです。強者に対しては「差別化戦略」をとることです。

 強者は弱者を潰してさらにシェアを広げるために、真正面からの対決を挑みます。この戦略は特に「ミート」と呼ばれています。弱者としては、この強者の「ミート」をできるだけ避けるような戦略をとらなければ生き残れません。

 それには、まず相手の動向を探り、観察することによって基本戦略を知り、差別化する必要があります。先行したヒット商品の二番煎じで売り出す戦略もありますが、これは一時的な売上しか見込めません。長く生き残るには、マネではなく、違いを出すために相手を探るのです。

 

情報戦を制せよ

 戦力は、ビジネスにおいては資金力であったり、社員のスキルであったりします。例えば、新規事業に参入しようとすれば、経営者は事業計画書を策定します。勝算(=ビジネスでの成功)の見込みを立てるには、自社の競争力、ライバルの動向などマーケットの状況をつぶさに調査しなければなりません。

 また、戦場においては、戦闘がビジネスで新規事業をスタートさせたときは、市況などが刻一刻と変化していきます。指揮官はその状況を見極めながら、臨機応変な対応を取らなければなりません。戦い方を変えなければならないこともあれば、時には撤退も考えなければなりません。そういった判断を正しく下すには「情報力」が必要です。

 戦略を立てるには、戦況やマクロ環境の情報をいかに集めるかというのが重要になります。

 ただし、単に調べものをすることだけではありません。戦う相手も同じように情報を集めているのですから、まさに「情報戦」を勝ち抜く必要があるのです。それゆえ、強くとも敵には弱く見せかけ、勇敢でも敵には臆病に見せかけ、近づいても敵には遠く見せかけ、遠方にあっても敵には近く見せかけ、敵が利を求めているときにはそれを誘い出し、敵が混乱しているときはそれを奪い取り、敵が充実しているときはそれに防備し、敵が強いときはそれを避け、敵が怒りたけっているときはそれをかき乱し、敵が謙虚なときはそれを驕りたぶらせ、敵が安楽であるときはそれを疲労させ、敵が親しみあっているときはそれを分裂させる。こうして敵の無備を攻め、敵の不意をつくのである。

 競争に勝つには、したたかな駆け引きが必要である。経営とは、良い意味で相手を欺くことであって、相手の考えていないことを考え、新たな価値を生み出すことで驚きを与えるものでなくてはならない。当り前のことができていないのでは話にならないが、当り前のことを当り前にやっているだけでは、儲けることはできない。差別化差異化独自性と考えれば、企業経営においても必須であることが分かる。

 

弱者が強者に勝つ

 弱者、すなわち兵力の小さい軍隊が、強者、すなわち兵力の大きい軍隊に勝つ戦法を孫子は3つ挙げています。

 1つめは「集中戦法」、2つめは「少数精鋭戦法」、3つめは「奇襲戦法」です。

 現代の経営にも当てはめることができます。弱者を規模の小さい会社、または売り上げの小さい会社、強者を規模の大きい会社、または、売り上げの大きい会社と読み替えればよいのです。

 競合製品と自社製品との比較検討をよくして、競合製品の弱い点と比べて自社の優れている点をアピールしましょう。

 また、競合他社が戦う準備のできていない分野、組織も製品も備えられていない分野で戦いを仕掛けることができれば、新しいマーケットを早い時期に総取りできます。

 競合が重要さに気づいていない領域や、力を入れていない分野を見つけ、そこに自社の主力をぶつけることができれば、勝率はかなり高いでしょう。

 

選択と集中

 ビジネスの世界においては、不利な状況のまま競合相手との競争を強いられる場合もあるでしょう。そういうときは、ランチェスター流の局地戦や集中戦などの「弱者の戦略」が有効になってきます。兵力に劣る弱者が資本や規模で上回る強者と戦うときは、全面対決を避けて、相手の弱い部分をこちらの総力で叩く。このような一点集中型の戦いを選択すべきです。そこに いわゆる「選択と集中」が必要となってくるのです。

 

フォーカス戦略 小が大を制す

 競合があまり力を入れておらず、自社が得意で、しかも顧客ニーズの大きい分野に特化する ことが出来れば、その分野では勝てる可能性が出てくる。

 仮に敵の店が20人、こちらの店が5人で運営しているとすれば、敵はこちらの4倍の勢力であり、販売スペースも品ぞろえの規模でも圧倒され、勝ち目はほとんど無い。

 しかし、敵がⅠからⅣまで4分野を扱っていて、そのうちのⅣは20人中2人で細々とやっているとする。自社がもしこのⅣの分野に強ければ、こちらの5人すべてを集中させることで、Ⅳという局所では勝てる可能性が出てくる。

 小売業でいえば、大手は総じて顧客への目が行き届いていない。上得意客に対してはきちんとデータをとって接客しても、その他の大半の客には顔も名前も覚えぬまま、雑なサービスをしている。中小零細店はその弱点を突くべきなのです。

 こちらは、大企業の「ここだ!」と思う一点に狙いを定め、一点集中攻撃をかけるわけです。

 アイデアで勝負? サービスで勝負? 技術で勝負? 何か一つ相手に勝る物に戦力のすべてを賭けて勝負すれば、勝機が見出せるかも知れません。

 どんなに強大な相手でも、必ず守りが薄い場所があり、つけ込む隙があります。

 「ここが狙い目」という「時と場所」を定める事ができたなら、たとえどんなに遠くまで遠征しても勝てるし、それを見抜けなかったら戦力が分散され、お互いに協力し合う事もできないようになるのです。

 社員100人の会社が10万人の大企業と勝負する時は、1つの ニッチ な分野に戦力を集中させれば勝利できます。

 大企業は、10万人と言ってもいろんな製品を扱っていて、数多くの部署に人材を分けて配置しているので、某製品を扱う大企業の課は10人前後ということがあります。そのため、某製品に特化した100名の中小企業は、その分野においては大企業の10名の課よりも多くの戦力を保有しており十分に戦うことが可能です。

 競合があまり力を入れておらず、自社が得意で、しかも顧客ニーズの大きい分野に特化することが出来れば、その分野では勝てる可能性が出てくる。

 仮に敵の店が20人、こちらの店が5人で運営しているとすれば、敵はこちらの4倍の勢力であり、販売スペースも品ぞろえの規模でも圧倒され、勝ち目はほとんど無い。

 しかし、敵がAからDまで4分野を扱っていて、そのうちのDは20人中2人で細々とやっているとする。自社がもしこのDの分野に強ければ、こちらの5人すべてを集中させることでDという局所では勝てる可能性が出てくる。

 小売業でいえば、大手は総じて顧客への目が行き届いていない。上得意客に対してはきちんとデータをとって接客しても、その他の大半の客には顔も名前も覚えぬまま、雑なサービスをしているのみである。中小零細店はその弱点を突くべきです。

敵は分散、我は集中の状況を作れ

 自社と競合の経営資源を冷静に見極め、敵に味方の兵力を悟られないようにしながら、フォーカス戦略をとることが重要である。

 

戦わずして勝つ

 「百回戦って全勝するのが最善ではない。戦わずに敵を屈服させるのが最善である」と孫子は説いています。「孫子」は兵法書なので「勝つ」ための方策を説いているのですが、「戦って勝つ」ことが最善とは考えていないのです。戦闘になってしまえば民衆が巻き込まれてしまうことになり、自国も敵国も国力が疲弊してしまいます。

 「戦わずに勝つ」、これがなぜ最善なのかというと、自社にも損害がないからである。戦って勝てば、敵よりも損害は少ないが、無傷というわけにはいかない。戦えば、仮に勝ったとしても、自社にも必ず棄損がある。値引き合戦で勝っても利益が出ない。

 この基本的な考えは、ビジネスの基本戦略であるともいえます。戦わずに敵を屈服させるのが最善である。

 孫子は戦争の悲劇をよく理解しており、「戦わないことを最善」とした。 孫子は、「戦争には2種類ある。望ましいものと望ましくないものである」と言っている。

 望ましい戦争とは、「お客様に満足いただくためのもの」、望ましくない戦争とは、「価格競争などの競合他社との消耗戦」のことでしょう。

 競合他社が届かない高みにたどりつくことができれば、または参入してこない市場を見つけてそこで圧倒的なシェアを獲得できれば、他社はあきらめて競争にならないと考えます。

 自社がここで勝負すると決めた市場、ダントツNo.1になることです。 言い換えれば、ニッチトップ企業、ターゲット市場トップ企業になることをいいます。それらを確実に実現するために「あらゆる事態に常に備えておく」ことも含みます。

 大企業が戦う市場を「大海」とすれば、中小企業は大企業が攻めそうにない自分たちが見つけた小さな「池」で、圧倒的に一番になる戦略を採るべきだ、というのがその内容です。

参考

 仕事の上で、真っ正面から立ち向かって、予算やアイデアなどの内容で、その商談をまとめるのもありです。しかし、それはあくまでも次善であって、本当は戦わずに自然に仕事が転がり込んでくるように、日々から人間関係を築いているのが最もよい方法です。ファイトを持って戦い続けるばかりだと体力も気力も続きませんから、目の前の利益だけでなく、先のことも読みながら仕事をしたいものです。

 人間の歴史は、争いの歴史であり、現代もまた未来もなくなることはない。国同士の場合でも、企業同士の場合でも、社内のライバル同士でも、競争するということは避けることができない。しかし、その争いに ことごとく勝っても「最善の生き方」とは言えない。相手を納得させて、争わずに心服させて、協力させ、平和に生きることが「最善の生き方」である。目的は、勝つことではなく「利」を得ることである。

 仕事も勝負ですから勝ち負けがあります。しかし、勝つにしても相手が負けたことを納得した上での勝利であれば、後に禍根は残りません。しかし、無理矢理な方法で得た勝利は、恨みを残し、後日、思わぬ形で仕返しをされることがあります。もし、今、そういう場面にいるならば、相手の立場をたてながらも勝利を得る方法を考えましょう。それはまた、自分にとっても利益になることです。

 ビジネスの世界で、競合先の企業と血を血で洗うような激しい競争になってしまうとお互いに疲弊してしまいます。

 このような事態を避けるためには、他社との「差別化」を模索していくことになります。独自のサービスを開発したり、特定のニーズに応える商品に特化したりして、他社と競争しない状態を自ら作っていくのです。

ビジネス上でも、見切り発射で商談や提案をするのではなく、相手の事業内容や条件を考えて、自社のどのソリューションが役に立つのかをある程度整理してからアプローチしましょう。「とりあえずやる」や「上司に言われたからやる」では なかなかうまくいかないでしょう。

 戦略とは目的達成の手段である。

 競争が少ない顧客セグメントに特化する。誰も手をつけていなかった製品カテゴリーを一番最初に出すなど、戦わない方法はあります。それが横並びの発想になると、どうしても相手を意識するあまり、相手がいるところを攻めてしまいます。それより、視点を変えてみて、戦わないで済むセグメントや売り方を考えるのがよいのです。 

代表的な「戦わずして勝つ」方法

1 誰もいないところを攻める

 誰もいないところなら、労せずしてその領土を取ることが出来ます。「無人の野を行く快進撃」状態を自ら作るわけです。

 競争が少ない市場を選べば戦わずして勝てるのです。

2 圧倒的な強さを持つ

 ある特定の分野で圧倒的な強さを持つと、戦わずして勝てます。

 例えば、「スピード」というポイントで戦わずして勝つ。全ての分野で圧倒的に強ければ理想ですが、それは不可能ですので、地域、サービス、製品など、ある分野で圧倒的な強みを発揮すれば勝てるのです。

独自ドメインの構築

 では、戦わずに相手を屈服させるにはどうすればよいのか? もっとも良いのは、絶対に負けない唯一無二の独自領域を確立し、戦う前に相手に戦意を喪失させることです。「この分野では叶わない」と相手に思わせることができれば、戦いを回避できます。

 この独自領域は、単なる強みではありません。誰も気づかなかった、誰も手を出さなかった、誰も追求しなかった、そのような領域を開拓し、徹底的に特化しましょう。

 競合企業との局地戦(客先での奪い合い)に勝ったからと言って喜んでいてはならない。最も有利な経営戦略とは、競合のない市場を開拓することであり、新しい市場を創り出すことである。

 敵の経営資源も取り込んでしまえれば 一石二鳥 である。ほとんどの企業は、自社の事業ドメインを物理的定義で認識している。扱っている商品に着目している。これでは同業者がたくさんいて、多くの敵と血みどろの戦いをしなければいけないことになる。そこで、自社の事業ドメインを「物理的定義」から「機能的定義」に変えてみる。自社の商品なりサービスが、顧客に対して実現している機能や効用に着目する事業ドメイン設定である。独自の土俵を作り、そこで一人横綱になるものだと考えれば良い。それができて、自社のビジネスに一つの切り口ができ、独自戦略となる。そうなれば、部分的に競合していたりする企業はあっても、会社全体でぶつかり合うようなガチンコ勝負はなくなる。戦えば、勝っても自社に棄損がある。ダメージがある。戦わないための準備をしておかなければならない。それが「上策」なのです。

 最善の戦略は、競合の戦略を無力化するものであり、次は競合の提携先や販路を断つことです。敵味方の戦力分析もせずに、無理な戦いをしようとしてはならない。  ただ、機能的なドメイン設定で、競合のない市場を創り出すことができれば、それが最善なのだが、その途上であったり、それができない場合には、競合との戦い方を考えていかなければならない。その際には、競合企業の戦略や意図、経営方針、営業方針などを読んで、その戦略を意味のないものにすることを考える。それができなければ、提携関係、友好関係を分断して切り崩す。一見強固な提携関係に見えても、時代は大きく変わり、企業の競争環境も刻々と変化している。従来の提携、友好などに囚われていては、そうした変化に対応できない。そこに付け入るスキが生まれる。

 

勝つべくして勝つ

 事業展開するにあたっては、慎重に事業計画を立て、勝算がなければ進めてはいけない。無謀な挑戦は命取りとなる。

 弱いくせに強がっていると、優勢な相手にやられてしまうということ。戦いにおいて、相手が自分より強いことが分かっていても、つい強がって虚勢を張りたくなることがありますが、それでは勝利は見込めません。まずは自分の実力を見極めることが最も大切であると言っています。

 織田信長が少人数で今川義元をうち破った「桶狭間の戦い」がありますが、あれはあくまでもレアケースで、非常な幸運と決断力があったからこそ起こせた奇跡のような勝利とも言えるでしょう。一般的には、戦いというのは数で勝負が決まることが多いのは確かです。今、もしビジネスで何らかの相手と競っていたならば、相手の戦力を分析して、それを分散させる作戦を進めること。そして、それが無理で勝てないと思った時には、面子を捨ててでも撤退する勇気が、結果として最小限の痛手で済むことも少なくありません。何よりも冷静な状況判断が一番大切だということを忘れないでください。今回もし負けても、いつか回復できるチャンスは必ずあるはずです。

 戦いは敵との比較が重要。戦力比に応じて戦い方を変えよと孫子はいう。企業も市場、流通、競合などの状況に応じて戦い方を変えねばならない。ただ、理想は大きな市場で多くの見込み客を前に「戦わずして勝つ」商売です。長く事業を継続させたいならば、経営者はこのような商売を探し続ける必要がある。

 戦略の本質は、「実際の戦いの前に」勝てる態勢と状況を作っておくこと、そして、そうした事前準備をした上でタイミングを見て実際の戦いを始めることであるという。

 タイミングを見るとは、「敵の動きなどによって勝てる状況になるタイミングを計る」ということである。戦場の情勢は刻々変化する。その変化の中で勝てるタイミングを見計らうことが勝ちを得るために重要である。

 事前の仕込みこそが戦略の真髄ということになる。技術の蓄積、生産体制の整備、流通チャネルの構築などなど、ビジネスをきちんと行えるだけの体制を整え、製品の魅力を十分に作った上で、狙いをつけたターゲット顧客に向けて攻勢をかけるということ。それでこそ、持続的に競争相手に対して勝てる市場競争戦略になる。

 勝者は、「勝つべくして勝つ」体制を整えてから事に臨む。一方、負ける人は、イチかバチかで、勝負に臨み運に任せて戦う。ビジネスも事前の準備をどれだけするかで結果が異なってきます。

 起業する場合は、事前に、どこの、誰に、何を、どのように販売して、どれだけの利益を出す、といったことを具体的に策定しておく必要があります。

 これらの戦法をとるには、自社に強みをもっているという条件がなくてはなりません。

 戦略は、コアコンピタンスをベースに考えなければなりません。自社の強みをベースにした戦略策定が重要です。

上策と下策

 息の根を止めるような相手を完膚なきまで攻め滅ぼしてしまう戦いをすると、そこに残るのは敗者の恨みだけです。また、疲弊した国を自領にしても、すぐに他国から攻め込まれる弱点にしかなりません。だからこそ、孫武は「負けないためには、無駄な敵を作らない方が良い」と言っているのです。

 知恵をしぼり、敵を味方にしてしまう。恨みを買うような勝ち方ではなく、相手も納得する勝ち方をする。それはスポーツマンシップに似ているかもしれません。

弱者は隙を突いたゲリラ戦に打って出る

 孫子は、逃げるのも一つの戦法であり、弱い立場にある者でも戦機を見つけて戦いを挑めばよいと説いています。強大な敵の隙を突き、真正面から衝突するのではなく、ゲリラ戦に徹した戦いをするのが弱者の戦い方なのです。

 ビジネスでは、強者と弱者の立場ははっきりしています。シェアで勝る企業、強力な商品を持つ企業、全国展開する企業など、戦力を計るモノサシはいくつもあります。全ての戦力面で自社を上回るライバル会社に真正面から勝負を挑んでも、勝てる見込みはありません。そこで、「強大な相手の商品とは差別化した商品を開発する」「相手の営業が及ばないテリトリー外のところに拠点を築く」「ゲリラ的に広告・宣伝を行う」といった戦略です。

 

勝てる相手に勝つ

 一生懸命に仕事をしていてもなかなか認められないことがあるかもしれません。それはおそらく、商談を勝ち取るために地道な足固めなどをしているので、他の人に分かってもらえにくいからかもしれません。しかし、実際に会社に貢献するのは そのような人です。パフォーマンスに走りがちな人は、見た目は良くても、いつか正体がばれます。なかなか日の目は見ないかもしれませんが、しっかり働いていれば、見ている人は見ています。

 

軽々しく戦ってはならない

 自社よりも有利な立場、状況にある敵に対して戦いを挑むようなことはしてはならない。もし、敵がその優位性を活かして勢いづいて攻めて来たら、迎え撃ってはならない。こちらが攻める時には、騙して逃げる姿勢を見せる敵を深追いしてはならない。囲い込んでも逃げ道を用意しておき、「窮鼠猫を噛む」ようなことを避ける。

たとえ戦争に勝っても、その目的を達成できなければ、負けたのと同じである

企業を安んじ経営を全うせよ

 「戦わずして勝つ」「勝つべくして勝つ」 この冷静な判断が孫子兵法の真骨頂と言える。それを感情的になり激昂して、開戦を決めるようでは話にならない。

 経営者は、一時の感情で事業展開を行ってはならない。慎重に事業計画を立てた上で、自社の利益に合致すれば進めるべきである。どれだけ思いがあったとして、不利になれば事業撤退も考えるべきです。感情は時間が経てば収まるが、会社が倒産すれば、取り返しのつかないことになる。社員を犠牲にすることにもなる。

 優れた経営者は、慎重な計画に基づき、事業を進める。これが企業を安全なものにし、社員を守る方法である。

 

不敗の地に立つ

 成功する企業は、入念に事業計画を立て、失敗しないよう準備を整えた後に事業展開する。失敗する企業は、事業展開した後に成功を追い求めようとする。

 市場の獲得にあたって、そのコスト全てを自社で賄うのは良くない。

製品を生産する前、販売する前のマーケティングが重要です。勝つ見込みを立ててから戦いを始めなければ、勝てる確率は非常に低い。ある程度構想ができた段階で市場にそのニーズがあるか、顧客がその製品やサービスを求めているか、しっかり聞いた後で製品を作るというのが正しい順番である。

 もし、仕事が上手く行っていて、勢いに乗って徹底的に攻めようと考えた時には、「守りは盤石か」と足元を見直しましょう。そうした用心深い動きが必勝態勢に結びつくことは少なくない。

 武田信玄は、強敵である北条家と今川家との間で同盟を結びました(甲相駿三国同盟)。これにより、攻め込まれる敵を減らし、信濃攻略に兵力を集中させました。

 また、情報収集を重要視した信玄は、「三ツ者」と呼ばれるスパイを多用。スパイからもたらされる情報を頼りに、大名の対立を利用したり、戦を仕掛けるタイミングなどを計算した。

 信玄は戦う前に勝率を高めていく手法を取りました。逆に、大量の犠牲者が出かねない、越後(現・新潟県)に本拠地を置いた上杉謙信との戦い(川中島の戦い)は、5度にわたって行ったものの、本格的な戦闘は1度きり。結局、信玄は謙信との戦いを引き分けに持ち込み、最小限の犠牲にとどめました。信玄は、このような戦略をとることでリスクを減らし、戦国の乱世を生き抜こうとしたわけです。

 さらに、信玄が優れた点は人使いの上手さにあります。信玄の配下には名将が多く集まり、後に「武田二十四将」と称される軍団を形成しました。

 勝つ人は、戦う前から勝てるか勝てないかを予想し、勝つイメージができたら戦い、勝つイメージが持てなければ戦いません。だから負けないのです。

 負ける人は、勝てるかどうかわからないのに戦い始めてしまう。戦いながら「どうしたら勝てるか」を考える。それでは、勝ち負けは五分五分でしょう。「勝つイメージができてから戦う」というのが大原則です。

 まず、不敗の態勢をつくっておいて、ライバルや環境のチャンスを見て勝ちに行くという道筋を『孫子』は戦いの基本に据えた。

 仕事を進めていく中で、その商談をまとめるためには、どうしたらいいのか迷うことがあるかもしれません。そんな時は、相手と自分の信頼関係を築き上げて、さらに自らが主導して話を進めるのが大切です。ストレートに仕事の話をするのではなく、まず状況を固めることからはじめる。遠回しに思えるかもしれませんが、結局、それが一番の早道になることが、ビジネスにおいては少なくないからです。

 

主導権を握る

 仕事や人間関係で主導権を握りたいのであれば、何よりも先手必勝が大事です。先にマーケットに参入すれば有利に事業を進めることができ、後れてマーケットに参入すれば不利な競争を強いられる。ゆえに、優れた経営者は、ライバルに先んじて、ライバルの戦略に乗せられることなく、ライバルが自分の戦略に有利な行動に出るように仕向けて、主導権を確保する。

 先回りして先手を打っていれば楽に余裕を持ってできるのに、ギリギリになって、後手後手となり、慌てて手を打っても結局手遅れとなることがある。先行管理ができていないのである。先行管理とは、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後、できれば半年後くらいまで見通して、今何をすべきかを考えていくマネジメントを言う。商談が成立するのに3ヵ月程度かかるのであれば、最低でも3ヵ月後か4ヵ月後までの受注見込を把握して手を打っておかなければならない。当月の売上が足りないからと言って、焦って手を打っても、商談成立までには3ヵ月かかるわけだから、時すでに遅しである。  3ヵ月後、4ヵ月後の受注見込、売上見込が少ないことが把握できた時点で手を打つ。ここで手を打っておくから、3ヵ月後、4ヵ月後に成果が出る。前月の売上結果を集計して、あれが良かった、これが悪かったと結果管理をしているようでは話にならない。

 営業部門がこうした先行管理にシフトできると、仕入購買から生産計画、資金繰りまでが先行管理で、先手を打てるようになる。会社に余裕が生まれ、経営の質がかなり上がる。

主導権は渡すな

 これは、『善く戦うものは人を致して人に致されず』という一節に由来します。上手に戦うものは相手の動きに翻弄されるのではなく、相手の軍を自分の思うままに動かすということです。ここで出てくる「致す」は「コントロールする」という風に解釈すればよいでしょう。

ビジネスの世界でも、「交渉相手に合わせてうまくやろう」としても、望むような結果を手に入れることはできません。自分たちの望む結果を得るためには、自分たちが主導権を取り、相手を動かしていくようにしていかなければなりません。そのためには、交渉相手や市場の状況に関する分析を行い、複数のシナリオを用意しておくなどの事前準備が重要な意味を持ってきます。

 入念な事前準備に基づいて主導権を握る。これが成功につながる重要なポイントなのです。

 

先行管理、先行指標によって受身経営から脱却せよ

 先行指標というものを考えてみます。たとえば、受注や売上などは、結果として出てくるものであって、これを見ているだけでは結果指標による管理だと言える。実際、受注や売上の前には、新規の見込創出数や、そのために行われる営業マンの訪問件数や電話本数などの活動がある。先行指標とは、これら結果が出るまでのプロセスにおける指標のことを言う。

 仕事では、クライアントからどういうことを求められるか予測できることも少なからずあります。そういう時、仕事ができる人は、前もって準備を怠らないものです。もし今、そうした案件があれば、「まだ時間があるさ」などと思わずに、先に動いておくことです。余裕があれば、商談においても自分の有利な状況に持ち込むことができるはずです。いつでも戦いの準備をしておく。それは、ビジネスにおいても同じかもしれません。

 ビジネスを成功させたいと思うのは当然です。しかし、何もないところからいきなり商談が進むことはありません。日頃からの人間関係づくりや情報収集を怠らないことが、「いざ」という時に役立つことは少なくありません。「早い」ということは、受けてからの完成だけでなく、「事前」に動いておくということでもあるのです。もし、今、仕事が上手く行っていなかったとしても、目の前の結論に落ち込まずに、次のチャレンジの機会を信じて、地道な積み重ねに取り組んでください。

 大切なことは、敵の考えを読むことである。敵が何を考えているか、どういう判断をするかが分かれば、自ずからこちらは先回りできる。

 先行指標をマネジメントすることで、マネジメントのサイクルを速くすることができる。

 経営が先行管理になって、余裕ができたら、今度は顧客のニーズを先回りし、顧客をこちらのペースに巻き込んでいくことを考える。顧客がまだ気付いていない時点で、顧客がまだ感じていない時点で先回りする。顧客が予想していない、そこまで期待していないニーズを創造し、そこを急襲するのである。

 先行指標を設定することで、結果が出た後で反省するのではなく、途中段階で早めに手が打てるようにマネジメントサイクルを短縮して行きます。行動修正機会が増え、そのタイミングが早まることで、達成可能性が大幅にアップします。

 企業の力がその市場の中で強ければ、シェアを拡大してトップの座を守り、ライバル会社の商品と競合させて競争し、力が同等であれば全力で戦い、シェア拡大がむずかしい場合は、その市場から撤退し、その「すきま市場」をねらう。  技術力に自信があるからと、小さい企業なのに強気の戦略をたてるのは、営業力のある大企業に利用され乗っ取られるだけである。

 企業のあり方も、ライバルの優位なところ(商品・マーケット等)で競争するのを避けて、ライバルの手薄なところで競争するようにして、主導権を握るべきである。

 

レッドオーシャン戦略 と ブルーオーシャン戦略

 無理な事業展開で成功を重ねたとしても、最善の策とは言えない。

 ビジネスで、「レッドオーシャン」と言われる強力な競合がひしめく環境で戦い続けた場合、たとえ勝利を続けても充分な利益は得られません。

 それよりも、「ブルーオーシャン」で先行して プラットフォームを作り、後から参入してくる競合にも、そのプラットフォームを利用させてあげるくらいのほうが、戦うよりも利益を得ることができます。ライバル会社と競合し自社が消耗し衰弱してしまうようであれば、争いを避けるのも一つの手なのです。

 ときには吸収合併してしまうのも得策となります。

 競合するライバル会社の商品開発や販売戦略といった情報やマーケットの動きを確認し、細かく分析することも大切です。

 正確なデータや情報を用いて、ライバル会社が次に何を仕掛けてくるかを探ること、自社の情報をライバル会社に安易に利用されないようにすることです。

 ときに、企業買収時に敵対的買収で徹底的に戦って勝ったとしても、買収先の優秀な人材が他社に流れてしまっては、勝利の価値が減ってしまいます。それよりも、友好的買収かつ買収先の人材を主要ポストに就かせて活かすほうが、企業価値の向上につながります。

 

主体的に戦略ストーリーを描け  

 事業展開するにあたっては、慎重に事業計画を立て、勝算がなければ進めてはいけない。無謀な挑戦は命取りとなる。

 主体性を持って経営に取り組むこと。競合先や親会社や景気などに左右され、受身の経営をしていては、いつまで経っても儲かるようにはならない。仮に規模が大きくなっても、守りで兵力が分散して、一点集中で攻めてくる新興企業に撃破されることにもなりかねない。

 自社が主導し、構想し、主体的にビジネスモデル、戦略ストーリーを構築することができていれば、どんな競合企業とも有利に戦いを進めることができる。そもそも不利な戦いには近寄らないようにしていけば良いことになる。

事業展開するマーケットとそのタイミングを正しく判断できれば、困難に見える事業でも勝算は大きくなる

 情報化社会においては、こちらの利点や弱点なども、用心を重ねないと相手に悟られてしまうことがしばしばあります。しかし、それを逆に利用して、わざと誤った情報を与えることで、相手を惑わせることも可能です。いわゆる「トラップ」というものを仕掛けることで、自分に有利な状況を生み出すわけです。そうした作戦も、時には必要かもしれません。ただし、それを実行するためには、自分たちの側の体制がキチンと整っている必要があり、いつでも使える戦法ではないことを忘れてはいけません。

 

手段と目的を履き違えてはならない

 ビジネスにおいて、元々は手段として取り組んでいるものなのに、いつの間にかそれを行うこと自体が目的化してしまうことがある。たとえば、売上を上げるために受注を増やす。受注を増やすために新規訪問件数を増やす。新規訪問を増やすためにアポをとる。しかし、アポをとることばかりに集中していては受注につながらない。新規訪問件数を増やそうと決めて、それを評価指標にしたりすると、今度は訪問数ばかりを増やそうとする。受注を増やすためなのだから、そこから次へつないで、提案書や企画書を提出したり、相手のキーマンを攻略したりと深耕していかなければならないのだが、新規訪問を回る時間を優先してしまって、肝心な商談進捗が後回しになる。

 生産性ということを正しく理解しなければならない。生産性とはインプット分のアウトプット。インプットを増やすばかりでアウトプットが増えなければ生産性は低下することになる。インプットを人件費として、アウトプットをその社員の行動量だと考えれば、「同じ給料を払うなら、より多くの行動をしてもらった方が得」ということになるが、そのような部分最適を是としていては、会社全体の生産性が落ちてしまうことになりかねない。

孫子は、局地戦で勝利したり、狙った領地を奪ったとしても、結果としてその戦争目的の達成ができなければ、「骨折り損」「時間の無駄」に過ぎないと斬って捨てた。企業経営においても同じである。経営者、リーダー、マネージャーは、手段と目的を履き違えてはならない。

 

臨機応変に策を繰り出す

 ビジネスにおいて、状況に応じて臨機応変に策を繰り出すことは重要です。ライバルの力量と周囲の状況を見極め、自分の力を最大限発揮できるように策を発することで、いわゆる奇策ということになります。

 「ランチェスター戦略」とは、物理の法則を応用した科学的な経営論です。特に営業の局面では精神論を排除し、ロジックに目標の達成をすることが大事である。ランチェスター戦略だけでは、目的・目標を達成する戦略(仕組み)を構築することは難しい。ビジネスは人間の心理で出来ているからです。

ランチェスター戦略と孫子の兵法

 人が物やサービスを購入する際、心理的要因が大半を占めています。この目に見えない人の心の動きを巧みに察知し、目的・目標に向かわせるのが孫子の兵法です。孫子の兵法には、「人はこう動けば、こう動く」と言ったように、直接的に人を動かそうとするのではなく、間接的、曲線的に人を動かします。決して直線的なやり方で目的・目標を達成しようとはしません。

 孫子の兵法とランチェスター戦略の原理原則は同じなのです。ランチェスター戦略の効果性を上げるには、孫子の兵法は必須と言えます。ランチェスター戦略に孫子の兵法を組み込むことによって、戦略という仕組みが出来上がってくる。

 企業経営においても、常に裏と表、プラスとマイナスの両面を見ることが重要である。こちらを上げれば、あちらが下がる。あることに力を入れれば、他が疎かになる。トレードオフの関係になっていて、それらが複雑に絡み合っているのが経営である。客数を増やそうと思えば、客単価が下がる。受注率を上げようと思っても、案件数、見込数が落ちれば意味がない。利益率を上げても、それによって売上が下がれば利益額は維持できない。将来のために人を採用すれば、人件費が増える。ある社員を登用すれば、他の社員はふて腐れる。客数が増え売上が増えたと喜んでいたら、それに伴ってクレームも増えたりする。しかし、クレームだと思ってガッカリしていたら、その中に新商品のヒントがあったりする。

 さらに、表と裏、利と害を見ようと思えば、定量情報と定性情報を合わせ見るということも重要である。たとえば、定量情報である売上高、販売実績データだけを見て、良い悪いを判断するようなことをしてはならない。仮に売上が増えていても、顧客が喜んで買ってくれているとは限らない。他社の商品が欲しいのに、それが欠品していたから自社商品が売れたのかもしれない。自社商品に不満があるのに、他にないから仕方なく買っていただけかもしれない。もしそうなら、他社が類似商品を出してくる前に、顧客不満足を消す商品改良を行わなければならない。それなのに、売上実績だけを見て喜んでいるようでは、「事実」はつかんでいても「真実」をつかんだことにはならない。

 

短期決戦をしろ 長期戦はするな

 ビジネスは、まず最初に仕組み化して、顧客獲得をしていけば月日とともに売り上げが向上していくというリピートモデルでなければいけない。そうなれば、半年後、1年後には利益がしっかりと出てくるという消耗している期間をいかに短くするかが重要です。ヒト・モノ・カネで競合他社に劣る中小企業は、大企業に持久戦に持ち込まれたら勝てる可能性は極めて低い。

 受注できるまでに長い時間がかかる案件、代金回収までに時間がかかる長期プロジェクト、これらは経営体力の小さな企業には不利な戦いになるため、勝てる見込みのない時は戦わないという勇気も必要です。

 ビジネスの場においては、品質よりもスピードを重視するほうが良いケースが多々あります。

 企画書や提案書を提出する時には、完成度を高めて納期ギリギリに提出するのではなく、5割くらいできた案を納期よりかなり早く提出することで、顧客や上司のフィードバックをもらうことができて、そのフィードバックをもとに納期までの間にさらに完成度を高めることができます。

 

マーケティング

 マーケティングとは、売上を上げる活動の全てです。「営業・販売」「リサーチ」「販促・プロモーション」「顧客サービス」などを含みます。

 さらに正確に言えば、お客様に価値を提供して対価をいただく全ての行動です。

 お客様に対して、真剣に奉仕し、努力して価値を提供し、そして、それに対する対価を受ける。マーケティングの本質は、「価値の提供」と価値の「対価を受け取る」ことなのです。

会社の活動におけるマーケティングの位置づけ

 会社は何のために存在するのか? 従業員満足は、会社存続の必要条件ではありますが、十分条件では無いのです。

 会社は、「お客様からお金を受け取る」ために存在する、と言い換えることができる。そして、この「お客様からお金を受け取る」ための一連の仕事=マーケティングなのです。

 会社の全ての仕事がマーケティングになる。会社は利益を出さないと存在できない。そのためにはお客様からお金をいただく必要がある。その活動の全てがマーケティングと呼ばれるのです。

 お客様に向けた活動と言い換えてもよい。会社は、お客様に対して価値を提供するために存在しているのです。

 社員全員がマーケティング担当であるということになります。製品を開発する、仕入れをする、生産をする、お金を数える、営業するなど、全ては「お客様に価値を提供してお金をいただく」ために行っているわけです。

 あなたの仕事が開発であろうと、生産であろうと、経理であろうと、それは、すべからく「お客様からお金をいただく」ためにやっている、そのような考え方を社員がしている会社は強い。そのような会社は、「お客様の役に立てる開発」を行い、「お客様に満足いただける製品を生産」し、「お客様からきちんとお金をいただき管理する」経理と、社員がそれぞれ自分の仕事の目的・役割を把握しているからです。逆に、ダメな会社は、「自分がよければ」「自分が出世すれば」「自分が楽なら」「自分の身が守れれば」という考え方をします。

 すなわち、マーケティングとは、特定の部署、特定の活動を意味するのではなく、社長以下全社員が意識し、考え続けなければいけない考え方です。「お客様からお金をいただくにはどうすればよいか」「お客様に価値を認めていただくにはどうするのか」という考え方がマーケティングなのです。

 マーケティングは成功するための補助的条件である。ライバル企業の戦略、動向を推し量り、市場の参入障壁、顧客ニーズの変化、需給動向、地域特性等に応じて営業戦略を立てるのが経営者の務めである。

 マーケティングは、企業の中心的な機能であり、その役割は「顧客の創造」そのものである。「顧客の創造」ということは、成果は企業の外にあるということを意味している。

 したがって、マーケティングは顧客の観点から見た全事業に関わる活動である。すなわち、企業内のそれぞれの組織において、市場(顧客・非顧客)の代弁者の機能を持つことが求められる。マーケティングは、販売よりはるかに大きな活動であり、企業のあらゆる組織に関わる活動である。それは一部門の専門化された活動ではない。

 

マーケティングの概念

1 ベネフィット

 お客様があなたの商品を買うのは、商品自体が欲しいのではありません。商品がお客様にもたらす何か良いこと、それを買っているのです。

 お客様は あなたの商品が欲しいわけではない。自分にとって良いことが欲しい。当たり前のことですが、忘れがちなことです。

2) 合商品との差別化と強み

 しかし、そのベネフィットを満たそうとしているのは あなただけではありません。競合商品が存在します。その競合商品よりも、あなたの商品を買わなければいけないことをお客様に納得していただく必要があります。

 競合商品と全く同じであれば、安い方を買うでしょう。あなたがコストリーダーであればそれでも良いかもしれませんが、これはなかなかきつい話です。価格競争力を持つのは素晴らしいことですが、価格だけで勝負すると、体力勝負になってしまいます。

 競合商品ではなく、あなたの商品を買う理由、競合商品との違いをお客様に訴える必要があります。

 では、何を持って差別化すると言うかと、あなたの会社の強みを使うのです。普通、弱みで差別化することはありませんから、「差別化ポイント=あなたの強み」ということになります。あなたが競合他社より強いところで差別化しようとしなければ、負けるか追いつかれるだけです。

 お客様は正直です。よりお客様にとって便利な方、より役立つ方、よりたくさんの情報を提供してくれる方、より見やすい方、より愛想のよい方などから買うわけです。それぞれが強みの例です。強みがないということはありません。必ず何かはあるはずです。

3 セグメンテーションとターゲティング

 あなたの強みがわかったら、または、決まったら、それを評価してくれるお客様はどんな人かを探りましょう。

 あなたの強みを評価してくれないお客様を長期的に維持するのは難しい。もちろん、評価してくれなくても、買っていただければそれでよいのですが、それを頼りにすると、売上が安定しません。そのお客様が評価する強みを提供する顧客に簡単に奪われてしまいます。

 あなたの強みが、きめ細やかなサービスなのであれば、それを評価してくれるお客様を定義するのです。

 セグメンテーションというのは、お客様を分けることです。ターゲティングは、その分けたお客様のどれかに絞って狙いをつけることです。

なぜ絞らないといけないのか

 絞らなければ絞った競合に負けるからです。お客様を絞らずに多くのお客様を取ろうとすると、絞ってきた競合に負けるのです。あなたがある市場を独占していればよいのですが、通常は競合(広い意味での競合も含めて)が存在します。ですから絞るのです。

セグメンテーションとターゲティングはセット

 絞らない、狙わないのであれば、分ける(セグメンテーション)必要はありませんし、狙うためには分けることが必要です。ですから、セグメンテーションとターゲティングは常にセットになります。

4 4P

 具体的にどのように差別化して、どのようにお客様を絞っていくかという切り口が「4P」です。「4P」は、

 Product(製品):売り物の商品・サービス

 Price(価格):値段・価格体系

 Promotion(販促):広告などを含む広い意味での売り方です

 Placement(流通):販路

 あなたの強みを、あなたの強みを評価する顧客に訴えられるような「4P」はどんなものか、ということです。

 マーケティング=戦略なのです。マーケティングは、リサーチでも無く、広告だけでも無く、販売だけでも無く、この全体のプロセス、戦略がマーケティングなのです。

 マーケティングは、基本的には「売るための考え方」です。

 ところで、お客様はそもそも「なぜ」買うのでしょうか。

あなたが提供する価値>お客様が提供する価値 

 あなたが提供できるモノが大きければ、お客様はそれに対して相当の対価としてお金を払ったりするわけです。

あなたが提供する価値とは

1 機能的価値

 製品そのものが提供する価値

 商品そのものには価値はありません。商品が提供する良いこと(「ベネフィット」と言います)を求めているのです。掃除機を買う人は、清潔で綺麗な部屋が欲しいのです。

2 感情的価値

 それを買えるという見栄 楽しい経験

 お客様にとっての価値、これが「ベネフィット」です。

お客様が提供する価値とは

1 商品の代金

 言わずもがなです。あなたはこれが欲しいのです

2)手間

 あなたの商品・店に気づく手間(看板が目立たなければ見過ごします)  

 あなたの商品を買う理由に気づく手間  

 競合商品と比較・検討する時間・手間(それが楽しい場合もありますが)  

 買いに行く費用(店頭まで出向く時間、交通費など)  

 一から操作を覚える手間(携帯電話を買い替えると操作を覚えるのが面倒)  

 導入した場合の社員の再教育の必要性(トレーニングにはお金と時間がかかる)

あなたの商品が提供する機能的価値+感情的価値 > お客様が払う商品代金+手間

となります。

 お客様があなたから買う可能性を高めるには、

・左辺を上げる 機能的価値を向上 感情的価値を向上

・右辺を下げる 商品価格を下げる お客様の手間を減らして買いやすくする

です。価格を下げるというのは最後の手段ですし、価格を下げたとしてもいらないものはいらない というのが現代の消費の特徴ですから、その選択肢を除外しますと、あなたの商品を売るためには、

 機能的価値を向上

 感情的価値を向上

 お客様の手間を減らす

の3つとなります。

 お客様に購入していただく、購入し続けていただくには、次の3つのことを意識すればよいことがわかります。経営はこの3つのことをさらに改善していくことが目的なのです。

 あなたが提供する価値を上げる: 物理的価値、感情的価値

 お客様が提供する価値を下げる: 費用、時間、手間 など

 他社へ乗り換えるスイッチングコストを高める: 関係づくり、教育 など

 

マーケティング戦略への影響

 このどれに力を入れるのかは、戦略上の大きい選択の一つです。

 「あなたが提供する価値-スイッチングコスト>お客様が提供する価値」において、あなたが提供する価値を上げるのは価値向上戦略と言ってよいでしょう。そのときに、物理的価値を上げにいくのであれば、製品開発などに資源を投入します。感情的価値を上げるには、製品の品質はもちろんですが、それに加えて、広告投資と適切なクリエイティブ(広告制作物)を作れる人材が必要です。

 スイッチングコストを上げるのは関係強化戦略です。それには、顧客教育、あなたの製品に慣れていただくなどの各手段が必要になります。

 お客様が提供する価値を下げるのは、コスト削減戦略です。生産、販売を効率化し、大量販売を目指して、価格を下げていきます。この場合は、エネルギーは、顧客よりは、社内に向かうことになります。また、製品を使いやすくする、買いやすくする、というのも右辺を下げます。例えば、店に行かずに通販で買えれば、「店に出向く時間と労力」というお客様の価値を減らすことができます。

 

営業とマーケティング

 営業はマーケティングの一部なのです。同じ意味で、開発もマーケティングの一部です。お客様のために開発され、あるいは仕入れされたものを、①その価値をお客様に伝える、②価値にふさわしいお金をいただく、③お客様にご満足いただくことが営業の目的であり役割です。

 その意味で、マーケティングは営業の上位概念です。営業は、マーケティングの非常に重要な一部です。

 営業マンの行動には、意識的・無意識的にマーケティング戦略が反映されています。

 ・営業が誰のところに行くか=顧客ターゲット戦略  

 ・営業がどの商品を売るか=商品戦略  

 ・営業がどのくらい値引きするか=価格戦略  

 ・営業がどのような資料を使うか=広告戦略  

 ・営業がどのようなセールストークを使うか=プロモーション戦略

 営業マンの教育・行動管理がマーケティングの非常に大きい部分を占めることになりえます。特に、エンドユーザーなどへの直接訴求をしない場合には、営業マンの活動=マーケティングそのもの、となる場合が多いと思います。

 出来る営業マンは、意識的にせよ、無意識的にせよ、マーケティングをしている。「お客様は、自分のトクにならなければ買わない」からです。セオドア・レビットの「Marketing Myopia」が喝破したように、「お客様はドリルではなく、穴が欲しい」のです。ですから、営業マンは、「ドリルを売る」のではなく、「穴をあけるためには、キリでもナイフでも釘と金槌でもなく、ドリルがお客様の一番役に立てる」ことを伝え、お金をいただくのが仕事の目的なわけです。

営業にマーケティングを活かす

 お客様は、その商品が自分にとって、どう便利なのかはわかりません。ですから、営業マン=価値の翻訳機でもあるのです。自分の商品がいかにお客様の生活を豊かにするか、仕事をラクにするかと翻訳してあげるのです。

 その価値はお客様に伝わっているか?

 お客様は、言われなければ価値はわかりません。「言わなくてもわかっているだろう」というのは通用しない。お客様に価値を伝えるように説明し、実際に使っていただいたりして体感してもらい、はじめて納得できるわけです。

 

売上を上げる方法 5つ

  利益=売上-費用

 当然ですが、利益を上げるには、売上を上げるか費用を下げるかの2つしかありません。

売上を上げる基本: 売上=顧客数(A)X顧客単価(B)

 これも当たり前ですが、売上を上げるには、顧客数を増やすか、顧客単価を上げるか、のどちらか(あるいは両方)しかありません

(A)顧客数を増やす基本:増加顧客数=(新規顧客-流出顧客X購買頻度

 お客様の母数を増やすのとお客様の購買頻度を高める以外には顧客数は増えません。

 意外と忘れがちなのが流出顧客の防止策です。これを行うだけで利益が劇的に増加する場合があります。

(A)式より、顧客数を増やすには、以下の3つしか無いことがわかります。 

 1) 新規顧客を獲得する  

 2) 既存顧客の流出を防止する  

 3) 購買頻度を高める

 (B)顧客単価の増大 :顧客単価=買上点数X1点当たり価格  ですので、これも方法は二つしかありません。

 4) 買上点数を上げる  

 5) 1点(1商品)当たりの価格を上げる

まとめますと

 売上の原則   

  1) 新規顧客の獲得   

  2) 顧客の流出防止   

  3) 購買頻度向上   

  4) 買上点数の増加   

  5) 1点(1商品)当たりの価格向上

 上記の5つを、長期・短期効果のバランスを取りつつ、効果的・効率的に行うかということです。

 売上を上げるには、上の5つと組み合わせて、自社の強み、顧客ターゲット、競合商品などを考え、上の5つとどう組み合わせるか、戦略と整合させそれを効果的・効率的に行う方法を考えるということです。市場分析、SWOT分析などツールは色々ありますが、その目的は、あくまで5つの売上向上策を行うことです。本末転倒になってはいけません。

 マーケティングにも目的があります。その目的を達成するのが戦略です。マーケティングにも戦略が必要なのです。

 経営もある意味戦いです。顧客の満足、価値を満たすのがマーケティングではありますが、その一方で、競合他社と顧客を巡って争うという冷徹な事実も存在します。自分が頑張っても、競合がそれ以上に頑張れば、お客様はそちらに行ってしまいます。顧客満足も、絶対評価ではなく、競合に対する相対評価なのです。ですから、マーケティングでも「戦略」は重要です。

 ターゲットによって、何を言うかは全く違ってくるのです。とにかく、自分の強みを考え、それを評価するターゲットを選ぶことが、売り文句を考えるよりは先に来るのです。売り文句は重要です。しかし、まずは戦略です。ターゲットが間違っていれば的はずれなわけです。

 戦略的に俯瞰的にマーケティングを考えることが重要なのです。「今やっていることは、目的達成に近づけてくれるのか?」を問い続けるのが戦略的な考え方で、マーケティングでも同じです。そもそもターゲットは誰か?という問いに答えないと、どんなに頑張っても空回りしてしまいます。

 そもそも誰に売りたいのか? 広告を出した媒体はそのターゲットに合っているのか?  資料請求の内容は、自分の強みに合っているのか? 自分が提供したいサービスは何か? ターゲットはそれを求めているのか? という問題に答える必要があります。

 

「孫子の兵法」から発展したドラッカーのマーケティング

 マーケティングの中には「競争戦略」がある。いかにして競争相手に勝つか。ドラッカーが捉えるマーケティングは、「勝つべくして勝つ」という「孫子の兵法」そのものである。

・われわれの事業は何か

・顧客は誰か

・顧客はどこにいるか

・顧客は何を買うか

・顧客は何を価値と見るか

・顧客の満たされていない欲求は何か

・競争相手は誰(何)か

 このように、自らが置かれている環境の中で、多角的な視点で、わが社の「勝ちパターン」を見つけ出し、それをプロセスとして体系化し、具体的な組織レベルや行動レベルにまで落とし込んでいくことが本来のマーケティングある。

 具体的に、どんな商品・サービスを提供するのか、いくらで販売すべきなのか、どんな見せ方・紹介の仕方をすべきなのか、どこで販売すれば良いのか、といったことにまで落とし込んでいかなければならない。

 これらのことを体系立て、整理し、限られた経営資源で、効率良く市場に働きかけるには、どのすれば良いかなどの道筋(勝ち筋)を見出すことが必要である。

 ドラッカーは、マーケティングの理想は販売を不要にすることである。そして、マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に商品とサービスを自ら売れるようにすることであると述べている。

 顧客の心を鷲掴みにし、買いたくなるように仕向けること、これがドラッカーのいうマーケティングの本質である。ここで必要なことは、「顧客の立場」で「顧客が何を求めているのか」をキャッチし、それに合った商品やサービスを提供することです。さらに、製品発表の仕方やタイミングなどにも工夫が必要となってくる。

 ミッションは、「何を行うべきか」とともに「何を行うべきでないか」を規定する。企業としての成果を最大にするためには、自らがミッションとするものに徹底して的を絞らなければならない。経営資源の集中である。その上で、「われわれの顧客は誰か」を見極め、「顧客にとっての価値は何か」を明らかにしていく。これがマーケティングである。

 顧客にとっての関心は、自分にとっての価値、欲求、現実である。現実の中に潜む欲求の種を探し出し、顧客ニーズに合った製品やサービスを生み出し、その顧客に価値を提供する。そのためには、顧客ターゲットを絞る必要がある。

 

他社との協力

 他社を利用するためには、共同事業をし、他社を奔走させるためには、利益を与える。人を動かすための極意とも言える。この仕事をする事が、多少利益があっても、害が大きいと判断すれば人は動かない。利があるような話をすれば、頼まなくても、自分で情報を集めるだろうし、具体的に利益を提示すれば、黙っていても動くものである。自身は動かず、他人に仕事をさせる為のテクニックである。

 ライバル会社がよい刺激となり、触発も受け、それがそれぞれの成長の動機づけとなるという大きなメリットがあります。正当な過当競争のなかで、互いに相手に負けまいと切磋琢磨することによって、それぞれの仕事の水準や作り出す製品・サービスの質が向上し、業界全体の社会ことにも通じていく。

 ライバルと正しく競うことにより、自分の成長角度を上向かせ、成長速度を大いに成長させてくれるのです。

 

戦略実現手段としてM&Aを考える

 企業経営で、敵の経営資源をうまく活用することができれば、何倍もの効果、価値を産むことができると考えられる。  たとえば、競合企業だからと言っても、すべてにおいて利害が反しているわけではない。新商品や新規事業を開拓しているような場合には、敵でもあるが、一緒に認知度を上げ、啓蒙を進める同志とも言える。  競合がいて価格差、製品差があるから、顧客に説明しやすいこともある。競合先よりも自社の方が相対的に優位に立っていれば、比較対象にすることで自社を引き立てることも可能である。もちろん、こちらが劣位にあれば、領域、分野を絞り込んで優位な面を浮き立たせる。それも比較対象があればこそである。  競合が新製品を出してきたり、低価格を実現した時には、「どういう意図や狙いで新製品を出してきたのか」「なぜ低価格を実現することができたのか」「なぜ今なのか」と一歩踏み込んで考えてみる。すると、競合企業の研究開発やマーケティングや仕入、調達などが自社に智恵やヒントをもたらしてくれる。参考になるのは競合だからこそである。それで単に後追いのモノマネをしたのでは、孫子の兵法を活用することにはならないが、自社にはないリソースを活用できるという点では、敵地での食料調達に通じるものがある。自社の代わりにいろいろ考えてくれていると思えば有り難い。

 「敵を殺そうと思うのは怒りの気持ち。敵の物を奪おうと思うのは恩賞がもらえるから」という事ですが、やる気を出させるためには、成果に見合った正当で公平な評価をしなければいけない。ビジネスの世界の人事管理に通じることです。

 自社の利を考え、冷静かつ客観的に事業を継続させ、発展させる道を探るべきである。

 孫子は、勝つこと、すなわち目的を達成することに集中し、ズルズルと戦いを長期化させてはならないと説いた。そうした戦いの本質を理解している経営者こそが、企業の命運を握る守護者であり、社員をリードし、企業を存続させる統率者であることを許される。  人口減少によるマーケット縮小で、じわじわとデフレが続く厳しい環境の中、競合とガチンコでぶつかりながら、特に智恵もなく小手先の値引き商法でなんとか切り抜けようとしても無理である。日本国内の人口減少はずっと続く。新興国マーケットの成長も地球環境や資源問題で限界がくる可能性が高い。  勝たなければ生き残ることはできない。敵の資源を取り込むくらいのことは平然とやってのけなければならない。

 競合企業を憎んで叩き潰そうと考えるのではなく、貴重な経営資源として取り込むことを考えるべきである。

 M&Aで吸収した企業の社員とかの扱いですが、優秀な者は抜擢して昇進させ、充分な処遇を与える。こうすることによって企業の経営基盤を強化できる。

 

リスクマネジメント

 企業は様々なリスクに囲まれているが、リスクが発生しないことを期待するのではなく、リスクが発生しても対応できる準備をすることが経営管理の上で重要である。

 失敗しないようにするのが「リスクマネージメント」である。リスクマネージメントは、人の見えないところで地道に行い、事業展開する時は積極果敢に活動すべきである。

 成功する経営者は、大きなリスクを冒さず、成功できる状況を確信した上で事業展開し成功する。優れた経営者が成功しても、その成功は大きなリスクを冒さず、さりげない地道な努力によるものなので賞賛されにくい。しかし、そういう成功こそが真の成功であると言う。  優れた経営者はピンチに陥る前に手を打つので、一見普通で平凡な経営をしますが、それこそが名経営者の証なのです。

 

情報の価値を汲み取り漏洩は許さない

 人生をかけ、キャリアをかけて仕事をするなら、それ相応の人と仕事をしたいと考えるのが普通である。「報酬を払っているのだから、黙って言うことを聞け」という態度、姿勢では人は動いてくれない。

 営業マンや顧客対応窓口が顧客から収集してくる情報は、貴重なマーケット情報ではあるけれども、断片情報であり、主観が混じっていたり、誤解があったりして、そのまま鵜呑みにはできない情報も多い。真偽も定かではないから、裏もとらないといけない。個々の情報は点に過ぎない。それを、リーダーは点をつなげて線にして、線を面にする。その面も表から裏から見て、過去から現在の積み重ねを見て、そこから未来へと延長する推察や論理も必要となる。こうした情報の裏にある因果や背景、真実を読み取って、何らかの意思決定を下さなければ、せっかく集めた情報も成果には結び付かない。ただ集めたデータを見て「あれが悪い」「これが悪い」と言っているだけでは何の意味もない。なぜそうなっているのか、その真因はどこにあるのか、どうすればその真因を取り除くことができるのか までつかんで、手を打ってこそ情報を分析したと言えるし、インフォメーションからインテリジェンスへの昇華がなされたと言える。

 現場の営業マン、諜報マン、現場の人間は、すべて情報をもたらしてくれる間諜であるが、事実だけでなく感じたことを添えて伝えてもらう。その場で感じた実感を添えてもらうことで、単なるデータや事実が温度感のある生々しい情報となる。経営者には、その情を汲み取る思いやりや慈悲の心があれば良い。そして、その情報を重ね合わせ、時系列に並べてみて、その裏にある流れを読み取る。一時点では読み取れなかった事が、時系列に追いかけてみると見えてくることがある。営業担当者や顧客対応窓口がせっかく収集した顧客の声やマーケット反応も、その価値をとらえて企業経営に活かすマネージャーや経営者がいなければ、ただのゴミ情報と化してしまう。情報活用とはIT活用とは違う。読み取る人間の側の問題なのです。

 顧客のためにやるべきだと考えている仕事や業務を徹底しない、実行しない社員を許してはならない。業務命令違反だとか、ルール破りとか、社内の問題の前に、顧客に対する背信行為であることが問題である。会社に対する背信行為であれば、その経営者なり組織が許せばそれで済むが、顧客に対する背信行為を会社が許してしまったら、今度はその会社丸ごとが顧客からそっぽを向かれることになる。そうした問題行動をとる社員を処断できない弱腰なリーダーが、組織の崩壊、企業の倒産へと導く。

 機密情報の漏えいは競争上死活問題につながることから、企業の組織内における情報統制を厳格にすることは重要である。近年、企業におけるコンプライアンス導入の必要性が高まっているが、ここでは規律の遵守を徹底させなければならないことが組織の課題である。

不正競争防止法の営業秘密

 スパイに対しては最大の報酬を与える一方で、情報漏洩に対しては厳罰を与える必要がある。

 産業スパイの手口は様々だが、従業員としてターゲット企業に転職し、社内情報にアクセスできる状況を作り出し、不正に情報を持ち出す。あるいは業務を通じて企業やノウハウを得たうえで、本命の企業に転職するケースもあるという。

 厳罰と言っても、法治国家では自力救済は禁止されており、国家の法制度に委ねるしかない。産業スパイを取り締まる法律には、不正競争防止法がある。ここで営業秘密と言われるためには、以下の3要件が必要と言える。

  秘密管理性・・・秘密として管理された情報であること

  有用性・・・有用な営業上又は技術上の情報であること

  非公知性・・・公然と知られていないこと

 不正競争防止法の営業秘密に合致するように、機密情報は徹底的に管理せよ。