宇宙航行の理論的課題

光速を超えられない理由

 人類が太陽系の外を探査するならば、やはり、光速を超える技術を持たなければならない。そうしなければ、一人の宇宙飛行士の人生が終わる前に、目的地にたどり着くことはできない。

 光速を超える技術は、多くの研究者に検討されてきたが、現在の科学では、どうしても「物理的に無理」という結論に達する。これはなぜだろうか。

 アインシュタインの特殊相対性理論によれば、物体の速度が光速に近づくにつれて、その質量が増える。光速で飛ぶ物体は、無限の質量を持つことになる。重さ1キログラムの物体でも、宇宙全ての物質を足した重さより重くなってしまうのです。

 さらに、同理論によると、光速を超えた物体の時間は逆流することになる。近くの恒星に光速を超える速度で行き、光速を超える速度で帰ってきた場合、「出発する前に地球に帰ってくる」といった矛盾が生じることもある。そのため、光速を超えることは不可能だとも言われるのです。

 

不可能に挑戦するアイデアとは

 しかし、一部の科学者たちは、それでも何とか光速を超えられないかということを検討している。確かに、光速を超える「速度」は無理かもしれないが、もし目的地との距離を縮めることができれば、それは「光速を超えたことと同じようなもの」となる。

 例えば、100光年はなれた場所との距離を100キロに縮めることができれば、時速100キロの速度でも1時間でたどりつける。光速を超えてはいないため、特殊相対性理論に反してはいない。

 その際のポイントは、一般相対性理論によれば、時空は重力などによって曲げられるということ。この考えを発展させて、宇宙船の前方の時空を圧縮し、後方を膨張させる「ワープバブル」の可能性を検討している物理学者もいる。

 もっとも、これはまだ空論の域を出ておらず、技術としても成り立っていない。しかし、ライト兄弟の始めての飛行(1903年)から、火星にローバーが着陸(1997年)するまで、100年も経っていない。今は「絶対に不可能」と思われる技術が、次の100年で可能になることは充分あり得る。